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「生理の貧困」対策で注目浴びる「フェムテック」

「生理の貧困」対策で注目浴びる「フェムテック」
「女性の健康の悩み」顕在化で医療が変わる可能性も

「生理の貧困」という言葉をご存じだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大による女性の貧困が問題になる中で、メディアや企業の間でクローズアップされてきた言葉だ。日本では表に出にくい「生理」の問題がクローズアップされる背景には、女性の社会進出が進み、発言力や影響力が増してきた事がある。欧米に比べて遅れている「女性の健康の悩み」の顕在化の↘流れは医療現場に及ぶ可能性もある。

 生理の貧困とは、生理(月経)の際に使うナプキン等の生理用品を手に入れる事が困難なほどの貧困にある事を言う。格差社会が広がる海外では以前から顕在化していたが、国内ではコロナ禍で職を失う等女性の貧困が問題となる中で、多くのメディアが取り上げるようになった。

  貧困問題に詳しいジャーナリストは「ドイツや英国では生理用品にかかる税金を安くする軽減税率や非課税の制度が導入されており、スコットランドでは昨年から今年にかけて、生理用品が学校や公共施設で無料提供されるようになった。こうした世界の動きが日本にも影響を与えている」と話す。

2割の学生が生理用品買えない経験

 ジャーナリストによると、2019年10月の消費税10%への増税で日本でも軽減税率が導入されたのに、女性の必需品である生理用品が含まれなかった事に疑問の声が上がった事が、「生理の貧困」の話題が盛り上がるきっかけの1つとみられるという。活動の中心となっているのが、19年から軽減税率の適用を求める署名を始める等、生理や女性の健康にまつわる調査や啓発を行っている若者の団体「#みんなの生理」だ。

 この団体が今年、1年以内に生↖理を経験した学生を対象に、ツイッター等のSNSで回答を募集したアンケートの中間報告(有効回答671件)では、約5人に1人が「過去1年以内で、金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある」と回答。生理用品でないものを使ったり、交換する頻度を減らしたりする等した経験を持つ人も3〜4割に上った。日本の生理用品は世界一品質が優れていると言われ、金額も数百円で決して高いものではない。それでも、国内の学生の2割が、一時的であっても生理用品を買えない「生理の貧困」にある事が明らかになった。

 この問題に対し、自治体も動いている。政府は財政支援を決めた他、兵庫県明石市は今年度から、市内の学校や公共施設で生理用品の無料配布を始めた。東京都中野区は、災害備蓄品として3年ごとに買い替える生理用品をこれまでは廃棄していたが、今年は「品質に問題ない」として無料配布に回した。貧困支援を行うNPO等の民間団体も学生に生理用品を配布する等の支援を行っている。

 企業も手をこまねいているわけではない。コンビニのファミリーマートは3月8日の「国際女性デー」の翌9日から年内いっぱい、全国約1万6400店舗で扱う生理用品を通常価格より2%引きで販売。ただし、やり方を間違えて炎上した企業もある。防災グッズ等を扱う企業、LA・PITA(ラピタ)は「コロナ禍で生理用品を買うお金がない学生さんを応援したい」とツイッターで抽選で5000人に生理用品をプレゼントする企画を始めたものの、「ツイートに直接、学年を付けたリプライ(返信)を送るという応募方法が、不適切と問題になった。匿名でツイッターをやっている人が多い中、プレゼントに応募すれば、アカウントの持ち主が困窮する女子学生である事が分かってしまい、ネットストーキングを受ける恐れがある」(ITジャーナリスト)。

 結局、キャンペーンへの応募はほとんどなく、同社は「今後は方法を見直す」と謝罪した。「生理の事を堂々と話そう」とする動きは間違っていないが、1つ間違えると非常にデリケートな問題に発展する事が改めて明らかになった。

 ただ、生理用品の需要が長く続くのに対して、こうした支援は一時的なもので終わる可能性もある。ブームでなく、きちんと「商品開発」の形で示していく事が大事だ。それが、世界的に注目が高まっている「フェムテック」と呼ばれる製品やサービスの開発だ。「フェムテックは『Female(女性)』と『Technology(技術)』を合わせた造語で、生理や妊娠等女性の健康の悩みを技術力で解決するもの。海外では巨大な市場に成長しつつある」と全国紙の経済部記者。

 遅ればせながら日本でも衣料ブランド「GU」が経血が吸収出来る生理用の吸水ショーツを発売する等、新商品の開発が進む。大手百貨店が今春、「フェムテック」に特化した売り場を期間限定で設け話題になった。

障壁は薬機法上の不明確な位置付け

 政治の世界でも、フェムテックを推進する動きが活発になっている。自民党の「フェムテック振興議員連盟」の野田聖子会長は3月、加藤勝信官房長官にフェムテック製品の普及に向けた提言を提出。フェムテック分野での新商品は必然的にこれまでなかった製品となるが、それ故に「医療機器」「医薬部外品」等を指定する医薬品医療機器等法上の位置付けが明確ではなく、新規参入の壁になっているとされるのだ。例えば、現在市場に出回っている紙製の生理用ナプキンは「医薬部外品」だが、医薬部外品に指定されたのは1961年の薬事法(当時)改正時。それ以降、60年にわたりこの分野での新商品は出ていないという。議連は多様な商品が出てくるためにも規制緩和が必要だと訴える。

 「生理の貧困」も「フェムテック」も、女性の社会進出に伴って、その発信力が大きくなった事で表に出てきた問題だ。これまで隠れていた女性の健康がクローズアップされる事で、「医療現場も変わるのではないか」と指摘する声もある。「生理痛、お産の痛み、乳がんや子宮がん検診の痛み等、女性はこれまで、『痛みは耐えるもの』という文化で育ってきたが、それが変わりつつあると感じる」と語るのは都内の産婦人科の女性医師だ。

 例えば乳がん検診を巡っては「従来のマンモグラフィーは圧迫痛が強く、痛みで倒れる女性も少なくない。検診を敬遠させる要因となっているため、痛くない機器や検診方法が開発され普及しつつある」(同)。ただ、この医師は同時に「都内では無痛分娩を希望する妊婦も多いが、対応出来る医療機関が足りていない」と女性の需要が十分に満たされていない事を明かす。

 医学系大学の教員によると、「女性に多いと言われる膠原病や関節リウマチ等の自己免疫疾患は、男性に多いがん等の疾患に比べて研究が進んでいないのはよく知られた話。研究者や医師に男性が多かったため、女性の病気は後回しにされてきた」という。

 だが、女性の労働力なくして人口減少社会は乗り切れず、女性を生かすためには健康に働いてもらう必要がある。医学部入試での女性差別は是正されつつあり、女性医師や女性研究者も増えるだろう。女性の「痛み」をやわらげる医療は今後のテーマとなるかもしれない。

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