SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

「癒しと安らぎの環境」フォーラム2022 表彰式・コンサート リポート

集中医療大賞・髙久史麿特別賞2022

前川 恭子
萩市国民健康保険むつみ診療所 所長

スタッフ皆が交代で休めるようにする等、人材不足の地域医療でも働き易い環境作りに励む。医療を通じて多大な貢献を重ねて来た事を顕彰。
髙久史麿先生には1回しかお会いした事が無いので、受賞を聞いて驚きましたし、大変光栄です。子供の頃から田舎のお医者さんになりたかったのですが、それは患者さんをゆっくり診察出来るからです。私が医学生の頃は、本当の意味での総合医というものが在りませんでした。色々な患者さんを診ると、1人ひとり個性が有り、様々な人生が在るものです。自分の子育てに役に立つ話が聞けるし、私自身の価値観も広がります。地域医療は患者さんとの距離が近く、学べる事が沢山有るのです。都会には高名な先生が大勢いらっしゃいますが、地方にも素晴らしい先生が数多くいらっしゃいます。今の専門医制度の中では地域医療に携わろうという人は少数派で、人口減少や過疎でニーズも減って行くかも知れません。若い人達には、自分の好きな事をどんどんやって欲しいです。その上で、もし、地域医療に携わってみたいという人が居れば、活躍の場を作ってあげるのが私の役目だと思っています。


癒しと安らぎの環境賞

この賞は、医療施設にアート(美術や音楽、癒しの活動等)を取り入れ、人や環境に配慮する事で、その施設が癒しと安らぎの場になってほしいと願い、2002年に日野原重明先生を名誉会長、岩﨑榮先生を会長として立ち上げた。この趣旨に合う癒しの活動に熱心に取り組む医療機関にこの賞を贈呈し顕彰する。

順天堂大学医学部附属順天堂医院
小児医療センター

小児医療センター開設で、病棟保育士や音楽療法士等が、子供の心配や苦痛を和らげると共に安心感を与え、心の問題
これ迄個別に存在していた小児の診療科を、1つにまとめたのが小児医療センターの最大の特長です。縦割りだった診療に、「子供」をキーワードに横の繋がりを持たせられるようになりました。それ迄も小児科には保育士やボランティアがおりましたが、他の科には居なかった為、均一なケアが行われない可能性も有りました。現在は子供の患者さんは全て小児医療センターに入院されますので、皆に同じケアを提供出来ます。小児の場合、成長や発達への気遣いは勿論の事、心のケアも重要で、治療や検査に対する苦しみや不安を取り除く事が非常に大切な為、子ども療養支援士や音楽療法士、ボランティア等のサポート体制も導入しました。子供達を想い、子供達が喜ぶ、子供達の気持ちに配慮した環境を目指す中で、今回の「環境賞」を受賞出来た事は、私達の活動が評価され結実した証しとなり、論文等が評価された時とは違った感動が有ります。また雑誌『集中』では、日頃気付けない医療の周辺環境にも注目して下さり、非常に感謝しています。


医療法人平成博愛会
世田谷記念病院

長期急性期病床という独自のコンセプトを掲げ、見晴らしの良い患者食堂兼相談室、開放感いっぱいの中庭等、リハビリ患者に癒しとなる空間作りを顕彰。
この度の受賞は、日頃コロナ禍で奮闘しているスタッフの日々の努力の結果であり、大変光栄に思っています。米国にはLTAC(Long Term Acute Care)病院、つまり「長期急性期病床」が在りますが、当院はグループの会長である武久洋三先生が「PAC・SACを専門的に取り組む日本版LTAC」を創設すべく10年前に設立しました。そして、地域の多くの事業所からご相談頂く「在宅復帰支援」に注力。病床の多くを個室とし、出来るだけ患者さんの自宅に於ける療養環境に近い形でリハビリを行い、早期の在宅復帰を支援しています。コロナ禍に於いても「絶対に見捨てない」というグループの理念の下、患者さんにとって必要な「当たり前」をきちんとやり遂げ、 院内の職種・専門性の枠組みを超え不安や困難を抱えている人をあらゆる方法で支援しています。昨年より本格的に取り組んでいる院内組織向けの「心理的安全性」の取り組みや、入院患者さん向けの「ドックセラピー」などもその一環です。患者さんは勿論、職員にとっても“癒しと安らぎ”の環境を整えていく事がよりチーム医療の質の向上に寄与すると考えています。


