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第98回 新専門医制度

第98回 新専門医制度
第98回 新専門医制度 南淵 明宏(昭和大教授)

 専門家のautonomyを発揮すべく、専門医の制度がごく一部の集団?の思惑で医療現場に押し付けられるのであれば、どこがautonomyなのか。ブラックジョークに他ならない。笑ってやろう。

 そもそも患者を毎日診察していない輩は専門医でも何でもない。専門医とは対極に位置する「誰かさん」だ。そんな「誰かさん」が専門家面して現場に指図する、としたら笑いぐさだ。そんな制度の効力など、みじんも期待できない。

 私が医者になった30年前から専門医の制度は施行(試行?思考?)されているが、金をふんだくられて習得しても屁の突っ張りにもならない、くだらないばかばかしい専門医制度が横行し、自己増殖さえしている。

 「足の裏の米粒」とも言われたが、「足の裏のニュートリノ」1個程度の存在感のなさだ。

 一番の問題は専門医などいなくても診療できる。それに専門医更新の手続きでは不正が横行していると聞く。

 あるとき新聞に略歴を載せることになったのだが、「専門医と医学博士は載せない方がいいでしょう」と言われたこともある。専門医資格はむしろ患者からすればネガティブな資格、という大新聞の見識である。

 専門医制度は全部が全部とはいわないが、ねたみ、自己顕示、金集め、権益独占、異端者排除、技能偽装が根本の発想にあるとしか思えない制度に見える。

 「手術をまともにできない名前だけ外科医の人が、世間で生きていくには専門医の資格ぐらいないと困るじゃないですか」。私にそう語った学会理事がいた。専門医資格は無能の証しか。

 最近、そんな不名誉資格の専門医制度を刷新してご立派な新しい専門医制度というのをつくろうという機運らしい。

 だが、分かりにくい。一部からは、「大学医局の王政復古」「医療現場のブラック化の合法的推進」「役所の権限を強化して絶対服従官製医療の徹底」「御用学者様サロンのお戯れ」「民間病院の撲滅」「公立病院の統廃合」──こういった世相や陰謀が背景にあるのではないか、など被害妄想的曲解なのだろうが、とにかく実効性は疑わしい。

 医療現場には宇宙空間をさまよう超微細な「原始重力波」程度の影響しかないだろう。

 専門バカでわがままを通して生きてきた私にとっては、こんな話はどうでもいい。

 しかし、これからの若い世代は、人ごとではない。

 まあまあの生活で可もなく不可もなくセコく権力にぶら下がって人生をこじんまり終わろうと計画している若者には「ご立派そうな」制度はありがたい。自分が下手を打って患者が死んでも「ご立派そうな」専門医の資格を楯に、なんだかんだと言い訳できそうだ。権力や体制に隷属することが専門の「御用専門医」は「負け組医師」の「護身資格」なのである。

 それにしても、実践の専門医制度をつくるとして、誰が専門医を教育し、指導し、認定できるのだろうか。まともな専門医の数は非常に少ない。

 社会が認める専門医は自然発生して厳然と存在する。名ばかりの権威に引き立て役になってもらって、ある意味社会にしっかりと自分の足で立ち続けている。

 無駄な時間とお金の浪費はやめるべきだ。

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