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第163回 浜六郎の臨床副作用ノート◉ モンテルカスト:悪夢と精神症状

第163回 浜六郎の臨床副作用ノート◉ モンテルカスト:悪夢と精神症状

日本ではロイコトリエン受容体拮抗剤は、プランルカスト(オノン®)が1995年から、モンテルカストが2001年からシングレア®、キプレス®の商品名で販売されている。気管支喘息やアレルギー性鼻炎に適応があり、アレルギー関連の末梢の免疫系細胞にだけ作用すると考える向きがある。しかしながら、ロイコトリエンは白血球系に働き炎症を起こさせ、気管支平滑筋を収縮させる末梢作用だけでなく、中枢神経系など広く各臓器にも作用する生体物質である。薬のチェック誌1)で、Prescrire誌2)を引用しつつ、モンテルカストと悪夢および精神症状についてのスウェーデンの研究3)を扱った。概要を報告する。

報告例の3分の1が精神系害反応

世界保健機関(WHO)の医薬品安全性監視データベース(Vigibase)に、20年5月までに記録されたモンテルカストによる害反応に関する研究が22年に報告された3)。モンテルカストによる約2.5万件の報告のうち精神系が32%(約8100件)を占め、うち上位は、うつ病、不眠、不安、攻撃性、自殺念慮(1249)、悪夢(1118)、異常行動、いらいら(iritability)、怒り、激越(agitation)であった。報告オッズ比(reporting odds ratio)は、異常行動30.2、悪夢26.5、攻撃性25.5、怒り22.2、自殺念慮18.7の突出度が大きかった(いずれも有意)。

攻撃性・自傷行動・自殺行動が目立つ

モンテルカストを服用後に悪夢を経験した1118人のうち、年齢がわかっていた972人中69%が17歳以下の小児で、特に5〜10歳が最も多く32%を占めていた。年齢別に集計された悪夢に合併していた他の精神神経系の反応をみると、2〜10歳では攻撃性を26%に合併し、11〜17歳の思春期では希死念慮と不安をいずれも28%に合併していた。希死念慮だけでなく、自殺未遂や既遂、自傷念慮、自傷行為などを含めると35%と極めて高い頻度を示した。半数の例で処方から3日以内に悪夢が生じていたので、悪夢など精神症状が起こりうることを知っていて中止すれば、多くの場合は治まる。しかし、患者(家族)に情報が知らされていなければ何年間も続けて起こることもあり、中止しても回復しにくい例が出てくる。さらには、精神神経系の害反応は時に命を脅かすこともあり、特に小児には心身ともに大きな傷を残す可能性がある。入院したり、統合失調症用の抗精神病剤が処方された例もあり、特に注意が必要である。

日本の添付文書の記載は不十分

様々な精神神経系の害反応が08年ころから注目され始めており、FDAは20年に患者や親など保護者(carer)からの要求を受けて、モンテルカストの説明書に、希死念慮および自殺企図など重大な精神的害反応を引き起こす旨を太枠内に目立つように記載し、アレルギー性鼻炎に関しては、抗ヒスタミン剤などの治療で症状の改善が不十分な人のみへの使用に制限することを追記した。

一方、日本の添付文書では、「基本的な注意事項」の項目に“因果関係は明らかではないが”うつ病、自殺念慮、自殺及び攻撃的行動を含む精神症状が報告されているので、患者の状態を十分に観察すること”との記載にとどまっており、注意喚起の度合いが不十分である。このため、アレルギー性鼻炎などへの安易な長期使用につながっている可能性がある。

実地診療では

ロイコトリエンの中枢作用を考慮すると悪夢や攻撃性・自殺念慮や自傷行為などの精神症状との因果関係は明らかである。命にかかわることがあるため、精神神経系の害があっても使って利益のほうが大きいのか、情報を患者(家族)に提供したうえで、本当に必要かを考えて処方を考える必要がある。

参考文献—————————————————————————

1)薬のチェック2023:23 (109):112-113 
https://medcheckjp.org/issue/109/ 
2)Prescrire International 2022 Vol.32 No.249 p159
3)Watson S et al. Drug Saf 2022; 45 (6): 675-684

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