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未来の会

第153回 ◉ 浜六郎の臨床副作用ノート ワクチン無効と初抗原原罪原理

第153回 ◉ 浜六郎の臨床副作用ノート ワクチン無効と初抗原原罪原理

オミクロンBA.1株対応の2価SARS-CoV-2ワクチン(オミ1ワクチン)と、オミクロンBA.4/5株対応の2価SARS-CoV-2ワクチン(オミ5ワクチン)の接種が始まった。その効果が怪しいことを前号で予告した。薬のチェック104号1)と、速報版207号2)で、効かない理由を詳しく解説したので紹介する。

無効の基本的原因は、変異しやすいウイルスに特徴的な「初抗原原罪原理(The Doctrine of Original Antigenic Sin)」と呼ばれる現象による。なお、従来のSARS-CoV-2ワクチンは、中国武漢に起源をもつ起源ウイルス株に対応したワクチンなので「起源ワクチン」、できた中和抗体を「起源抗体」と呼ぶ。オミクロン株に対する抗体は「オミ抗体」と呼ぶ。

イスラエルの2022年調査

Magenら3)は、イスラエルで2022年1月3日から2月18日までのオミクロン株流行時(日本の人口換算で平均1日60万人超)に起源ワクチン4回目接種者と、3回接種4カ月以上経過後の人を比較し、4回目接種7〜30日後には、COVID-19を55%防止したと報告した。しかし、健康者接種バイアス(接種日の感染・発病危険度)で補正すると、4回目接種者の接種後30日までの感染・発病危険度は、接種初日の危険度を1とした場合、それを下回ることが全くなく、4回目の接種は無効という結果が得られた。

「初抗原原罪原理」とは

変異が激しく起こるSARS-CoV-2やインフルエンザウイルスの場合、その人にとって未経験のウイルス(X0)に感染すると、X0に対して最も強い免疫(抗体)ができる。その後、変異ウイルス(X1)にさらされてもX1に対する免疫ではなく、最初に感染したX0に対する免疫で対処するため、X1に罹る。変異株対応ワクチンを打っても、最初に打ったワクチンに対する抗体が強くできるだけで、変異ウイルス(X1)に対する抗体のでき方は少なく効かない。これが、「初抗原原罪原理」である。

無効の原因は「初抗原原罪原理」

起源ワクチンを4回接種してもオミクロン株に無効であったのは、起源ワクチン接種者にできる抗体は起源抗体であり、オミクロン株ウイルスに感染しても、オミ抗体ができ難いためである。実際、起源ワクチン2回接種の半年後に起源ワクチン3回目を接種した人にできた起源抗体はオミ抗体の6倍であった。また、起源抗体を3回接種していた人がオミクロン株に感染してできた起源抗体は、やはりオミ抗体の6〜13倍であった。

オミ1ワクチンを接種してできるオミ抗体は起源抗体の約8分の1であり、起源ワクチンを打ってできるオミ抗体の1.6倍に過ぎず、これでは効かないのも不思議はない。

オミ5ワクチンは起源ワクチンと有意差なし

極めつけは、3回接種している人に、4回目としてオミ5ワクチンを打ってできるオミ5抗体が、起源ワクチンを4回目として接種した人と有意の差がなかった(p=0.54)ことである4)

害はなくなることはない

ワクチンは、効果はなくなっても、害がなくなることはない。ケンタウロス株による第8波の流行に備えるためとして、無効なワクチンを推奨することは、害だけを生むことになる。もはや、ワクチン接種は中止すべきである。

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