公益財団法人日本生命済生会
日本生命病院

「アートと医療の融合」をコンセプトに、「心と身体の癒しを提供する、心地好い快適な病院」を目指した、患者や住民の憩いの場となる癒しの空間作り活動を顕彰。
1924年に設立された日本生命済生会は、当初から「人々の生命や生活を救い、人々の役に立つ」を意味する「済生利民」を基本理念として来ました。当院は元々アートに高い関心があった訳では無く、移転地に府立江之子島文化芸術創造センターが在り、周辺を大阪のアート発信源にしたいという府の思いも有って、医療とアートの融合を考えるに至りました。医師オスラーが「医療はサイエンスを基礎にしたアートである」と言う様に「アート」は心の癒し、「医療」は心と身体の癒しと捉え、1階の半分以上をアートスペースとし、患者さんや近隣の住民に開放しています。又、霊安室や手術室へ続く廊下にも安らぎの環境作りをしています。『集中』は非常に幅広い観点で出版されていると感じていますが、こうした取り組みを内外に広める為にも、「環境賞」として認めて頂いた事は有り難い限りです。今後の医療は予防医学が進展し早期診断・治療が進む事で、先進医療や特殊技術が重要になる為、これ迄とはまた違った幅広い視点が求められると思います。


認定NPO法人
マギーズ東京

がん患者や家族が看護師ら専門職スタッフに無料で相談出来る英国発祥の民間施設が2016年開設。来訪者を癒す空間作りの活動に対しての顕彰。
当施設はチャリティで成り立っており、今回の受賞によって多くの方に知ってもらえるのは、とても嬉しいです。又、新たにご協力頂ければ、大変有り難いです。マギーズセンターは、乳がんで亡くなった英国人造園家、マギー・ジェンクスさんの「治療中でも患者ではなく1人の人間で居られる様な場所を」という願いを基に、1996年英国に出来た相談施設です。日本のがん相談室は院内に在りますが、病院の中だと患者という立場からは逃れられません。英国のコンセプトはそれが院外に在る事。病人としてではなく、1人の人間として居られる場です。私達は来訪者を「患者」ではなく「がんと共に歩む人」と表現しています。マギーさんの遺志に沿い、「第2の我が家」の様な居心地良い環境で、友達の様に親しく医療者と話したり、プログラムに参加出来るようにしています。その為には建築による環境作りが重要で、例えば、自然光をたっぷり取り入れ、開放的な空間で落ち着ける雰囲気が必須です。湾岸エリアの当施設は海風も感じる事が出来ます。


社会医療法人財団仁医会
牧田総合病院

コンセプトは「病院らしくない病院」で、全ての場所がゆったりと作られ、曲線や間接照明が温かな雰囲気を醸成。患者の癒しと憩いの場にした環境作りと活動を顕彰。
蒲田への移転を契機に、「すべての人に安心を」というビジョン実現の為に、固定観念を打ち破り「病院らしくない病院」にしたいという考えで設計段階から話し合いました。「○〇科」といった表示を一切止め、待合も番号だけの表示にして、ホテルライクにしたいという構想からデザインやサインにも拘りました。患者さんに「ホテルみたい」と言われると非常に嬉しいです。ユニフォームやストラップ、封筒等のグッズの色調も統一した他、ロゴマークもリニューアルしました。院内にはベーカリーも在り、街に溶け込む様にサイン等も工夫した他、200人規模のホールも作り、開放する事で地域との交流を深める様にしています。こうした活動の中、来院する人達がすんなり入れる環境を作ったという部分を評価して頂いた「環境賞」の受賞はとても嬉しく思います。殊に、「環境賞」を立ち上げた雑誌『集中』については、独自のコンセプトで医療を様々な視点で捉えているのが興味深い点で、医療全体をユニークな着眼点で捉えている事にも感心します。


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