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第95回 テリパラチドによりショック

第95回 テリパラチドによりショック

 骨粗しょう症用の薬剤として、副甲状腺ホルモン(PTH)の作用を有するテリパラチド製剤が2種類承認されている。毎日皮下注射する「フォルテオ」(日本イーライリリー)と、週1回皮下注射の「テリボン」(旭化成ファーマ)である。それぞれ、2010年、11年に販売が開始された。国際的にはフォルテオが一般的であり、テリボンは日本でのみ販売されている。

 骨粗しょう症用の薬剤費は2015年には合計2000億円。テリパラチド製剤は高薬価のため、940億円で、ビスホスホネート製剤の合計710億円を上回る市場規模である。この他、エビスタ235億円、プラリア120億円である。16年度のフォルテオの薬価から計算すると、1年間の薬剤費はフォルテオ約53万円、テリボンは年間約56万円となる。これほどの費用をかける価値のある薬剤なのか。効果と害を薬のチェックTIP誌No.74で検討したので、その概略を紹介する。

PTHとテリパラチドの作用

 PTHは、細胞外液のカルシウム(Ca)濃度を狭い正常範囲内に維持する。血中Ca濃度が下がるとPTHが分泌されCa濃度を上昇させ、高くなるとPTH分泌は抑制されCa濃度が低下する。PTHは、①骨からカルシウムを分単位で放出させ、②腎での排出を減らし、③腸管で吸収を増大させて血中Ca濃度を高める。

 テリパラチドはこれと同じ作用を有するが、作用持続時間がPTHの約30倍から150倍と長い。PTHは間欠的に使用すると骨組織が増えるとされるが、PTHは本質的に、骨からCaを遊離させ、腎でのCa再吸収を増加し、腸管からのCaの吸収を増加させ、高Ca血症を来す。

 また、PTHは平滑筋を弛緩させるので、悪心や便秘、血圧低下、頻拍を起こす。さらに、各種細胞の分化や増殖に関係し、がん細胞を増殖させる。動物実験で骨肉腫が報告され、実施中の臨床試験が中断された。神経細胞にもPTH受容体が存在するため、無力症やうつ病、集中力や記憶の低下、認知機能障害など神経・精神障害中枢に影響する。

骨折は減少するが、うつ病、無力症、ショックなども

 フォルテオの臨床試験において、プラセボ群に比較して、椎体骨折率は約3分の1に、非椎体骨折は約3分の2に減少した。

 一方、平滑筋の弛緩に伴う様々な害が、臨床試験において報告されている。悪心、うつ病、無力症、頭痛、呼吸困難、めまいなど用量依存的に増加し、それら「有害事象による中止」が、用量依存的に増加していた(p=0.0002)。また、臨床試験において、筋けいれん4.3%、高カルシウム血症3.1%は、テリパラチドとの関連が否定出来ないとされた。

 死亡率は統計学的に有意ではないものの1.7倍に増加していた(プラセボ群0.58%に対してテリパラチド群1.01%)。

意識消失、失神、ショックが多数

 市販後の害反応報告では、意識消失、失神、ショック症状が多数報告されている。特に、1週間に1回、高用量を注射するテリボンで毎日注射のフォルテオに比べて頻度が高く、循環不全ショックは34倍、血圧低下12倍、意識消失・失神は5倍であった。

実地診療では

 費用と害に比較した価値はないと考える。


参考文献:中西剛明、浜六郎、薬のチェックTIP、2017:17(74):127-130

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