SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

第164回 浜六郎の臨床副作用ノート◉ 肥満用剤ウゴービ:害が多過ぎ

第164回 浜六郎の臨床副作用ノート◉ 肥満用剤ウゴービ:害が多過ぎ

セマグルチドは2型糖尿病用剤(オゼンピック®皮下注、リベルサス®錠)として販売中のGLP-1作動剤の1つである。GLP-1作動剤は、日本でも最近、痩身や美容目的で不適切に使用されており、日本医師会や日本糖尿学会、製薬企業は危険なため適応外使用は行わないよう注意喚起している。

そのような中、2023年3月、セマグルチドが「肥満症」を適応症として、ウゴービ®皮下注の商品名で承認された。ただし、ウゴービ®の維持量(2.4mg週1回)は、糖尿病の標準維持量(0.5mg週1回)の約5倍である。また、発売時期は未定である(2023年10月現在)。薬のチェック109号で、批判的に吟味した1)ので、その概要を紹介する。

太めが長生き

日本のガイドラインではBMIが25kg/m2以上を肥満としているが、複数の生命保険会社が実施したそれぞれ数百万人規模の調査でBMIが25前後の人の死亡危険度が最も低い。高血圧や糖尿病があっても、同様であった。肥満治療の本来の目的は、高度肥満の体重を減らして健康になり、寿命を延ばすことである。減量して寿命が延びる可能性がありうる高度の肥満(BMI35以上:身長160cmなら体重90kg以上、170cmなら体重102kg以上)は、日本では成人の0.9%しかいない。

GLP-1作動剤の体重減少は害作用による

セマグルチドは食欲を低下させることで体重を減らす。薬剤使用で食欲がなくなり体重が減少するなら、それは毒性作用(害作用)の結果に他ならない。食欲低下作用は、開発企業や規制当局も認める通り、主に脳内のGLP-1受容体への作用による。末梢作用(胃内容物の排出遅延など)は短期間で耐性が出現するが、中枢作用は長く持続する。

臨床試験で68週後の体重減少率は、プラセボ群の2〜3%に対して、ウゴービ2.4mg群では10〜15%、最大規模の試験では15.6%減少した。

アドレナリンβ1作用を介した作用

GLP-1作動剤はアドレナリンを介して体重を減少させる。心臓洞房結節のGLP-1受容体が刺激されると、β1アドレナリンが働いて脈が速くなる。中枢性の食欲低下も同様にβ1アドレナリン作用で起こる。

ウゴービの臨床試験でも、他のGLP-1作動剤の試験でも、脈拍が速くなっている。頻脈を起こす薬剤の長期使用は一般的に心毒性がある。実際、糖尿病合併例が約60%を占める心不全患者を対象に、GLP-1作動剤であるリラグルチドとプラセボを比較した試験では、半年後に、死亡+心血管病で再入院+救急受診、が有意に34%増えていた。

発がん、網膜症増加、自殺など他にも害が多い

生理的なGLP-1は必要に応じて分泌され半減期が1〜2分なので、不要時には働かない。しかし、GLP-1作動剤は1週間に1回だけの注射であり不要な時にも体の各部位を刺激し続けるために様々な害を生じる。心臓への害のほか、用量依存性の網膜症の増加があり、膵炎や胆石、胆嚢炎、動物実験から発がん性もGLP-1作動剤に共通の害作用である。やせて健康になるという、本来の目的に逆行する。さらに、自殺念慮も指摘され、欧州医薬品庁(EMA)はGLP-1作動剤との因果関係を審査中である。

実地診療では

肥満症の減量治療には食事療法と運動療法の徹底が基本である。ウゴービ®の適応は、「BMIが27kg/m2以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害(高血圧、脂質異常、2型糖尿病)を有するか、BMIが35以上」と厳格に決められてはいるが、仮にそれに該当するとしても、使うべきではない。ましてや美容、痩身目的で使うことは大変危険である。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top