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癒やしと安らぎの環境賞2017

【ドイツ】「温泉保養都市」バーデン=バーデン

【ドイツ】「温泉保養都市」バーデン=バーデン

バーデン=バーデンの概要

 前回に引き続きドイツについてである。これまた、観光や温泉で有名なバーデン=バーデン(バーデン=ヴュルテンベルク州)について今回と次回で述べたい。

 バーデン=バーデンは人口約5万人と小さな都市であるが、年間100万人ほどの観光客が訪れる。滞在日数は平均3.5日。目的は会議、観光、美術鑑賞がそれぞれ3分の1ずつといわれる。

 バーデン=バーデンは「黒い森」を意味するシュヴァルツヴァルトの北部に位置する世界的に有名な保養都市である。ヨーロッパ有数の温泉地として知られ、バーデンという言葉はドイツ語で「入浴(する)」を意味する。

 ドイツで温泉は肉体と精神を休める保養場所と考えられており、バーデン=バーデンも非常に静かで、観光地というより保養地の趣である。

 この地の温泉の歴史は古代ローマ時代まで遡る。例えば、次のような話がある。馬が怪我をした足を温水に入れているのを、兵士が見掛けた。兵士は数日後、その怪我が治っているのを知って、温泉の治癒力を認識したという。また、「カラカラ浴場」の造営で知られるローマ帝国第22代皇帝カラカラはリウマチが持病で、温泉治療を行っていたといわれる。

 「テルマエ・ロマエ(ラテン語で「ローマの浴場」の意味)という日本の漫画(後に映画化)は現代日本の風呂と古代ローマ時代の浴場を描いたコメディだが、1872年にローマ浴場跡に建設された「フリードリヒ浴場」を取材で訪れた際、説明してくれたディレクターはこの映画に出演したという。

 その後、フランク人もこの地域に住んだ。16世紀の初めには温泉地として栄え、街の周囲に城壁が築かれた。しかし、フランス王ルイ14世が1689年に行った神聖ローマ帝国南西部への計画的な破壊によって、この地域は一時荒廃した。

 19世紀のナポレオン時代に街の繁栄は蘇った。ヨーロッパの夏の首都と言われるようになり、上流社会の人々が訪れるようになった。王侯や政治家ではフランス皇帝ナポレオン3世、英国のヴィクトリア女王、ドイツ宰相のビスマルクなど、文化人ではドイツの音楽家ヨハネス・ブラームス、ロシアの作家イワン・ツルゲーネフ、フョードル・ドストエフスキーらが長期滞在したと言われる。最近ではロシア人が投資しているといわれる。第2次世界大戦の影響はなく、繁栄はそのまま続いた。

 道は非常に落ち着いた雰囲気で、周囲には高級デパートやブランドショップもある(写真①)。庶民的な雰囲気もあるが、富裕層の保養所の雰囲気を未だに残している。

フリードリヒ浴場とカラカラ浴場

 さて、昔の趣を残すのがフリードリヒ浴場である(写真②)。このエリアの英明な君主であるバーデン大公国の第6代大公(フリードリヒ1世)の名を冠している。フリードリヒ浴場には現在、年間約50万人の観光客が訪れるが、カジノが180年ほど前に出来た時には年間約6万5000人の観光客であったという、

 ちなみに、温泉療法は2005年までは公的医療保険でカバーされていた。

 フリードリヒ浴場はオープン当時、古代ローマの浴場のように全裸の入浴が許されていたが、現在は混浴の日のみ全裸での入浴が可能となっている。また、コースによって考え方が異なる(写真③)。例えば90分コースであれば、54℃から18℃までの風呂に、温度を下げていきながら入っていき、最後の30分間はゆっくり寝るということに意味があるとされる。冷温を交互に行うという考え方もある。ドイツで最初のスパ(療養温泉)と言えるかもしれない。

 その他、アカスリやマッサージのサービスもある。

ミネラル豊富な「ファンゴ」という火山灰を付けて、皮脂や汚れなどを吸着し、毛穴の汚れをきれいに洗い出したり、炎症を抑える風呂があったり、ロシア皇帝が使ったというプライベートな風呂があったりする。

 また、「クナイプ療法」の部屋もあった、この療法は1800年代の後半にドイツのバイエルン州でセバスチャン・クナイプ神父が始めた自然療法である。1737年に書かれたヨハン・シグムント・ハーンの『驚異なる水の治癒力』を読み、ドナウ川の水で医師がさじを投げた重症の肺結核を治癒させたという話を基にして始めたものである。

 一般社団法人日本クナイプ療法協会のホームページによれば、1993年にドイツでは「自然療法」が標榜診療となり、クナイプ療法は自然療法として医科大学の正科に組み込まれ、医師の資格試験に出題されることが義務付けられた。そして、現在のクナイプ療法は水療法、運動療法、植物療法、食療法、人間の持つ生態リズムを重視する秩序療法の五つからなるという。

 ただ、バーデン=バーデンでは現在、クナイプ療法は中止されている。また、フリードリヒ浴場が現在のように男性と女性が使えるようになるまでは、「アウグストゥス浴場」というものがあり、この浴場が女性、フリードリヒ浴場は男性と決められていた。

 カラカラ浴場は1985年に造られた近代的な浴場である。温泉プール、スパ、サウナがある。カラカラ浴場は健康維持、ウェルネス、フィットネスといった視点を持つ施設である。ドイツ語でクアは「保養」という意味に近く、1980年代には、このようなクアハウス(温泉の医学的効用を利用した各種機能を備える保養施設)、日本的に言えば温泉治療施設が多く作られ、日本でもブームになったのは記憶に新しい。

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