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未来の会

海外リポート 医療ツーリズム先進国ドバイの現状と戦略

海外リポート 医療ツーリズム先進国ドバイの現状と戦略

 世界中の投資を呼び込み医療機関や医師の参入を促す〜

アラブ首長国連邦(UAE)を構成する7つの首長国の1つであるドバイは、早くから医療ツーリズムに取り組んで来た。多額の投資を行い、今では高度で良質な医療サービスが受けられる国として高い評価を受けている。ドバイを訪れる医療ツーリストの多くはアジアからの観光客だ。特に韓国は2011年、UAEと患者紹介医療協定を締結。以降、ドバイからも2万人を超える患者を韓国に紹介している。また、UAEは韓国の一流医師や看護師らを受け入れ、既に数百人がUAE国内の病院で働いている。そのドバイで1月24日から27日の4日間、ヘルスケア業界向け展示会「アラブヘルス2022」が開催された。コロナ禍にも拘わらず、米国の209社を始め、中国168社、韓国165社、台湾22社等、世界中の医療・健康機器メーカーが参加し、活況を呈した。そんな中、日本からの出展企業は僅かに8社。オンライン参加も3社のみと全く影が薄かった。これには他の出展企業からも「日本はどうしたのだ」という声が上がる程だった。ドバイを始めとするUAEは日本の高度な医療技術に期待を寄せているが、日本との医療連携は進んでいない。ドバイでの医療ツーリズムの現状と今後の成長戦略、日本への期待について、ドバイ保健局ヘルスツーリズム部長のモハメド・アル・メイリ氏に聞いた。(取材・インタビュー 集中出版ドバイ支局長・尾尻卓庸)
——ドバイは医療ツーリズムを国の重要産業として位置付けていますが、現状について教えて下さい。

モハメド 医療ツーリズムは世界的に見ても成長産業です。米調査会社のザイオン・マーケット・リサーチによると、2019年のメディカルツーリズム市場規模は1026億ドル(約13兆円)でした。22年から27年迄の年平均成長率は12.7%、27年には2727億ドル(約35兆円)の規模になると予想されています。そんな中ドバイは、「アラブ地域で最も主要な医療ツーリストの目的地」としての地位を確立しました。米国にある研究機関、国際医療研究センター(IHRC)が発表した2020-21世界医療ツーリズム指数によると、ドバイは中東の中で最も人気の有る医療ツーリズム目的地としてランク付けされ、世界ランキングでも46カ国中で6位となっています。これは、医療を求める外国人観光客に提供している先進的な医療サービスと、高度で画期的な医療施設やインフラ、極めて高い競争力が高く評価された結果です。

——ドバイを訪れる医療ツーリストの数は増えているのでしょうか?

モハメド  「ドバイは医療ツーリズムを目的とする観光客に非常に好まれる場所である」という評価は急速に高まっています。これは世界クラスの患者ケアを提供するドバイの能力によるものです。私達には、最先端の治療方法や医療診断、医療インフラ、医療技術があります。19年には、健康増進を目的とした観光客を含めたヘルスツーリズムの入国者数は4%増加し、35万118人となりました。

——医療を目的とする観光客は、主にどういった国の人達なのでしょうか?

モハメド 19年の約35万人の内訳を見ると、アジアからの入国者が最も多く34%でした。次いでアラブ地域やペルシャ湾岸6カ国からの入国者が28%。更にヨーロッパが17%、アフリカが10%、アメリカが9%等となりました。この様に、世界各国から多くの観光客が診察や治療の為にドバイを訪れています。

——どういった分野の医療の人気が高いのでしょうか?

モハメド 美容外科を含む皮膚科と歯科、整形外科が人気のトップ3です。この3科の他に眼科や美容、ウェルネス、不妊治療にも人気があります。

——今後はどの様にして、更に多くの医療ツーリストを呼び込んで行く予定ですか? 取り組んでいるプロジェクトが有れば教えて下さい。

モハメド ドバイには医療サービスの質の高さと、医療目的地としての魅力が有ります。その為、医療ツーリズムの目的地として中東で最も高い評価を得ています。最先端の施設を備えた近代的な病院を建設し、様々な分野の国際的な医師を誘致する為に、多額の投資が行われて来ました。ドバイの病院は全て国際的な認定を受けています。「より健康で幸せになりたい」という国民のニーズを満たす為、賢明な指導者が医療システム内の規制の枠組みの強化や、世界クラスの医療インフラと機能の構築を指示し、それに私達が対応した結果なのです。ドバイ保健局(DHA)は国際社会からの信頼を高める事で、世界の医療ツーリズムマップにドバイの名が記載されるよう取り組んで来ました。例えば16年により良い医療サービスを提供するために、ドバイ・ヘルス・エクスペリエンス(DXH)というブランドを立ち上げました。観光客とその家族がドバイへの医療旅行を容易に計画出来るよう、DXHの情報ポータルdxh.aeも開設し、勧告や規制など各種の情報を掲載して旅行者への便宜を図っています。更にドバイの医療観光を促進する為、審査や認可を受けた医療施設を含む「DXHグループ」と呼ばれる医療グループも結成しました。ドバイでは、デジタル技術を利用して遠隔医療サービスの拡大と改善を図り、医療投資を促進しており、今求められているビジネス環境を構築しています。高度な医療インフラを次のレベルに引き上げる事で、新しい常識に適応しているのです。

——ドバイ独自の特徴的な施設やサービスは有りますか。

モハメド DXHにはセカンドメディカルオピニオン(SMO)という独自のサービスが有ります。国際的に認定された7つの医療機関が参加しており、DXHのWebサイトで公開されています。婦人科、循環器科、整形外科、体外受精(IVF)、不妊治療、神経科、腫瘍科、泌尿器科等の主要専門科で、医療ツーリストは無料でSMOを受ける事が可能です。これらの病院には、DHAのライセンスと10年以上の経験を持つ専任のコンサルタントや専門家が在籍しており、施設も国際的な認定を受け、診断をサポートする最新の設備と技術を備えています。

——ドバイを始めUAEでビジネスを計画する日本企業に、どのような役割を期待していますか?

モハメド DHAには投資専門の部署も有り、投資家に向けて、医療サービスの需要、供給、キャパシティに関する信頼出来るデータをリアルタイムに提供しています。この情報を活用すれば、投資家は特殊な医療サービスに対し、機会を逃さずに投資が可能になります。これによってドバイのヘルスケアセクター全体の競争力を高め、外国からの直接投資や国内投資を呼び込む事が出来る様になるのです。私達は専門的で利用しやすい最高品質の医療・ヘルスケアを提供する為に、民間の医療機関や政府機関と緊密に連携しています。今後3年間に投資を呼び込む重点分野として、リハビリテーションサービスや緊急医療クリニック、メンタルヘルス、慢性疾患、在宅医療を挙げていますが、今後5年間では更に精密医療、遺伝学、在宅看護サービスへの投資促進を図ります。最近では、インフラ関連や医療サービスで、大きな投資プロジェクトの官民連携が有りました。医療サービスでは、国際的医療グループのメディクリニック・ミドル・イーストと透析センターの運用で提携しましたし、高級高齢者施設を運営するフランスのオルペアとはリハビリ・理学療法センターの運営管理契約を締結しました。インフラ分野では、長期ケアが出来る心臓病センターを構築しています。日本には世界的に有名な放射線検査、病理検査の企業が有り、ドバイでも大きな存在感を誇っています。今後は日本の医療関係企業との協力関係を更に深め、強化する事を期待しています。

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