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第99回 尻すぼみとなった「厚労省分割案」

第99回 尻すぼみとなった「厚労省分割案」

自民党若手議員による「2020年以降の経済財政構想小委員会」は、厚生労働省の分割案を公表した。同省の業務量は膨大過ぎる、というのが理由だ。狙い撃ちされた格好の厚労官僚たちは一時、身を固くしていた。しかし、同党の参院選公約ではぼんやりとした省庁全体の再編構想に薄められそうとあって、まずは胸をなで下ろしている。

「社会保障や雇用対策など広範な重要業務を担当している。1人の大臣、一つの役所だけで担当することは困難になりつつある」――。5月11日、同小委員会がまとめた提言は厚労省についてこう指摘し、▽社会保障(年金・医療・介護)▽子ども・子育て(少子化対策など)▽国民生活(雇用など)――への3分割案、▽社会保障、子ども子育て▽国民生活――とする2分割案など、三つの案を列挙した。 同小委の小泉進次郎事務局長は「厚労省の予算規模は国家予算の4割。このまま続けて、国民にとって必要な暮らしのための政策が実行できるかというと、もう難しいだろう」と述べ、厚労省分割案を参院選公約に盛り込むことに意欲を示した。

厚労省は橋本龍太郎元首相が手掛けた2001年の省庁再編で、旧厚生省と旧労働省が統合し、発足した。同時に総務省や国土交通省など、省庁統合による巨大官庁が生まれた。だが、「省庁減らし」に力点が置かれた結果、弊害も起きている。厚労省は15年の大臣答弁回数が2934回で最多。2位の外務省(1749回)の1・7倍に上った。衆参厚労委員会の審議時間も306時間と、2位の法務省・経済産業省(163時間)を圧倒。厚労相が国会に縛られて自在に動きにくい他、多過ぎる法案は積み残されるものが少なくない。 自民党の小委は当初、社会保障費の抑制を議論していた。しかし、厚労省が大きいゆえ法案が停滞し、給付削減につながる制度改革の実現にも時間がかかるという現状に、議論は省の分割案へと向かった。小委では「省庁再編時にこれほど社会保障費が膨らむとは想定していなかった。

予算の質も変わっている」といった賛成論が続出した。 これに対し、塩崎恭久厚労相は「(巨大官庁というのは)厚労省だけの問題なのか。この点も含めて考えなければいけない」と強く反発。同省幹部や族議員らも「障がい者の雇用など、福祉と労働行政が一緒になったシナジー(相乗作用)効果は出ている」などと指摘し、「根源の問題は極端な人手不足。まずは人員増が必要だ」と抵抗した。 「省庁全体の問題ではないのか」という塩崎氏の指摘は自民党内に浸透し、党内からは「巨大さが問題なのは、総務省も国土交通省も文部科学省も同じだ」といった声が出始めた。

厚労省分割案は省庁全体の行革構想に「拡散」、09年5月、当時の麻生太郎首相が「厚労省2分割」を表明しながら、2週間で尻すぼみとなった状況と似てきた。厚労省や族議員の抵抗により、自民党の参院選公約は厚労省の名指しを避け、「省庁の再々編の検討」という無難な内容に落ち着いた。厚労省幹部は「機能するかを十分吟味せず、『組織いじり』に終始した橋本行革の反省を踏まえ、中長期的に検討すべき話だ」と語る。

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