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未来の会

日本大学理事・井ノ口被告背任事件の余波拡大㊦

日本大学理事・井ノ口被告背任事件の余波拡大㊦
田中英寿理事長逮捕は司法当局の悲願

ついに田中英寿日本大学理事長が逮捕された。日本大学理事井ノ口忠男被告と医療法人錦秀会藪本雅巳被告が日本大学板橋病院の建替え工事の不正に絡んだ背任容疑で逮捕・起訴されたが、その余波をもろに被った田中容疑者逮捕は更なる余波を起こすのか? 東京地検特捜部と上級庁の協議は続く。

 東京地検特捜部は11月29日に日本大学理事長田中英寿を5300万円の所得税法違反容疑で逮捕し、家宅捜査を行った。今回の東京地検特捜部の家宅捜査には東京国税局のマルサが参加し、それこそ天井裏迄探しまくった。市ヶ谷の日本大学本部の理事長室の金庫に数千万円、ちゃんこ屋の従業員の住居屋根裏に2000万円と総計で2億7千万円が見つかったと言われている。

 先ず、田中理事長逮捕は司法当局にとって悲願だった。井ノ口被告と藪本被告が逮捕された時から「田中理事長逮捕」が世間の耳目を集めていた。そのXデイがついに来た。だが、逮捕容疑は2人とは異なる脱税だった。この逮捕容疑に落胆を隠さない日大関係者もいる。この程度の金額の脱税では、当然ながら執行猶予が付くと考えるからだ。一般的に言えば、脱税での逮捕は、もうこれ以外での逮捕容疑が無かった事を示している。しかし、今回はそうとも言えないと元東京高検の弁護士は「これから本格的な捜査が始まる。これは序章に過ぎない」と言う。

 昔の話だが、米国マフィア界のボス、アル・カポネを何としても逮捕したかった検察・警察当局は総力を挙げて捜査を続けたが、結局の所、脱税での逮捕しか出来なかった。このように脱税は犯人逮捕の最後の手段となっているのだ。

 田中容疑者は、何回となく任意の事情聴取を↖︎受けながら「知らぬ・存ぜぬ」で逃げ通す作戦を貫いた。メディアから田中逮捕は難しいとする論調の記事が出始めると「俺は逮捕されないから大丈夫だ」と気を良くしていたと日大関係者は言う。

日大幹部からの情報漏洩が続いた

 しかし、一方で強気の態度は幹部に睨みを利かせる為の態度で「夫婦共々眠れぬ夜を過ごしていた」と日大病院の医師は言う。田中容疑者は任意での事情聴取について「真綿で首を締められている感じだ」と取り調べの状況を関係者に吐露している。硬軟織り交ぜた東京地検特捜部の事情聴取に、徐々に精神的に追い詰められて行ったに違いない。そんな中で優子夫人が自宅のちゃんこ屋の階段で転び、駿河台の日本大学病院に救急搬送されたと言う一報が届いた。「自宅の階段で転ぶ程精神的に追い込まれていた」と日大関係者が話す一方で、「これは仮病で病院に逃げ込んだ」と言う話も出回ったが、その後、脳溢血で倒れたとの情報が入った。「今現在も集中治療室で治療が続けられ、会話が出来る状況ではない」と言う。

 日大病院関係者は「理事長夫人の主治医は高森忠利先生(仮名)でした。呼ばれるとすっ飛んで阿佐ヶ谷迄往診していました」と話す。日大医学部のスタッフは「高森先生は医学部長に就任した時に、板橋病院内にある古い医学部長室を内装業者に祝儀祝いだと言って、一新させていました。そんな話しが飛び交う内に、リトル田中と言われていた」「いつも阿佐ヶ谷に出入りして優子夫人のご機嫌を取っていたのが印象的でした。最後は田中のポチと呼ばれていた」と言った話も又、元日大医学部教授は「彼が医学部長選挙に立候補した時の事を良く覚えています。マニュフェストも素晴らしく、アピール力も見栄えも立派で、良い医学部長が誕生したと思っていたら、田中理事長に擦り寄ってしまったな。リトル田中の感を強くしたのは、2018年12月、医学部が不適切な入試を行っているとの指摘を受けて開かれた記者会見の場で、記者の質問に逆ギレしていた。もう昔の高森君ではなかった」と残念がる。

