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病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会
【「集中」の是々非々 69】

「英国最大の失敗、BREXITから学ぶ」

「政治家の立ち振る舞いにも凋落が見える」

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かつて、七つの海を征服し、世界のルールを築いた大英帝国。19世紀には「日が沈まぬ国」と呼ばれ、20世紀前半まで世界に君臨していた。そんな英国が、今や世界の潮流から取り残され、漂流を始めている。BREXIT(ブレグジット、英国のEU離脱)が、その転換点であったことに疑いはない。

ブリュッセル(EU本部)から押し付けられるルールに従う事に辟易した英国。膨大な分担金を支払う事への嫌悪感。「こんなはずでは無かった」という閉塞感。自由な英国を取り戻そうという声のもとで、政治家達が主導したのがBREXITであった。

2016年6月23日の国民投票で英国民はEU離脱を選択した。この日は「新たな独立記念日」とも称された。離脱選択の背景には、前述のブリュッセルからの法制度の締め付けや、移民問題への不満、さらには主権回復への願望があった。だが、その「自由への選択」がもたらしたのは、実際には孤立と混乱だった。フリートレードは終わり、全てのトラックには検査と書類が求められ、入国審査は遅々として進まず、待つ時間とストレスだけが増えていった。その過程で、離脱からわずか6年の間に、英国は5人の首相が交代し、経済は停滞し、国際的な影響力も確実に低下した。「こんなはずでは無かった」

こうした現実を前に、英国では今や「BREGRET(ブレグレット)」という造語が市民の間に広まっている。“BREXIT”と“REGRET”を掛け合わせたこの言葉は、多くの国民があの選択を後悔しはじめていることの象徴である。「離脱は間違いだったのか?」という疑問の声が高まる中でも、5人の首相は一人として「自らの判断が誤りだった」とは認めようとしない。保守党の政治家たちは「ロシアのプーチンが仕掛けたウクライナ侵攻による経済失速だ」「コロナ禍による経済停滞のせいだ」などと責任転嫁に終始する。現実には悲鳴にも似た声が英国社会に広がっているにも拘らずだ。国際企業はロンドンから撤退し、移民労働力の減少でサービス業や物流は打撃を受けた。さらに近年では、財政再建を名目に導入された“富裕層への増税”政策が追い打ちをかけ、資産家たちはロンドンを離れて他国へ移住している。ある国際調査によれば、2024年の富裕層流出数で英国は中国を抜き、世界最多となったという。

政治家は時に誤る。だが、誤りを認めない政治家は、より深刻な過ちを繰り返す。失敗を糊塗し、責任を取らない政治家がのさばれば、民主主義そのものが形骸化する。

日本に住む我々にとっても、これは他人事ではない。誤った政策や判断があったときに、誰がそれを認め、誰が責任を取るのか。そして、我々国民は、誰の、どの政策に票を投じるのか。民主主義は「投票したら終わり」ではない。むしろ「その後」が本番である。英国の迷走は、民主主義の先進国が犯した「自己責任不在」の典型例である。過ちを直視せず、未来を修復しようとしない国に、再生の道はない。論語の一節に「過ちて改めざる。是を過ちという」とある。日本の政治もまた、これを他山の石とすべきである。7月20日に参議院議員通常選挙がある。日本の将来を少しでも良い方向に導いてくれる政治家を選ぶために、是非とも投票に行きましょう!

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