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病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

第102回 膨大化する診療情報を生かすことで 病院経営や医療の質の向上に寄与する

第102回 膨大化する診療情報を生かすことで 病院経営や医療の質の向上に寄与する

従来はレセプトのチェックやDPC(診断群分類包括評価)のコーディングが診療情報管理士の主な仕事だったが、診療情報が膨大化した現在、それをさらに病院経営や医療の質の向上に生かせる人材が求められている。

◆学会の創設は?

末永 1975年に「日本診療録管理学会」として創設されています。「日本診療情報管理学会」に改称したのは2009年です。診療情報管理士の学会で、会員数は5346人(17年3月1日現在)。これまでに3万人余りの診療情報管理士を認定していますから、それから考えるとやや少ないかもしれません。日本病院会主催の学会で、私自身は日本病院会の副会長になった7年前に、この学会の理事を務めるようになっています。

◆診療情報はどんどん増えていますね。

末永 医療のICT化が進むことで、診療情報は膨大になっています。当然、診療情報管理士に求められる仕事も変化してきました。私の前の04年〜15年に大井利夫先生が学会の理事長を務めていますが、その時代に、診療情報管理士の仕事が一般に知られるようになっていきました。具体的には、診療情報管理士の業務指針を作ったり、『診療情報学』という教科書的な書籍を刊行したりしています。こうしたことによって、診療情報管理士の役割が大きくなっていったのです。

◆診療情報管理士の資格を取る人とは?

末永 従来は、病院に勤務する事務職で、レセプトのチェックやDPCのコーディングを行っている人が、通信教育で勉強して資格を取るというケースがほとんどでした。現在は、大学や専門学校で診療情報管理士になるための教育を行うところもありますが、中心となって現場を支えているのは、通信教育で勉強した人達です。認定試験の合格率は50%を切るくらいですから、かなり難関といえます。病院の事務職に就いている人にとっては、カルテが読める程度の知識が求められる「医学一般」が難しいようです。医師、看護師、薬剤師など、医学の専門職の人が受ける場合には、医学一般は免除されます。今年4月からは、医療系国家資格を持つ人は免除されることになっています。

◆医師で資格を取る人もいるのですか。

末永 最近は他の国家資格を持つ人の受験が増えてきました。医師も既に300〜400人が合格しているはずです。医師でこの資格を取るのは、将来、管理職に就くことを考えて、他の分野のことも分かっていたいという考えからではないでしょうか。病院経営に関わろうという医師にとっては、取る価値のある資格だと思います。

診療情報を基に経営の方向性を提言

◆診療情報管理士には何が求められていますか。

末永 かつて診療情報管理は物の管理に重点が置かれていました。しかし、情報が膨大になり、ビッグデータと呼ばれる状況になった現在では、それを医療の中で役立てていく、あるいは病院経営に生かしていく、といった役割も生まれています。そういうこともあり、診療録ではなく、診療情報という言葉を使うようになったのです。

◆実際の仕事は変わっていますか。

末永 2年前、私が学会の理事長に就任した時に、病院内で診療情報管理士の役割が十分に知られ、十分に評価されていますか、という問い掛けをしました。レセプトのチェックをしている人、DPCのコーディングをしている人、というだけでなく、これからは質的な拡大を目指さなければ、という話をしたのです。医療の質の向上や病院経営に関わるような情報を提供していくことが出来れば、病院内で診療情報管理士の評価がもっと高くなるのではないかと思っています。

◆診療情報管理士のいる病院は増えていますね。

末永 確かに増えています。それには、前々回の診療報酬改定で診療録管理体制加算が付いたことも影響していると思います。しかし、それだけではなく、医療の質のためにも、病院経営のためにも、使える情報を出してくれる人が欲しいというニーズがあるのだと思います。

◆例えば、どのような情報ですか。

末永 現在進められている地域医療計画では、それぞれの病院がどういう機能を持っているかを報告し、自院が2次医療圏でどのような役割を果たすか申告する必要があります。その時、診療情報を駆使することで、自院の進むべき方向性が見えてくるかもしれません。病院管理者が「こうしたい」と無理を言っても、情報を元にして「実態はこうです」と話をすることが出来ます。そういう役割が求められているわけです。

◆重要な仕事ですね。

末永 診療情報管理士の資格を取った人が、全てそういった仕事に関われるとは考えられません。資格を取った人の中から、そういった仕事をする人達を育成していく必要があると思っています。現在、診療情報管理教育や診療情報管理業務の責任者としての仕事をする「診療情報管理士指導者」という資格の認定も行っています。これは非常に難関で、学会誌や学術誌への執筆や学術大会での発表などによるポイント条件を満たし、認定試験と論文が合格する必要があります。現時点で指導者に認定されたのは71人だけです。

途上国の人材育成など国際的にも貢献

◆昨年の学術大会は盛会だったようですが。

末永 年に1回学術大会を開いていますが、昨年は診療情報管理協会国際連盟(IFHIMA)の国際大会、WHO-FIC(世界保健機関国際統計分類)の年次総会との合同開催でした。WHOのマーガレット・チャン事務局長にも来ていただきましたし、ICD-11のリビジョン会議が行われたりしたこともあって、非常に盛会でした。

◆国際的な活動に力を入れているのですか。

末永 診療情報管理の分野は、世界的に見て日本はかなり進んでいると言えます。そこで、当学会が中心となって、発展途上国で使うためにICD-10の簡易版を作りました。アジア・パシフィック・ネットワークの中での活動です。発展途上国ではICD-10をそのまま使える状況にはないので、どこでも使える簡易版を作ったのです。これが実際にカンボジアなどの国々で使われ、発展途上国の診療情報管理に役立つと評価されたため、WHOから公式版として出すことになっています。

◆診療情報管理の仕事のグローバル化は?

末永 国際的には、診療情報管理だけではなく、HI(Health Informatics=診療情報学)や、HICT(Health Information and Communi-cations Technologies=医療情報通信技術)を含めた教育が必要と考えられています。これらを身に付けたところに、IG(Information Gover-nance=情報統治)があり、病院経営などに関われるようになるということです。今後、国際的な話し合いを経て、グローバルな認証が出来るのであれば、それを取れるような教育システムを構築していく必要があるだろうと考えています。

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