 そんな中でXデイが来た。駿河台の日本大学病院特別室に来た複数の検事によって、身柄を拘束され逮捕された。その瞬間はテレビのシーンさながらに検事から「逮捕状」を読み上げられ、理事長から容疑者となった。

 今回の田中逮捕の立役者は井ノ口被告と藪本被告と大阪国税局、そして警視庁捜査二課だ。それぞれの資料が東京地検特捜部の逮捕に繋がる。井ノ口被告と藪本被告は2度の逮捕・起訴後に保釈をされているが、この保釈の条件は一種の司法取引だと言われている。藪本被告は何回か現金を阿佐ヶ谷のちゃんこ屋(自宅)に届けていると陳述し、陳述通りに、田中容疑者宅から藪本被告が渡したと見られる大阪の金融機関の帯封が付いたままの現金が見つかっている。屋根裏の現金を見付けたのは国税のマルサだ。大阪国税局は19年に医療法人錦秀会へ8カ月の税務調査を行い、資金の流れを把握した。警視庁捜査二課は20年年初には日大板橋病院前への調剤薬局出店に関係した詐欺事件で都内の男性を逮捕。この男は田中容疑者の側近の資料を持ち、その資料を下に2億円を詐欺した容疑だ。これらの資料が揃っていた。

 東京地検特捜部は、背任容疑での田中逮捕に向け様々な角度から検討をしていたが、日大から被害届が出ない中で逮捕しても、後に否認に転じる可能性が高いと考え、脱税容疑で逮捕した。

 田中逮捕を受けて、末松信介文科大臣は記者会見で補助金交付に関して「今回の重大性を踏まえ、厳正に判断する事が重要だ」とコメントした。田中理事長時代、文科省の日大への対応は非常に甘かった。学校法人に対する文科省の厳し過ぎる指導が時には問題視される中、日大と加計学園だけには驚く程に甘過ぎた。政治家の中で文科省へ日大を特別扱いするように依頼した人物がいるのか? この捜査も始まっている。

「解任」は文科省からの強い指示?

田中逮捕を受けても変われない日大に文科省が動いた。加藤直人学長を呼び付け、「田中を辞任させるとは何だ! 解任だ!」と一括した。「次年度の補助金の停止を検討する」と圧力を掛けた。90億円を超える補助金無しでは日大の運営は出来ない。田中容疑者の引きで学長になった加藤学長は、12月3日の理事会で田中容疑者の理事解任を決議し、永遠の決別を宣言し、被害届を提出した。

 文科省のある幹部は「今後、日大の再建が可能なのかを厳しく見守る事になる。いつまでも加藤学長が理事長を兼務する事は出来ない。そんな中で、瀨在待望論が日大の再生を考える関係者の間で沸き起こっている事は十分に承知している。その相談に文科省に来られたらお話はするが、今の段階ではコメント出来ない」と話す。日大関係者は「この瀨在待望論は当然だろう。瀨在幸安氏は、田中理事長が最大に力を持っていた時から警鐘を鳴らし続けていた。元総長であり著名な心臓外科医でもある。日大の再生には名門医学部がリードする必要がある。体調にも問題が無いから瀨在神輿を担ぐ」と熱く語る。

 日大校友会の幹部に取材をした所、「我々は田中理事長をずっと応援して来たが、井ノ口容疑者と姉だけが儲かる仕組みが出来てしまい、最近ではやり過ぎだと多くの交友会仲間も思っていた」と語る。そして、瀨在待望論は校友会にも有ると話す。その理由を聞くと「皆んな日大を愛しているんです」。

 最後に前安倍総理と藪本被告の2人の関係だが親の時代に遡る。「安倍晋太郎元外相と医療法人錦秀会創業者の藪本秀雄は新興宗教の新生佛教教団で一緒だった。その縁で子供同士も繋がった。藪本被告は宗教の繋がりは強いといつも言っていた。又、安倍さんにとって安心なのは、藪本は元総理へ頼み事を一切しない事だ。この頃の藪本理事長はいつもユニクロの洋服を着ていた」と錦秀会幹部は言う。頼み事の現場は人に見せる事は無い。2人は頼み事を繰り返す関係だったに違いない。

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