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体罰、パワハラ等々 厚労省の指針に非難続々

体罰、パワハラ等々 厚労省の指針に非難続々
体罰、パワハラ等々
厚労省の指針に非難続々

 世間の常識を変えそうな厚生労働省の指針が続々と誕生している。児童虐待防止の分野では、しつけのためであっても子どもの頬をたたいたり、長時間正座させたり、ご飯を与えなかったりする事を「体罰」と規定。これを法律で禁止するとする指針案をまとめた。ネット上では、「体で覚えさせないといけないことがある」「昭和の親父のしつけのほとんどが禁止されることになる」と体罰容認派からの反対意見が噴出した。とはいえ、体罰が虐待であるという流れは世界の潮流である。

 一方で、「潮流」に乗れなかったものもある。体罰と同様、ネット上で議論を呼んだ「パワハラ」対策を巡る指針である。厚労大臣の諮問機関「労働政策審議会」の分科会がこのほどまとめた「職場のパワハラ対策に関する指針」に女性の服装や外見に関する言及がなかった事に、反発の声が挙がったのだ。

 指針案のパブリックコメントには多くの批判が寄せられたが、分科会がそれらを取り上げなかった事がさらなる批判を呼んだ。

 厚労省担当記者は「売り場では化粧をしなければいけない、職場ではヒールのある靴を履かなければいけないなど、職場で主に女性従業員に対して服装や外見に関するルールを強制することはパワハラとして禁止するよう求める意見が出ていた」と解説する。2019年の流行語大賞にノミネートされた「#KuToo」(クートゥー)運動を提唱した石川優実さんらが厚労省に署名や要望書を手渡すなどして活動してきたが、叶わなかった格好だ。

 医療現場も例外ではなく、同記者は「病院で働く薬剤師から、ナースシューズを強要されたため外反母趾になったと相談を受けた事がある」と話す。また、「現状では、職場がそうしたルールを〝強要〟する事に合理性があるかどうかを労働争議や裁判で問うのが現実的」と言うが、接客業のマスク着用がありかなしかで議論が割れる昨今。意見の一致をみるのは難しそうである。

副業も適用になるのに……
フリーランスにも労災を!

 政府の働き方改革推進により、サラリーマンの兼業や副業の推進が世の流れとなる中、兼業、副業中の事故に労働災害(労災)を適用されやすいようにする仕組みが検討されている。複数の職場での労働時間が合算出来るようになる見込みで、これにより長時間労働に基づく労災が認められやすくなる可能性が高い。例えばA病院の医師がB病院でも勤務した場合、労災かどうか判断する際に両病院での勤務時間が合算されるだけでなく、補償給付額を決める元となる月収も両病院での給与の合算となる見込みだ。

 一方、同じ副業でも労災の適用が難しいのが企業等に雇用されない、いわゆるフリーランスの労働者だ。副業を認める企業が増えれば仕事を個人で請け負うフリーランスの労働者も増える事が見込まれるが、労災保険は企業に雇用されている人が対象で、フリーランスは仕事が原因で怪我や病気になっても原則として補償が受けられない。

 そんな現状に危機感を抱き厚労省に労災の対象拡大を要望したのが、俳優ら芸能関係者の団体「日本俳優連合」だ。理事長の西田敏行氏は「俳優は撮影や舞台で怪我をしても労災の適用が難しい。俳優や演奏家にも労災が適用されれば、安心して仕事に取り組める」と話す。

 厚労省もフリーランス労働者への労災の適用を検討しており、今後の動きが注目される。もっとも、労災認定されやすくなるからといって働き過ぎては元も子もないが……。

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