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第134回 アナフィラキシー:AdとCS

第134回 アナフィラキシー:AdとCS

 厚生労働省(厚労省)は3月11日、合計約18万回の接種で36人のアナフィラキシーを公表した¹⁾。ワクチンや薬剤による命にかかわる害反応「アナフィラキシー」は、本シリーズの第2回と第4回に詳報した。「薬のチェック」では速報版No191²⁾で最新情報を掲載し、95号(4月末発行予定)³⁾で取り上げる予定である。

死亡直結症状は喉頭浮腫による気道閉塞

 アナフィラキシーの症状は主に、(1)皮膚・粘膜症状(発疹・ジンマシン、かゆみなど)、(2)呼吸器症状(咳、喘鳴、呼吸困難、チアノーゼなど)、(3)循環器症状(血圧低下、逆に血圧上昇など)の3大兆候と、(4)消化器症状(下痢、吐き気、嘔吐など)のほか、あらゆる臓器がアナフィラキシーの場となりうることを心得ておく必要がある。たとえば脳や心臓にもアナフィラキシーが起こる。

 しかし、命にかかわる最も重大なアナフィラキシーの兆候は、喉頭浮腫による気道閉塞である。劇症例では、皮膚症状がなく口唇や局所のシビレだけ、または、それもなくいきなり呼吸停止、窒息をおこすことがあるので注意が必要だ。

6000人に1人発症:米国と同程度

 3月11日までに報告されたCOVID-19用ワクチンによるアナフィラキシー36例は全員20〜50代。女性が97%、アナフィラキシー歴が9人に1人あり、3割に喘息の既往があるなど、アレルギー歴が9割近くにあった。

 呼吸器症状が65%、皮膚症状が86%にみられたが血圧低下の記載は4人だけであった。呼吸器症状と皮膚粘膜症状でアナフィラキシーと診断・報告されたのは適切だが、皮膚・粘膜など1臓器の症状だけで報告された例が5例、3主徴がいずれもなかった例が2例あった。

 厚労省はブライトン基準でアナフィラキシーは17例中7例(41%)だけというが、臨床的にアナフィラキシーとの判断で適切な処置がなされた例は、17例中14例(82%)。全36例中では29例(81%)。100万人で160人、約6000人に1人の発症である。欧米の報告の100万回で5〜19人という頻度は自発報告を基にしており不正確。日本のこれまでの接種者は医療従事者だが、米国の医療機関における綿密な調査結果では100万人対270人。日本も同程度であり、この頻度が正確である。

治療にはアドレナリンとステロイドも忘れず

 アナフィラキシーの治療の大原則は、アドレナリンの速やかな筋注である。喉頭浮腫による気道閉塞など劇症例には、静注に引き続きアドレナリンの点滴を要する。

 薬のチェック²·³⁾で徹底的な調査の結果、今回特に強調したことは、(1)アドレナリンはマスト細胞のβ2受容体に作用してマスト細胞を脱顆粒抑制して効くこと、(2)アドレナリンに引き続きステロイドの使用を必須とし、(3)β遮断剤併用時にも、グルカゴンよりアドレナリンとステロイドを適切に使うことが重要だ、としたことである。

 日本のガイドラインがアドレナリンの重要性を強調しているのは適切である。しかしその機序として、β2受容体を介したマスト細胞の安定化よりも、昇圧や心刺激を主作用としているのは間違いだ³⁾。

 また、ステロイドを速やかに使用すると再重症化は3%に過ぎず、不使用なら27%が再重症化している。オッズ比12.2(p=0.000006)であり、効果は明らかである³⁾。

 β遮断剤使用中でもアドレナリンとステロイドを適切に使えばアナフィラキシーは治療できる。グルカゴンを必要とした全症例を点検したが根拠はなかった³⁾。

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