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病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

第18回未来の会

第104回 医療の常識を見直しセルフメディケーション社会へ

第104回 医療の常識を見直しセルフメディケーション社会へ
白岡亮平(しらおか・りょうへい)
1979年新潟県生まれ。2004年慶應義塾大学医学部卒業。06年同大学医学部小児科学教室入局。12年キャップスこどもクリニック西葛西開院。医療法人社団ナイズ設立。13年同クリニック北葛西、14年同クリニック代官山T−SITE、同クリニック亀有開院。メディカルフィットネスラボラトリー株式会社設立。15年フィットネスジムDATA FITNESS開設。16年同クリニック紀尾井町開院。日本小児科学会認定小児科専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、産業医、NASM−PES(米国スポーツトレーナー)。

勤務医時代、今の医療の問題点を痛感したという白岡亮平氏。解決策を求めて32歳で開業し、現在内科・小児科などのクリニックを都内5カ所に展開、他分野との連携にも積極的だ。薬剤中心の保険診療から、ICTを駆使し自分自身で健康を作り出せる「セルフメディケーション社会」へのパラダイムシフトを目指す。

医師になって9年目で開業のきっかけは?

白岡 私が医学部を卒業した当時は初期臨床研修の初年度で、何もない混沌の中でキャリアを作っていくしかなく、それが今の私を形成する良い経験になりました。勤務医時代に様々な問題点にぶつかり、本当に患者さんのためになる医療とは何かを考え抜いた結果、病気になってから保険制度の中で薬剤中心の治療を施す従来の医療ではなく、行動を変えることで自ら健康になれる予防医療、セルフメディケーションの社会を作りたいと思うに至りました。今までの健康経済で当たり前だったものを根本から考え直そう、そのためには医療に携わる人々の連携強化、組織マネジメントが必要だと考え、周囲から無茶だと言われながら2012年に開業、医療法人社団ナイズを立ち上げました。私は医師ですが、最終的には医師が必要とされない社会になればいいと思って活動しています。

365日年中無休、多拠点運営を標榜

当時、年中無休のクリニックは画期的でした。

白岡 共働きのご家族など多彩なライフスタイルがある現代、やはり365日のサポートが必要です。受診だけでなく、来てもらってホームケアやセルフメディケーションの教育をすることが大事ですから。夜も日曜日も開いていて必要な時に必要な情報を提供出来れば、医療がより患者さんに近付き、患者さんの心が開くと思います。かかりつけ医で自分の健康状態を管理してもらい、必要な時だけ大病院に行くといった医療の住み分けも重要です。患者さんには現状、医師が同じでも大病院の方が良いという意識があるので、もっとプライマリケア・クリニックの信頼性を向上させたい。これも大きな目標の一つですね。

多拠点運営の意義・目的は?

白岡 小児科では、クリニックを転々とし、前に受けた医療が分からないまま次の医療を受ける保護者の方が多いです。そのため既に受けた診察・検査の情報が全くない中、重複処方などで無駄な医療費が使われがち。医療従事者の時間も取られています。クリニック間で情報統合が出来れば全体最適としての医療を実現出来るし、患者さんの満足度も上がるはずです。多拠点運営で電子カルテを統合し、まずはPHR(Personal Health Records、個人が 生涯にわたり自分自身に関する医療・健康情報を収集・保存し活用出来る仕組み)のある社会を私達の現場で実現して、説得力を持って世の中に発信したい。また、今の医療は属人化していて、一人の医師がいなくなるとその担当業務に関わる全てが分からなくなることも起こり得ます。多拠点で365日やるためには属人化をやめ、システムとして医療を成立させる必要があります。継続的に地域に必要とされる、医師ではなくて医療機関を作りたいと思っていました。さらに、複数のクリニックが連なることで医療資源を有効に活用出来ます。

これからの医療を巡る社会情勢をどう見ますか。

白岡 医療スタッフが減少して採用が非常に難しくなるのに、高齢化は進み患者のニーズは増えていく現状です。医師をどのように採用しマネジメントするかが、重要な課題になると考えます。例えば、政府が6月に打ち出した「2017年の未来投資戦略」などの方針に、常日頃からアンテナを張って、将来的に継続可能な医療モデル、具体的にはICTの活用、オペレーションを含むシステム化、データ活用などにより脱属人化した診療所運営が、今後患者と社会に必要とされるはずです。今まで診療所の医師は目の前にいる患者さんに必要とされることを重視してきましたが、こういった全体最適を見た時に、国から必要とされる医療機関かどうかも含めて考えるべきです。顧客とはサービスを受ける者、もしくはそのサービスに対価を払う者という定義があります。すると医療の顧客は患者さんだけでなく、それを払っている国や隣人、全員が顧客と言えます。社会全体が医療のお客さんなのです。

ICT化で社会に対応した医療を

医療にも企業経営のノウハウを採用していますね。

白岡 人が定着しないと良い医療は出来ないので、組織マネジメントは非常に大切です。一般企業では常識ですが、医療機関はあまりやっていません。私達は、教育によって最終的に自走する人を育てる仕組みづくりを目標としています。業務量が増加すると、労働環境が悪化して、医療の質が悪化⇒患者が離れて仕事のやりがいがなくなり、離職率が増加⇒結果的に業務量が増加する。一旦この負のスパイラルが起きると、立て直すのが非常に困難ですから、常に正のスパイラルが起きるような医療経営をしなければいけません。例えば、人材の採用や広告に使うお金を患者さんに極力回すために、私達はコスト1000万円くらいの紹介会社ではなく、少し手間はかかりますが月数万円で出来る「ウォンテッドリー」というソーシャルリクルーティングサービスを使っています。入職後は、クリニック全体のビジョン、ミッション、経営理念や行動規範を文字化したビジョンブックを活用し、現場で読み合わせたり、判断に迷う時の指標にしたりして、組織が目指す方向性、スタッフ共通の目標を浸透させています。また医療においてはコミュニケーションが重要なので、心得5か条(①受け入れる②否定しない③事実で判断し心で話す④怒らない、イラつかない⑤聞く8割話す2割)を作ったり、ITツールを使った毎日の朝礼、昼礼、終礼など各種ミーティングをオンラインで行ったりしています。

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