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未来の会

第123回 「社会保障費が2040年に1・6倍」の思惑

第123回 「社会保障費が2040年に1・6倍」の思惑

 2040年度は190兆円に──。政府は22年後の社会保障給付費(18年度は121・3兆円の見込み)について、65歳以上の高齢者数が約4000万人とピークに達し、今の1・6倍へ膨らむとの推計を公表した。社会保障のカットと消費増税への道筋を付けようという政府の思惑がちらつく。しかし、試算に関わった関係者でさえ「どこまで踏み込んだ議論をできるのか、見通せない」と漏らしている。

 「2040年は(団塊の世代が全員75歳以上となる)2025年の次の山だから」。厚労省幹部は、40年度の給付費を推計した理由についてこう語る。政府は12年の社会保障・税の一体改革時に25年度の給付費推計(約150兆円)を示していたが、同省関係者は「当時から本命は40年度だった。30年近い先の試算が困難だったため、25年度分の推計を出しただけ。『団塊の世代』との理屈は後付け」とあけすけに語る。

 新たな40年度分の試算の内訳は▽年金73・2兆円(18年度56・7兆円)▽医療66・7兆〜68・5兆円(同39・2兆円)▽介護25・8兆円(同10・7兆円)▽子ども・子育て13・1兆円(同7・9兆円)▽その他9・4兆円(同6・7兆円)──。今年度との比較では、年金が1・3倍、医療が1・7倍なのに対し、介護は2・4倍と伸びが著しい。高齢化に加え、「在宅」の推進により医療から介護へのシフトが進むとみてのことだ。

 社会保障・税一体改革時の推計は、25年度にかかる費用を国民に示し、消費税率を10%へと引き上げることを意図したものだった。今回の推計も、主な狙いはそこにある。ただ、政府・与党の足並みがそろっているとは言い難い。

 「税率は示さない方がいい」。今回の試算を巡っては、官邸や与党からそんな声が聞こえていた。試算によると、40年度の税負担は79・5〜80・3兆円と18年度より30兆円超増える。これを消費税率に換算すると約10%となるが、従来の政府試算で示されていたこうした税率換算は、今回封印された。来年に迫った統一地方選、参院選をにらんだ動きとみられ、厚労省幹部は「国民を説得しようという意思がうかがえない」と自嘲している。

 そもそも今回の試算は早くから準備されていたのに、安倍晋三首相による、二度にわたる消費増税延期で宙ぶらりんとなっていた経緯がある。来年10月に迫った「消費税率10%」の実現すら、霞が関官僚は確信を持てず、「10%の次」はまだ見えてこない。だからといって、75歳以上の窓口負担(原則1割)を2割にアップする案や、費用対効果の低い薬や治療を公的保険の対象外にするといった財務省の社会保障圧縮案は、やはり来年の選挙にらみで実現性に乏しいのが現状だ。

 そうした中、6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)で、安倍政権は社会保障費の伸びについて、16〜18年度同様の抑制方針こそ記したものの、「伸びを5000億円程度に抑える」といったこれまでの数値目標の明示は見送った。財務・厚労両省間の調整がつかなかったためで、「経済成長と財政再建の両立」を謳う政権の方針はグラグラと揺れている。

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