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医療を金儲けに利用した「まとめサイト」の危ない中身

医療を金儲けに利用した「まとめサイト」の危ない中身
薬品療機器法違反だ著作権侵問題も

 誰にでも、どんな病気にも効く万能薬というものなど無いのは医療関係者にとっては常識だが、病気に悩む患者からしたら、標準治療などそっちのけでってしまうかも知れない。だからこそ医療情報というものはすべからく適切に提供されるべきなのである。

 ところが、そんな医療関係者の日ごろの努力を無にする事件が起きた。IT大手「ディー・エヌ・エー(DeNA、東京都渋谷区)」が運営する医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」が根拠のない医療情報を大量に載せていたことが発覚したのだ。そもそもインターネットの情報は玉石混淆だが、同社は検索結果が上位に表示されるように、様々な手を使っていたというから悪質なことこの上ない。

 「ココロとカラダの教科書」と銘打った「WELQ」は2015年10月にサービスを開始。特定のテーマについての情報を記事形式でまとめる「キュレーションサイト(まとめサイト)」の一つだ。DeNAを始め、大手IT企業は軒並み、こうしたまとめサイトを運営しているが、WELQは医療情報を扱うまとめサイトとして、閲覧者を急激に増やしていた。執筆者は外部ライターが中心で、健康や医療の身近な題材をネタに、1日に100本とも言われる大量の記事を提供していた。

内容より広告収入重視の閲覧数増加策
 そんなWELQの記事が問題視されるようになったのは16年10月ごろだ。ネットメディアや医療系ライター、臨床医らからその内容に次々と疑問の声が出た。例えば「肩こり」を扱った記事では、「霊的なトラブルを抱えた方に起こりやすい」などと幽霊が原因のこともあると大真面目に紹介。複数の企業がサプリを販売する「ラクトフェリン」を扱った記事では、「インフルエンザやノロウイルスの予防、放射能からの保護効果もある」などと大宣伝していた。記事の最後には大手メーカーのラクトフェリン関連商品の紹介もされており、明らかに医薬品医療機器法(旧薬事法)に違反する事例だ。他にも「家系ラーメンが風邪に効く」など「トンデモ情報が満載で、とても医療情報サイトとはいえない。ネット上では医療デマサイト、パクリサイトとされていた」(厚生労働省担当記者)というのも納得だ。

 問題が大きくなるにつれ、トンデモ記事はどうやって作られていたかも明らかになった。複数の検証の結果、記事のほとんどは既存の医療サイトや情報の無断引用や改変。当然、引用元への取材や申請はしていない。不正確な引用が多く、複数のサイトから引用した結果、同じ記事の中で内容に齟齬が生まれる例もあった。

 ブログでこの問題を追及していた五本木クリニック(東京)の桑満おさむ院長は「ブログから200カ所以上を引用された」と被害を訴えている。例えば、日焼けの対処法に流水で冷やすことを紹介したブログの内容が勝手に引用された上に改変され、記事では濡れタオルで冷やすことになっていたという。「濡れタオルで冷やすと患部にタオルがくっついて悪化する恐れがある。自身のブログの一部だけを用いて垂れ流された偽の情報を、桑満医師は非常に懸念していた」(全国紙記者)という。

 問題は、こうした記事がただ垂れ流されるだけでなく、検索結果の上位に表示されるようになっていたことだ。「WELQの記事を書いていたというライターが、ネットで検索されそうなキーワードを記事に盛り込むように指示された、など実態を暴露。DeNAも他のサイトから文章を引用する際のコツを掲載したマニュアルの存在を認めた」(経済部記者)。検索されやすい用語を盛り込むことで検索サイトの上位に表示される「SEO(検索エンジン最適化)」という手法を取り入れ、閲覧数を増やすことで広告収入を稼いでいたというのだ。

 さらに、「医療デマを大量にばらまいていたばかりか、記事には『記事の情報、及び情報を用いて行う利用者の判断について、正確性、完全性、有益性、その他一切について責任を負うものではありません』などと内容に責任を負わないという言い訳がしっかり記入されていた」(同)というから恐れ入る。

 問題が表面化したDeNAはさすがに焦ったのか、ネット上で問題とされた記事を次々と削除していった。しかし、そもそも特定の商品を特定の病気に効くなどとする記事を載せること自体、医薬品医療機器法に違反する恐れがある。同法違反の疑いで東京都が事情を聴くところまで問題が大きくなった11月28日になって、DeNAはサイトそのものを非公開とすることを決めたのである。

 医療に詳しいライターは、「実際に商品の販売などを行うサイトについては、都道府県が同法違反にならないか目をとがらせている。しかし、まとめサイトはあくまで情報を集めたサイトという位置付けにとどまり、こうしたチェックの対象外だった」と解説する。確かにWELQはサイト上で商品の販売は行っていないが、検索上位に来るよう工夫を施し、例えば「肺がん」など実際の病名で検索する人たちの目に不適切な内容が触れやすくなるようにしていたのだ。今後は、こうした情報を集めただけのサイトについても取り締まりが及ぶ可能性がある。

 さらに、WELQ問題は医薬品医療機器法違反にとどまらず、まとめ記事が抱える「著作権侵害」の問題にも飛び火した。経済部記者は「他者の発信した情報を集めただけで広告収入を得ようとする仕組みそのものに問題を感じるが、少なくとも記事の内容や写真などで著作権侵害をするのは許されない。だが、残念ながらこうしたサイトはたくさんある」と指摘する。DeNAは、こうした指摘に反応してか、WELQ以外のインテリアや子育て、旅行などの情報を扱う他のまとめサイトも次々と公開休止にすることを決めた。サイバーエージェントやリクルート、ヤフーなどの大手企業も、医療や健康分野の情報を中心に、一部の記事を非公開にする対応を取った。

自社トップが参考にしない健康情報
 問題が大きくなったことを受けてDeNAは12月7日、夫を亡くしたばかりの南場智子会長(創業者)と守安功CEO(最高経営責任者)兼社長が会見を開いて陳謝。第三者委員会を作って検証し、関係者を処分することを明らかにした。会見を取材した記者によると、守安社長は社の業績が下がる中、まとめサイトに活路を見いだし、管理体制が疎かになっていたことを認めたという。一方の南場会長は、WELQの内容について最近まで知らなかったと言い、夫の闘病にあたりネットの医療情報も見たが、参考にしたのは「医学論文と専門家からのレクチャー」だったと明かした。自社のトップが参考にしない健康情報が大量に出回っていたという状況は皮肉だ。

 医療情報は患者のために提供されるもので、広告収入を稼ぐためにあってはならない。毒にも薬にもならないなら許せたが、毒にしかならないのでは、存在そのものを駆逐する他ない。ここまで順調に広がってきたまとめサイトは今、岐路に立っていると言える。

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