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273 三豊総合病院(香川県観音寺市)

273 三豊総合病院(香川県観音寺市)

自由な「落書き」が温もりを醸成する
273 三豊総合病院(香川県観音寺市)

瀬戸内海に面し、豊かな自然と絶景に恵まれ、歴史有る寺社が点在する事でも知られる四国北部の西讃地域。そこに位置する三豊総合病院は、1951年の開設以来、香川県の三豊市及び観音寺市が共同で設立した企業団運営病院として70年以上、地域の医療を支えてきた。現在は合計31の診療科を有し、多くの救急患者も受け入れている。同院周辺は重症患者に対応出来る総合病院が少なく、同県内だけでなく、愛媛県東予地域や徳島県西部等、県外からも患者が訪れる。

 2025年4月から勤務する若手内科医の宮井秀彬医師は、以前から「病院が治療の為だけの場所となり、医療との心の距離が遠ざかっている」様に感じていたという。実際、患者からも「病院に来ると緊張してしまう」という声が有った。そこで「病院は地域の皆で作るものだ」と考えた宮井医師の発案により、同年12月、ホスピタルアートの取り組みが始まった。

 先ず宮井医師が目を付けたのは、00年に増築された南棟1階の待ち合いホール。中庭に隣接しており、採光の為、高さ4m、幅10mを超えるガラス窓が設けられている。検査結果待ち等で長時間過ごす患者が寛げる様にと、ソファやテレビを設置し、窓を大きくする事で開放感を出した。

 次に宮井医師が考えたのが、「窓に自由に絵を描いて貰う事は出来ないか」。患者や家族、医療スタッフ、地域住民が「落書き」をする様に思い思いに描いた絵を、1つのアートとして訪れる人達が楽しむ。それによって心の距離を近付ける事が出来るのではないかと見込んだ。そこで、クラウドファンディングによるアートイベントの開催を提案し、病院の了解も得て、プロジェクトを開始した。

 「MITOSOみんなの窓プロジェクト」と題し、窓に絵を描く事が出来、簡単に落とせる水溶性クレヨン「カラーコンテ」を購入して、自由に絵を描いて貰い、1カ月毎にテーマを設定。期間最終日に写真に撮って、ポストカードやカレンダー等を制作する事にした。

 目標金額は60万円だったが、募集開始翌日に目標を達成し、1週間で90万円を突破。今年1月末、約165万円を集めて、クラウドファンディングが無事完了した。集まった資金を基に、今後地域のアーティストとの共同イベントやワークショップ等も開催する予定となっている。

 「みんなの窓」は1月から1年間実施。初回時にはさっそく多くの人がクレヨンを手にした。ハートや花を描く人が多いが、意外だったのはメッセージを描く人が多かった事だった。「おじいちゃん元気になって」「家族みんなで仲良くいられます様に」「病院の皆さん、いつも有り難うございます」といった言葉に、多くの人の心が癒やされている。

 宮井医師は「ホスピタルアートが目指しているのは、特別な作品を病院に飾る事ではない」と話す。病院に流れる時間や空気を、ほんの少しだけ柔らかくする事だという。

 窓に描かれた自由な「落書き」が、無機質だった病院を少しずつ変えている。


273_三豊総合病院(香川県観音寺市)

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