
【医療は効率だけ? 患者満足度の提供が一番です!】
「医師の3割が「入院不要」と言う罠」
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年末の日曜日の朝刊で、厚生労働省や日本医師会が推奨する「患者満足度」を毀損するような記事に出会った。見出しには「医師の3割が不要な入院をさせた」「効果の乏しい医療を行った経験あり」といった数字が躍り、あたか
も医療現場の“無駄・過剰医療”を象徴するかのような印象を与えている。記事中には「患者の希望でやむを得ず」とする医師の声も紹介されているにも拘らず、全体の論調は、あらかじめ設定された結論に向かって世論に「悪質な医療界」をアピールするようにも見える。だが、ここで考えなければならないのは、本当に「不要な医療」や「効果乏しい医療」とは何だろうかと言う事だ。医療サービスの評価軸は、単に数値化された費用対効果だけで良しとするのか? 患者が納得し、または、患者が望む安心な医療の視点――すなわち患者満足度を軽視した医療の提供が行われてはいないか? 「医療費削減」の言葉が、あたかも日本を救う印象を与えていないか? 根本的な問いを投げかけたい。患者満足度は、今や多くの医療機関や評価システムでアウトカムの一要素として扱われている。専門誌でも「医療の質の議論には患者満足度が大抵の場合で入ってくる」と述べられており、医療の成果を評価するうえで、単なる死亡率や疾病改善といった客観指標だけでなく、患者・家族の理解や安心感といった主観的な面も重要視されている。患者満足度には、「顧客ロイヤリティ」に近い概念で測定される指標も存在し、医療はサービスでもあるという認識の広がりを示している。治療を受ける患者自身が「自分の治療に満足している」「説明に納得している」と感じることは、治療への協力やQOL(生活の質)向上にも繋がる重要な要素なのだ。
「患者満足度」は医療の一丁目一番だ
では、患者や家族の声をどのように評価すべきなのか? 在宅医療や外来診療、複数の治療選択肢や入院の是非は、患者・家族の不安や生活背景によって大きく左右される。超高齢社会が進行する日本では、家族が患者を自宅に帰すことに強い不安を抱くこともしばしばだ。そうした現実の中で「やむを得ず入院」という判断を下した医師の判断を、単純に“不要”と断じるのは、医療現場の現実を見落とすことになりかねない。
また、患者本人や家族が十分な説明を受けた上で治療方針を選択したケースは、単なる“感情的な希望”ではない。医療は、患者の自己決定権を尊重する方向に、法制度自体が進んでいる。例えば、外科手術などでは十分なインフォームド・コンセント(説明と同意)がなかったとして、医療機関側が敗訴する驚きの判決もあるほどだ。患者の理解と納得を重視する司法判断は、医療の提供側にも患者の声を尊重する流れをもたらしている。実際に判例でも、患者への手術の必要性やリスクに関する説明が不十分だったとされる外科医に対して、裁判所が医療機関側の責任を認め、医療側が敗訴する驚きの判決が出た。こうした判決は、単に医療ミスや過失だけでなく、患者の自己決定権の侵害にも焦点を当てている。時代が変わったのだ。しかし、この判決が患者側にとって勝訴と言えるのか疑問だ。重篤な状況に置かれた患者とその家族に、重い決断の責任が委ねられた事にもなる。
医療の効率性ばかりを追求する議論は、医療の本質を見失いかねない。医療は人を相手にする営みであり、確かに「費用対効果」「エビデンス(科学的根拠)」は重要だが、患者の不安を和らげ、病気や障害を抱えながらも尊厳を保てるよう支えることも同じくらい価値ある成果だ。そもそも無駄な医療とは誰が決めるのか?患者満足度は、単なる「満足したかどうか」という主観的評価以上の意味を持つ。患者が安心して治療を受けられる環境や、医師と患者の信頼関係、患者が治療のプロセスと結果を理解し受け入れること――これらの総体こそが、医療の質として評価されるべきなのだ。新聞記事や世論が「医療の是非」を問うこと自体は決して否定されるものではない。しかし、データや数字を切り取った論調で医療現場を一括りに批判することは、医療現場で日々難しい判断を迫られる医師や、患者・家族の実情を軽視することにつながる。医療は単なる「コストセンター」ではなく、人間を支える社会的インフラであり、その価値は患者一人ひとりの人生の質にも関わる。
私たちは、医療の価値を数字だけで語るのではなく、患者・家族・医療者の視点を丁寧にすくい上げて評価する姿勢を大切にしたい。是々非々で議論を深め、医療の未来を見据えた冷静な報道と社会的対話こそが求められている。社会にとって必要なのは「煽り」ではなく冷静な議論だ。
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