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東京女子医大は「氷山の一角」 自粛続く医療者限界

東京女子医大は「氷山の一角」 自粛続く医療者限界
東京女子医大は「氷山の一角」
自粛続く医療者限界 

 「コロナ感染で休業、無給」。そんな衝撃的な見出しの記事が踊ったのは、2月10日の毎日新聞だ。東京女子医科大学(東京都新宿区)が職員に向けて出した文書の呆れた内容をすっぱ抜いたのだ。

 文書は、同大や系列病院で働く医師や看護師を含む職員が新型コロナウイルスに感染して休んだ場合、①大学側からの自粛要請に反した行為②明らかに不適切な行為、のどちらかが認められれば休業中の給与を無給にすると通知。記事は、この文書を受け取った職員が不安を覚え、モチベーションを下げている事までを伝えた。

 「大学側は、自粛の要請に明らかに反して感染リスクを高めた職員が対象で、罹患した事のみで無給にするわけではないと強調したが、そもそもウイルスの感染経路は分からない事が多く、院内での感染以外は不適切と判断される恐れもある」と全国紙の社会部記者は話す。

 東京女子医大といえば、コロナ禍真っ最中の昨年6月、コロナで経営が思わしくないからと職員の上半期のボーナスを支給しないと決めて大ブーイングにあった。看護師400人超が退職予定とも報じられても、代わりはいくらでもいると言わんばかりの態度で火に油を注いだ事も。結局、ボーナスは支給されたが、コロナで日常生活を制限され、いつも以上に緊張を強いられている職員にとって、一連の対応はたまったものではない。

 「医療従事者はこの1年、ずっと我慢を強いられっぱなし」と訴えるのは、西日本の病院に勤務する看護師。「東京や大阪といった大都市と異なり、コロナ陽性者はあまり出ていない地域なのに、この1年、県外に出る事はもちろん同じ市町村内でも人が多い場所に行くのはやめるよう言われている」(同)。県外に出た場合は2週間自宅待機をしなくてはならず、実質的な「禁止」だという。

 やはり西日本のリハビリ病院に勤務する薬剤師は「前日の行動を職場に報告しなくてはならず、誕生日を祝う外食もこの1年、実現出来ていない。家族にも迷惑をかけている」と訴える。

 こうした生活を続けている中で伝えられるのは、緊急事態宣言下にも会食に出る政治家や派手な飲み会を開いてクラスターを発生させる人達のニュース。「2回目の緊急事態宣言では、そこまで行動を制限しない人達が目立った。友人がおいしそうな外食や遊びに行った先の写真を上げていて病むので、SNSは見ない事にしている」と話すのは北関東の看護師。「経済を回してくれる人がいないと、コロナ流行が収まった時に何も残っていない。理屈では分かるが、感情がついていかない」との声は、行動制限を受け続ける全国の医療者を代表するものだろう。そうした悲痛な叫びが出ているにもかかわらず、更に医療者の行動を罰しようとする東京女子医大の文書は反発を招いて当然だ。

「現金を配って!」
看護協会会員からも不満の声

 前出のような厳しい行動制限と過酷な勤務に、離職者の増加が懸念される看護師。その業界団体である「日本看護協会」の対応に、会員から不満の声が上がっている。きっかけは昨年12月、ジャニーズ事務所から看護協会に5億円の寄付が寄せられた事。看護師にはジャニーズのファンも多く、寄付は好意的に受け止められたが、5億円の使途が「認定看護師の育成に関する事業」「看護師等学校養成所への支援事業」に充てられると発表されると、反応は一転。現場で今、頑張っている看護師への支援が示されなかった事に反発の声が上がり、「現金で欲しい」の大合唱が起きた。

 かねてより「高い会費を払っているのに、何もしてくれない」「なぜ東京の一等地、表参道に事務所を持つ必要が?」との不満が示されていた看護協会。現場の負担を少しでも和らげる方策が今後示されるか、注目が集まっている。

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