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未来の会

第140回 「ウィズコロナ」とポスト安倍の行方

第140回 「ウィズコロナ」とポスト安倍の行方

 新型コロナウイルスの収束が見通せない中で、日本列島は梅雨の季節を迎えた。焦点の東京都知事選は与野党が自前候補の擁立を見送り、小池百合子知事の再選が濃厚だ。メディアの露出度も国民人気も安倍晋三首相を凌駕する小池知事に対し、永田町では「中央復帰が視野にある」との噂が広がる。

 支持率急降下で顔色がさえず、「また政権をポイ捨てするのでは」と陰口をたたかれる安部首相を尻目に、与党内では「公明党の山口那津男代表を暫定首相にして急場をしのぐ」等の珍説まで浮上し、不穏な状況になっている。

 「レースの手作りマスクにレインボーブリッジの赤点灯……。〝ステイホーム〟に〝ウィズコロナ〟というキャッチーな呼び掛け。全てがテレビやSNSを意識した小池流だ。コロナの感染拡大は全部、政府のせいで、自分は都民を守るジャンヌダルク気取り。相変わらず食えないおばさんだよ」

 自民党中堅は小池知事への不信感を隠さない。

 「気に入らない相手を排除した希望の党の一件を皆、忘れてしまったのだろうか。彼女は常に上を目指す野心家でありながら、自分では決して泥をかぶらない。延期した東京五輪・パラリンピックが開催出来なくなり、財政負担で都政が大混乱する前に格好良くとんずらしようと考えているのではないか。小さな布マスクを着用せざるを得ない安部首相に対し、レースのマスクで好対照を演出したあざとさに、それを感じる」

 再選してすぐに都政を投げ出すのは考えにくい。自民党内にわだかまる小池不信には私的怨恨の匂いも漂うから、多少割り引いて考えなければならないが、小池知事や小池支持勢力の野望の先にあるのが「日本初の女性首相」なのは疑いないだろう。都知事はそのステップの1つだと見ておいた方がいい。

安倍政権の支持急落と株上げる地方首長

 小池知事の国政復帰説は過去にも取り沙汰された。本人もその気だったとされるが、時流を読んだ小泉純一郎元首相らが当面は知事職をまっとうする事を進言し、沙汰止みになった。

 今回も時流の判断は難しい。コロナ対応で安倍政権がもたついている間に明快なメッセージを発し続けた地方の首長に、国民の支持が高いのは確かだ。

 ただ、小池知事は大阪府の吉村洋文知事や北海道の鈴木直道知事に比べれば、評価はやや落ちる。ギリギリ及第点との学識者のレポートもある。今後、第2波、第3波が襲ってくれば、評判を落とす事だってあり得るのだ。

 気になるのは自民党の二階俊博幹事長との関係だ。1990年代の政界再編からの付き合いで、小池知事が自民党を離党後も関係は良好だ。反小池の都知事候補擁立に動く自民党都連に対し、「勝てる候補がいない」と牽制し、小池知事再選への道筋を付けたのも二階幹事長だった。政界の辣腕プロデューサーとも称される二階幹事長は集大成としての「女性首相誕生」に興味を持っており、小池知事の国政復帰のカギを握る1人とみられている。

 「二階幹事長は希望の党の幹部だった細野豪志・元環境相らを自分の派閥に取り込んでいる。『何でも拾う』という二階幹事長の性格を考えれば、小池知事の国政復帰を仕掛けるのはこの人以外にいないだろう。問題は衆院選の時期だな。黒川弘務・前検事長の問題もあって支持率がガタガタの状態だし、経済復興も見通しがつかない現状では、早期の衆院解散は難しいだろう。秋から来年春、東京五輪の有無が判明するあたりが焦点になるだろうな」

 自民党幹部は小池知事の国政復帰の可能性は認めながらも、それほど警戒していない。   

 「小池知事の言葉で言えば、ウィズコロナだが、新しい生活様式に国民が慣れてくれば小池人気も自然と沈静化する。東京五輪がなくなって都政をポイ捨てするようなら、底は知れている。コロナ時代に対応した新党の結成等の仕掛けはあるかもしれないが、大した勢力にはならんだろう。小池知事が立憲民主党と仲良く出来るわけでもあるまい」

ポスト安倍は公明の山口那津男代表?

 目下の最大の懸案は政権与党の立て直しだという。惨状は数字に現れている。報道各社の5月中旬の世論調査では内閣支持率は29%(朝日新聞)、27%(毎日新聞)等、過去最低に迫った。読売新聞は42%と4月からの横ばいだったが、不支持率が支持率を上回り、悪化傾向は否めない。毎日新聞の調査では、自民党の政党支持率は25%まで落ち込み、4月から5ポイントも下げた。野党は立憲民主党が12%、日本維新の会は11%で、政党支持率で見ればもはや「1強」とは言えない状況になっている。

 「毎日の数字はいつも少し強めに出るが、地元に帰った若手の話等から、自民党への批判が強いのは実感として分かる。給付金を30万円の限定給付から10万円の一律給付に変えた際のごたごたが大きかった」と自民党幹部は分析している。

 その10万円給付の推進役になった公明党を巡り、自民党内に珍説が流れている。コロナのさなかに醜聞が続く安倍政権ではこの先乗り切れないから、いっそ公明党の山口那津男代表に首相になってもらい、矛先をかわせないかという暫定内閣構想だ。

 自民党長老が失笑しながら話す。

 「首相になれば、身辺、支持勢力を含め丸裸にされる。創価学会との関係もつまびらかにせざるを得ない。政教分離の憲法論争も起こるだろう。公明党が受けるはずがないし、党内合意も無理だ。ためにする話なんだろうが、河井案里参院議員と夫の克行・元法相が公選法違反で立件されるとの情報もあり、党内の空気がよどんでいる事の証だろうな」

 コロナの影響で、政界も先々が読みにくくなっている。暗闇を歩むような不安定な状況と言っていい。

 「国民の声をよく聞き、注意深く、一歩一歩進むしかないだろう。顔がはみ出る小さな布マスクを着け続けている安部首相を世間は馬鹿にするが、俺は案外好感を持っている。目先の事に惑わされず、自民党は国家、国民のためにコツコツと仕事をする。今の与党以外に安定した政権は望めないのだから、我々がしっかりしなければ日本に先はないぐらいの思いでやれば、道は自ずと開けてくる」

 「ポスト安倍」が半ば公然と語られ始めた党内に、自民党長老の正論はどう響くのだろうか。

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