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第96回 睡眠剤ロゼレムは免疫抑制剤

第96回 睡眠剤ロゼレムは免疫抑制剤

 ラメルテオン(商品名ロゼレム)は「不眠症における入眠困難の改善」を適応に2010年7月販売開始されたメラトニン受容体作動剤系睡眠剤である。免疫-松果体系(Immune-pineal axis)で示されるように、メラトニンの免疫への影響は確立しているが、ラメルテオンによる害の免疫への関与について、添付文書他、承認情報に言及が全くない。

 薬のチェックTIP第75号では、ラメルテオンの承認情報を検討し、うつ病など精神症状、免疫抑制に関係した感染症や神経系症状、呼吸器症状の増加、さらには、動物実験で明瞭な発がん性を認めた1)。その概略を紹介する。なお、EU(欧州連合)では、当局の否定的見解によりメーカーは承認申請を取り下げている。

メラトニン

 メラトニンは松果体から分泌され、体内時計の調節の他、脳下垂体を介して副腎系、性ホルモンなどに作用し、末梢細胞にも広く分布しており、免疫を抑制している。

メラトニンの睡眠剤としての効果

 臨床試験では、自覚的睡眠潜時(寝付くまでの時間)を、プラセボより4.5分間短縮した。しかしながら、この効果は、毎日服用していると1週間でなくなっていた。また、1日の総睡眠時間を増やさないし、睡眠の質は低下していた。

中枢抑制に伴う害作用

 ラメルテオンの添付文書に記載されている害反応は、眠気や頭痛、めまい、悪心、悪夢、倦怠感、発疹、便秘(以上0.5〜5%未満)、それに、アナフィラキシーとプロラクチン上昇(頻度不明)のみである。

 しかしながら、審査に用いられた情報を検討したところ、中枢抑制に伴う重大な害としての「うつ病」が用量依存性に増加していた。ところが、これが、添付文書に記載されていない。

感染症、神経系症状、呼吸器症状も用量依存的

 承認情報を詳しく検討すると、ラメルテオンによって何らかの有害事象が7割増加していた(オッズ比1.72、p<0.0001、NNTH=9)。つまり、ラメルテオンを服用した9人中1人に、ラメルテオンによって余分に(元々なかった)害が起こったということを意味している。

 感染症は5割増し(28人に1人)、神経系症状が2倍近く(31人に1人)、胃腸障害が2.4倍(30人に1人)、呼吸器系障害は約3倍(56人に1人)。いずれもラメルテオンによって起こっていた。筋・骨格系の害反応も4倍起こりやすくなっていた。

2種類の動物で共通して発がん性

 ヒトでの臨床試験では発がん性に関するデータを見つけることが出来なかったが、マウスとラットを用いたがん原性試験で発がん性が認められた。マウスとラットで共通して用量依存に増加していた腫瘍は、肝細胞がん、肝芽腫、肝細胞腺腫であった。また、ラットでは、精巣間細胞腫も用量依存に増加していた。

実地診療では

 ラメルテオンは、睡眠時間を増やす効果はなく、害は明瞭である。使用すべきではない。


参考文献
1)工藤志乃、浜六郎、薬のチェックTIP、2018:18(75):4-7附:メラトニンの免疫機能への関与、薬のチェックTIPNo75、Web資料http://www.npojip.org/chk_tip/No75-f06.pdf

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