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第135回 アナフィラキシーは高頻度

第135回 アナフィラキシーは高頻度

 厚生労働省(厚労省)は3月26日、合計約58万回の接種で181例のアナフィラキシーの報告を受けたが、ブライトン分類に合致するアナフィラキシーは47人にすぎず、重大な懸念はないとした¹⁾。しかし、実際には132例がアナフィラキシーと判断できた。前回に引き続き「薬のチェック」速報版No191〜194²⁾と95号³⁾(4月末に発行予定)に掲載するアナフィラキシー関連記事から紹介する。

181人中132人はアナフィラキシー

 薬のチェック誌で、ブライトン分類を用いて検討した結果、181人中81人(45%)が分類の基準に合致するアナフィラキシーであった。また、同基準を満たさなくとも、初期症状から早期のアドレナリン使用が適切と考えられた例を含めてアナフィラキシーと判定したところ、132人(73%)であった。

 58万回の接種で132人のアナフィラキシーを100万回接種あたりの発症頻度に換算すると230人、約4400人に1人の発症頻度である。

米国の厳密調査結果の頻度とほぼ同じ

 欧米でのアナフィラキシー発症が100万回あたり5人とか20人というのは医師の自発報告をもとにしたもので不正確である。

 米国の医療従事者を対象とした厳密な調査では、ファイザー製ワクチンで100万回あたり270人、モデルナ製で100万回あたり230人、約4000人に1人である。米国のこの結果と、薬のチェック誌が判定した日本の結果は非常に近い。アナフィラキシーの発症が高頻度であることは確実である。

厚労省がアナフィラキシーから除外した例

 厚労省の専門家がアナフィラキシーから除外した例中、問題の大きい2例を示す。

症例42:26歳女性、アナフィラキシーの既往あり。

 ワクチン筋注5分後に、鼻汁、咳そうが出現。みるみる呼吸困難となり気道狭窄等が著明となり、ボスミン筋注計4回、ステロイド、抗ヒスタミン剤など薬物治療で回復。経過観察目的で入院。

▽専門家の評価:ブライトン分類カテゴリー4(情報不十分)、呼吸器症状のみなのでアナフィラキシーでない。

▽薬のチェックによる解説:アナフィラキシーの既往がある人で接種5分後に突然発症し、みるみる呼吸困難、気道狭窄等が著明となり、アドレナリン筋注を4回要した重篤例である。ブライトン分類に忠実に評価すると、カテゴリー5(アナフィラキシーではない)となる。ブライトン分類そのものの欠陥を示す例である。

 最新(2020年)の世界アレルギー機関(WAO)のガイドラインは、このような症例もアナフィラキシーと判定できる診断基準に改訂した。

症例13:53歳女性。ワクチン筋注15分後から、前胸部の発赤・発疹、呼吸困難。上気道狭窄音あり。アドレナリン筋注で症状改善。H1、H2ブロッカーとステロイドで症状改善し帰宅とした。

▽専門家の評価:ブライトン分類カテゴリー4。各症状ともアナフィラキシーと判断できる明確なものでない。

▽薬のチェックによる解説:上気道狭窄音は、ブライトン分類の呼吸器大症状の一つ「上気道性喘鳴」に相当し、喉頭浮腫を示す重大な症状。前胸部の発赤・発疹は、少なくとも皮膚の小症状。したがって、ブライトン分類カテゴリー2のアナフィラキシーである。

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