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第82回 剤性カタトニア-悪性症候群

浜六郎 悪性症候群は、抗精神病剤(神経遮断剤)や制吐剤、抗ヒスタミン剤の一部の過量、あるいは悪性症候群を軽減する薬剤を急に中断、減量した場合でも生じ得る、進展の前段階に生じる錐体外路症状やカタトニアの症状で早期に気付き適切な措置を講ずれば、死亡はもちろん、防止が可能である。気付かず適切な判断を誤れば、患者を死亡に至らしめる。この害反応について薬のチェックTIP誌68号1)で総説したので、その概略を紹介する。

症例2)12歳男児。幻聴や妄想、自他殺念慮のため「分類不能の精神病」との診断で入院。agitation(興奮)のためloxapine(従来型抗精神病剤)では抑制できず、ハロペリドールに変更後錯乱と興奮が増悪。アカシジア(静座不能症)に対しロラゼパム(ベンゾジアゼピン剤)開始。ハロペリドール1日最大20mg=クロルプロマジン(CP)換算1000mg使用2週間後、頻脈や発汗、嘔気、尿失禁、筋硬直。体温36.1℃、血圧132/88 mmHg、脈拍100/分、呼吸数20/分、CK801 U/Lと上昇。再度loxapineに変更、5日間で自律神経症状悪化のため体温は35.8〜36.8℃だが悪性症候群と診断され、loxapine中止。CK1745 U/L。ブロモクリプチン、ロラゼパムで2日後には軽減したため、ブロモクリプチンを漸減の上、中止。諸症状は消失し、退院。3か月目の神経学的検査は正常。数か月後、幻聴と興奮のため、クロルプロマジン50mg/日開始。その後18か月間は安定。慢性妄想型統合失調症と診断された。

発症前には錐体外路症状-カタトニア
 一般的な診断基準は、完成した悪性症候群のものである。だが、その前に、ジストニア(筋緊張異常反応)やアカシジア(静座不能症)、パーキンソン症状に伴う粗大な振戦や特に筋強剛(著しい場合は鉛管状強剛)などを認める。ついで統合失調症におけるカタトニア(緊張病)と同様の錯乱や興奮に進展する。

 そこでWoodburyらは、錐体外路症状−カタトニア−悪性症候群を、一連の病態と捉え、5段階に分類し、完成前の段階で早期に対処することの重要性を指摘した。

第1段階:錐体外路症状(筋緊張異常反応、アカシジア、パーキンソン症状)のみの段階であり、誘発薬剤の中止と、ビペリデンなど抗コリン剤系抗パーキンソン剤のみで対処可能。

第2段階:筋強剛増悪、自律神経障害あり、発熱±。CK異常±。無動、あるいは逆にアカシジア悪化、興奮、錯乱、せん妄などカタトニアの段階。

第3段階:筋強剛/歯車現象増悪、発熱、CK上昇。

第4段階:完成した悪性症候群の段階。

第5段階:症状激化、不可逆的となり死亡し得る。

最悪事態の予防のために
 CP換算1000mgなど(冒頭症例)、悪性症候群誘発薬剤の合計量が多い場合や、増量速度が速い場合には、錐体外路症状やカタトニアを通り越して一気に悪性症候群に進展し得る。予防方法は、錐体外路症状を来し得る薬剤を一気に増量せず、少量から開始すること、前駆症状となる錐体外路症状、カタトニアの段階で気付いて軽症の段階で早期に原因薬剤をできる限り中止し、抗コリン剤系抗パーキンソン剤、ベンゾジアゼピン剤を使用することである。たとえ発熱を伴う感染症が認められても、単なる感染症と誤診してはならない。



参考文献
1) 浜六郎、薬のチェックTIP.2016:16(6):132-135
2) Hynes Fら、Am Acad Child Adl Psy.1996:35:959-61

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