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第148回 浜六郎の臨床副作用ノート ワクチンと健康者接種バイアス

第148回 浜六郎の臨床副作用ノート ワクチンと健康者接種バイアス

ワクチン接種者は非接種者よりも健康である。このために、ワクチンによる利益にも、また害についても、調査結果にワクチンに有利に働く歪み(偏り、バイアス)が生じる。

HPVワクチンによる健康者接種バイアス(または病者除外バイアス)の影響については、本シリーズ第77回(2016.07)、第143回(2022.02)で論じた。

英国では、COVID-19ワクチン接種状況別に、月別の年齢調整死亡率(COVID-19死亡率、非COVID-19死亡率、総死亡率)のデータが公表されている。このデータを詳細に分析し、COVID-19ワクチンの健康者接種バイアスの現象を、薬のチェック速報版No203(2022.4.27発行)1)で報告した。その概略を紹介する。

ワクチンで減らないはずの死亡がなぜ減少

英国では2020年以降、COVID-19の流行により、死亡率が大きく変動した。そこで、まず、2010〜19年の年齢調整死亡率(以下「死亡率」はすべて年齢調整済み)の推移から、21年における死亡率を推定し、「予測死亡率」とした。そして、21年の各月毎の非COVID-19死亡率(つまり、ワクチンでは減らないはずの死亡率)が、この予測死亡率の何倍かを、ワクチン2回接種者、1回接種者、非接種者で比較した。英国では21年1月から接種を開始している。

2回接種者は接種開始初期(21年1月)には0.2倍(5分の1)であった。2月〜4月までは0.55〜0.64倍で推移したが5月〜9月は1.0倍前後で推移し、ブースタ接種が普及し始めた10月以降は最高2.8倍(12月)まで増加した。

ワクチン非接種者は1.8倍、1回接種者は2.6倍

一方、ワクチン非接種者の死亡率は、COVID-19死亡者が英国でピークに達した21年2月には、3.3倍となりその後、徐々に低下してきたが、COVID-19死亡がほとんどなかった5月にも1.8倍、6月は1.6倍となり、21年1年間を通じて平均1.8倍であった。

ワクチンを1回接種して死亡した人は、2回目接種前に死亡するか、2回目接種時期が来ても接種できずに死亡したことを意味している。1月は0.83倍、2月は0.86倍であったが、3月以降はぐんぐんと倍率が大きくなり、6月には4.0倍(接種21日以降の死亡率は6.8倍)とピークに達し、1年平均で2.6倍であった。

2回接種できた人は著しく健康であった

ワクチンで減らないはずの非COVID-19死亡率が2回接種者で著しく低かった理由は、2回接種した人(できた人)は、日頃から健康で、かつ、1回接種後にトラブルなく2回目が接種できた、まさしく「健康な人」であったからと考えられる。

非接種者や1回接種者は健康に問題あり

COVID-19ワクチンは、他のワクチンと比べると、基礎疾患を抱えた人をも対象にして接種が進められているようにも見える。しかし、当日発熱がある人や、死期が迫っている人にはさすがに接種はしない。そのため、非接種者に比べると、接種者(特に2回接種者)は、健康といえる。

接種21日以降に、1回接種者の死亡率の倍率が大きいのは、2回目が接種できなくなるような重い害反応が起こり死亡したために、非COVID-19死亡率が高くなったためと考えられる。

ブースタ接種が始まってから、2回目接種後21日以降の死亡率が4倍にまで上昇した現象も、同様に説明が可能である。

結論:COVID-19ワクチン接種でも健康者接種バイアスが明らかである。観察研究では常に考慮を要す。

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