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未来の会

第101回 買収に奔走するブレーキの効かない〝暴走車〟

第101回 買収に奔走するブレーキの効かない〝暴走車〟

虚妄の巨城
武田薬品工業の品行

実質的な移民政策か、人手不足の解決に必要な制度か

政府は、外国人労働者の受け入れを拡大し、単純労働を含む分野に新たな在留資格を創設する出入国管理法などの改正案をまとめ、来年4月にも施行を強行する構えだ。条件付きで永住にも道を開きかねず、与野党内から「実質的な移民政策への大転換だ」などの批判が高まっているが、政権は「人手不足を解消するため必要な制度」とごり押しする方針だ。新たに入国する外国人労働者に対する社会保障制度の備えや不法滞在化した場合の治安の悪化など解決すべき課題は多く、将来に禍根を残さないか懸念される。

 今回の法案は、少子高齢化の進展に伴う労働力人口の減少を外国人労働者を受け入れることで補い、さらなる経済成長を促す狙いがある。法案を閣議決定した11月2日午前の記者会見で、菅義偉・官房長官は「少子高齢化、人口減少が進み、人手不足が深刻化する中、外国人材を受け入れる新たな在留資格の創設は喫緊の課題だ」と意義を強調した。

 受け入れの拡大は、人手不足が深刻化している業種に限定し、農業▽介護▽ビルクリーニング▽素形材産業▽産業機械製造▽電気・電子情報関連産業▽建設▽造船・船用工業▽自動車整備▽航空▽宿泊▽漁業▽飲食料品製造▽外食の14業種とする。

 初年度に受け入れる人数は最大で4万7000人と見込んでいるという。外国人の受け入れ拡大に伴い、政府は生活環境の整備も同時に進める方針で、外国人労働者向けに自治体の相談窓口の一元化や、医療機関の態勢整備など総合的な対策を年内にも取りまとめる方針だ。

「永住」への道が開かれる

 法案の概要を説明すると、新在留資格「特定技能」を2種、創設する。「特定技能1号」は一定の知識・経験を要する業務に就くもので、通算5年まで在留資格を得られるが、家族を帯同することはできない。「特定技能2号」は熟練した技能が必要な業務に就き、在留期間を更新することは可能。配偶者と子供を帯同することができ、条件を満たせば、「永住」できるようになる。

 生活に支障がない程度の日本語能力や、各業種の所管省庁の試験などへの合格が取得条件で、技能実習生が3年(最長5年)の実習を終えると、無試験で1号を取得できるようになる。試験を経て1号から2号への移行も可能とする。1号の受け入れは先に示した14業種が対象となるが、2号は建設や自動車整備など5業種程度に絞られる見込みだ。ただ、日本人の雇用を圧迫しないようにするため、人手不足が解消された場合は一時的に受け入れを停止することもできる。

 特に、「永住」への道が切り開かれることから、野党は「実質的に移民政策への大転換だ」と追及している。しかし、安倍晋三首相は11月5日の参院予算委員会で、「政府としていわゆる移民政策を採ることは考えていない。人口に比して一定程度の規模の外国人やその家族を期限を設けることなく受け入れることで国家を維持しようとする政策は考えていない。今回は限られた業種について限定的に外国人を受け入れるものだ」と反論しているものの、説得的ではないのは明らかだ。

 また、出入国管理法改正案と同時に、法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げする法務省設置法改正案も提出する。従来の入国管理業務に加え、入国後の外国人労働者の在留管理や生活支援を行う内容が柱だ。外国人への支援は受け入れ先の他、出入国在留管理庁の長官の登録を受けた「登録支援機関」が担い、これは業界団体などが想定されている。長官は、受け入れ先企業などの雇用契約や支援状況を確認し、指導や助言を行えるとしている。将来的に長官を事務次官級とし、1万人規模の巨大な官庁とすることも検討されている。

 急ごしらえのある今回の法案だが、布石はあった。2016年にまとめた自民党政務調査会の「労働力確保に関する特命委員会」の提言だ。外国人労働者に関し、「専門的・技術的分野の労働者以外の労働者は、いわゆる単純労働者とし、その受け入れについて慎重に対応してきたが、このような単純労働者という用語を使うのは不適切で、このような考え方は採るべきではない」と注文を付けている。

 菅官房長官も前向きで、地元の介護施設が人材難で、外国人の受け入れ拡大の必要性を感じていた、との話もある。首相は提言が出された当時、「1億総活躍社会の実現」や「働き方改革」を掲げ、関連施策を仕上げていったが、ある政府関係者は「こうした看板政策の陰で、法務省と厚労省の関係部署の職員が集まり、外国人の受け入れ拡大に向けた政策の検討を始めていた」と明かす。

 外国人労働者の受け入れ拡大は政府の思惑通りに進むのだろうか。外国人労働者数は、08年の約48万人から17年は約128万人と急増しており、留学生のアルバイトや技能実習生の増加が要因だ。外国人材派遣会社のある幹部は「東南アジアから人気のアメリカやイギリス、オーストラリアは就労ビザの取得を近年厳しくしており、比較的給与水準の高い日本に流れてくる可能性は十分にある」と指摘する。ただ、介護分野については、「介護福祉士の資格を取らないといけないため、期待できないのではないか」(厚労省職員)との声もある。

公的医療保険の不正利用は防止

 自民党内では外国人の公的医療保険の利用について議論が活発になっている。新たな在留資格で入国する外国人も、要件を満たせば日本人と同様に医療保険や公的年金、雇用保険への加入が必要となるからだ。外国人労働者を雇用する事業者の未加入が既に問題視されている。さらに、年金制度では仮に保険料を納めても10年に満たずに帰国すると無駄になるため、日本と母国で保険料の二重払いしなくても済むよう社会保障協定の締結を進めている。

 ただ、民間企業の従業員が加入する健康保険は、「扶養家族」に国内居住要件がなく、海外に残した家族の医療費まで健保が負担することになるので、厚労省は扶養家族に同居要件を付ける方向で検討している。自民党内では、不正な利用について防止を求める声が多く、厚労部会は外国人が他人の保険証を使う恐れを念頭に、「運用の強化や法改正を含めた制度的な対応の強化」などを政府に求めている。

 首相は、人手不足に悩む業界団体や地方と、移民解禁を警戒する自民党内の保守系議員との板挟みの中、見切り発車している。首相に近い稲田朋美・筆頭副幹事長は、自身が会長を務める保守系勉強会「伝統と創造の会」の会合を開き、法案成立後に政府が策定する基本方針に意見を反映させる案を提示した。今回の法案は参院選対策の側面もあるが、「一歩間違えるとマイナスになりかねない」(自民党関係者)との指摘もあり、難しい舵取りを迫られている。

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