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「総選挙の御礼」予算で「子どもの貧困対策」は後退

「総選挙の御礼」予算で「子どもの貧困対策」は後退
「母子家庭」の生活扶助支給額は約2割も削減

誰に「忖度」したのか知らないが、これも官僚特有の手口なのか。厚生労働省は2017年12月8日の社会保障審議会生活保護基準部会で、生活保護のうち食費や光熱費等の日常の生活費に充てる生活扶助の受給額を、2018年度から大幅に引き下げる方針を示した。

 これだと、最大で13・7%の削減になる世帯(夫婦子2人世帯)も出ることになり、13年から実施され↘た平均6・5%、最大10%をより上回る生活扶助の削減となる。だが、12月18日に発表された厚労省の生活保護削減計画だと、生活扶助の受給額は最大で5%の削減になっている。

 当初の13・7%が5%に落ち着いたのは、「世論の反発」もあったのかもしれないが、官僚にとっては織り込み済みだったに違いない。最初から5%に設定されており、あたかも批判を考慮して譲歩したかのようなポーズを取りたかったのではないかと思われても仕方ないだろう。だが、問題は削減そのものにある。

 政府が、一般会計総額が過去最大大となる97兆7128億円の18年度予算案を閣議決定した12月22日、厚労省は18年10月から3年かけて生活扶助を約160億円削減することを明らかにした。

 減額の幅は5%が上限とされるが、生活扶助を受給している67%の世帯で支給額が減るという。

子どもの貧困率は先進国でも高水準

 特に、子どもがいる世帯では43%が減額になる。母子加算は月平均2

万1000円から1万7000円に減額され、トータルで2割もの削減が強行。影響を受ける子どもの数は、13万世帯、19万人に上る見込みだ。

 これでは、どう考えても13年6月に成立した「子どもの貧困対策に↖関する法律」の精神と矛盾する。同法の冒頭では、「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに」云々と謳われている。しかし、その一方で今回の決定は、さらに母子家庭を生活苦に追いやって、子どもに一段と貧困の苦しみを押し付ける結果となるのは疑いない。

 しかも、首相の安倍晋三は12月14日、都内で開催された世界の保健医療水準の底上げを図るためという趣旨の「UHCフォーラム2017」(注=厚労省、外務省、世界保健機関、世界銀行、国連児童基金などの共催。UHCとはユニバーサル・ヘルス・カバレッジの略)なる会議に出席し、「UHC」の推進が「誰一人取り残さない社会の実現を図る上で不可欠な要素」などと強調。「日本は今後、総額29億㌦規模のUHC支援を行うことをここにお約束いたします」などと公言した。

 何やら大旦那気取りで約3300億円も気前よく外にばらまく余裕があるのなら、少しは自国の社会で「取り残さ」れようとしている子どもたちの境遇を思いやってもよさそうなものだ。

 当の「国連児童基金」(ユニセフ)のアンソニー・レーク事務局長は、12月13日に都内でNHKの取材に応じた際、日本の子どもの貧困率が約16%に達しており、先進国でも「深刻な高い水準にある」と指摘。「豊かな社会において子どもが飢えや格差に苦しむことがあってはならない」と懸念を示している。だが、安倍がやろうとしているのは、これとは真逆の方向なのだ。

 名古屋市立大学の櫻井啓太講師(社会保障論)が、厚労省の社会保障審議会生活保護基準部会の17年度資料を元に作成したデータによると、中学生と小学生の子ども2人と、40代の母親の母子世帯の12年度の平均生活扶助基準は、16万70円だった。だが、翌年から15年にかけて実施された基準見直しで7・4%減の14万8255円まで落ち、今回の削減策で18年にはさらに14万925円にまで下がる。この額だと、まだ消費税率が3%だった1990年の13万8915円という水準とさほど変わらなくなる。

 要するに安倍がやろうとしているのは、母子家庭の生活保護世帯に、生活費を4半世紀前の水準に戻せと強要しているのに等しい。これでは、何のための「子どもの貧困対策」なのか。「子育て家庭への支援強化や親から子への『貧困の連鎖』を断ち切るという政権の方針に矛盾するという批判が出そうだ」(『東京新聞』昨年12月23日朝刊)との報道も見受けられるものの、以前に猖獗を極めた「生活保護バッシング」の影響からか、社会の関心は明らかに低調のように思える。

母親の平均就労収入は200万円

 無論、「子どもの貧困対策」が即「母子家庭の生活保護世帯対策」ではない。だが、厚労省が15年に公表した「国民生活基礎調査」によると、ひとり親世帯の相対的貧困率は50・8%に達し、先進国では異様に高い水準だ。おそらく現在、この世帯は日本の社会で最も生活苦に直撃されている階層を代表しており、当然「子どもの貧困対策」の最重点対象となってもしかるべきだろう。

 やはり厚労省が16年に発表した「全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、母子世帯の平均年収は、母子のみで243万円、母親の平均就労収入は200万円にすぎない。うち、39・7%が貯金額で「50万円未満」というが、それでも生活保護を受けざるを得ない母子家庭に対してさらに生活扶助の支給額を下げ、もっと家計の削減を強いなければならない根拠はどこにあるのか。

 その一方で、全く緩みっぱなしの放漫財政は続き、18年度予算案では「総選挙の御礼」とばかりに、診療報酬の改定では「本体部分」が588億円増額された。健康保険組合連合会のマイナス改定要求を無視したこの決定は、無論、自民党に「カネと票」をくれている日本医師会の顔を立てたものだろう。やはり、地方の土建屋の票集めに欠かせない土地改良予算も、前年度当初予算比で328億円もの増となっている。

 加えて、媚びへつらいの限りを尽くしている米国に対しても、相手の言い値で不当に高額の兵器を買わせられる政府間取引の有償軍事援助(FMS)による米国製武器購入は、第2次安倍政権の13〜17年度で計約1兆6244億円に達した。この額は、それ以前の5年間の合計の約4・5倍に相当する。自分より強い者、自分の選挙に協力する者には財政が危機的水準でも惜しげもなく予算をバラまき、社会的弱者にはとことん冷酷な仕打ちをする。これが「弱い者いじめ」でなくて、何なのか。

 生活保護基準の引き下げとは、最低賃金や住民税の非課税基準、さらに経済的に苦しい家庭への就学援助などの様々な施策に連動している。このままだと止めどもなく格差社会化に拍車をかけ、生活不安から消費不況をさらに悪化させるだろう。もはや安倍は「改憲」する前から、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という「生存権」を規定した憲法第25条など、頭の片隅にもないらしい。

(敬称略)

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