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癒やしと安らぎの環境賞2017

第109回 専任部署新設、大規模イベント開催等々 着々と進む医療系ベンチャーの支援体制

第109回 専任部署新設、大規模イベント開催等々 着々と進む医療系ベンチャーの支援体制
厚生労働省の「医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関する懇談会」(ベンチャー懇)が昨年7月にまとめた報告書の提言を受け、医療系ベンチャーの育成支援策が次々と打ち出されている。ベンチャー懇座長であり、後継組織の医療系ベンチャー振興推進会議でも引き続き座長を努める本荘修二氏に話を聞いた。

■医療系ベンチャーと研究機関や金融機関などをマッチングする「ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット2017」が10月に厚労省主催で初開催されました。

本荘 厚労省はこれまで医療系ベンチャーの振興をあまりやってきませんでした。しかし、海外では既に医療系ベンチャーの重要性が増し、日本でもその萌芽があります。そこで、当時の塩崎恭久厚労相の肝いりでベンチャー懇が作られ、医療系ベンチャー振興のための指針となる報告書を取りまとめました。サミットはベンチャー振興策の目玉事業の一つです。

■サミットでは創薬、医療機器、再生医療の3分野が柱になっていました。

本荘 産業面からいっても、また、国民のヘルスケアに対する関心からいっても、まずこの3分野が核となっていくでしょう。

■サミット開催で特に気を付けたことはありますか。

本荘 私は医療系ベンチャー振興推進会議の座長を務めていますが、経営コンサルタントとしてのアドバイスが中心で、切り盛りしているのは厚労省の方々です。ただ、様々なイベントを見ていますと、バズワード(もっともらしいけれど実際には定義や意味が曖昧な用語)に注目して開催するケースが多いので、サミットでは普通の人に分かりやすい言葉で伝えていくことを目指しました。私は多摩大学大学院でMBA(経営学修士)の授業を持ち、ベンチャー振興の専門家です。しかし、医療に関しては素人ですし、ヘルスケアも関わりはありますが、専門家ではありません。そのため、おもねるようなことを言ったり、遠慮したりすることもありません。そこが、厚労省が私に座長を依頼してきた理由でもあるのでしょう。厚労省の方々と話してみると、皆さん問題意識を持っていました。それが良い方向に動き出したという気がします。4月には厚労省医政局経済課内に「ベンチャー等支援戦略室」も設置され、専任で取り組む体制も出来ました。

トップレベル人材をベンチャーに呼び込む

■サミットで見えてきたことはありますか。

本荘 一つは、日本の「強み」というものがこれほど顕著な分野はないのではないかと思えたこと。IT分野にも素晴らしい企業や技術者はたくさんいますが、アメリカと比較すると、どうしても負けてしまいます。しかし、日本のヘルスケア分野は世界トップレベルのシーズ研究者がたくさんおり、ノーベル賞クラスの方々もいるのです。大学を見ても、ライフサイエンス分野の研究者はたくさんいますし、まさに宝の山。ところが医療系ベンチャーとなると、欧米の方が元気があります。サミットのシンポジウムである研究者が言っていましたが、「アメリカでは大企業以外から生まれた新薬が大半なのに、日本は大企業発ばかり。シーズは世界一なのに結果が出ていない。そこに大きな溝があるので、これからの医療系ベンチャーはその溝を埋める存在になってもらいたい」と。確かに、そう思います。

■大きな溝が出来ている理由は?

本荘 数え切れないほどあります。サイエンスからプロダクトに持っていく力が弱いとか、医療系ではビジネスのマネジメント的な発想がないとか……。特に医療系は学問の世界と産業界との繋がりが細かった。工業系だと実験や試作はメーカーに頼んでやってもらったり、就職先としても関係していたりするから、強いパイプがあります。でも、医学部は就職先として企業などを考えなくても良かったので、どうしても繋がりは細くなります。それと、ベンチャーキャピタル(投資ファンド)による投資額が、アメリカでは年間3兆円なのに対し、日本では2000億円。桁が違うのです。サミットをやったからといって、1〜2年でアメリカに追い付けるわけではありません。ただ、砂漠でも水をやり続けていると緑が出てくるし、大樹が育っていくと思います。

■砂漠にまく「水」としては、他にどのようなものが考えられますか

本荘 人材はいるのに、医療系ベンチャーと繋がっていないのが現状ですから、そこを繋げていく作業を続けないといけません。また、事業化に持っていくには、チームを組まないといけません。そのためには、大企業の経験者も必要でしょうし、ビジネスが分かる人材も必要です。厚労省もサミットの次はサポート事業として人材にフォーカスしていくでしょう。そして、何よりも「砂漠の水」となるのは、成功例を増やすこと。一つでも二つでもいい。そうすれば、人もお金も少しずつ付いてきます。

■サミットは来年度以降も続けるのですか。

本荘 厚労省の人達とは「継続は力」だと話しています。1回だけでは効果が薄いので、続けていきたいと思っています。

ヘルスケア分野は今後さらに需要が高まる

■日本や世界では、ヘルスケアの位置付けはどう変化していくでしょうか。

本荘 日本の国民一人一人のヘルスケアに対する意識は、今後高まりこそすれ、低くなることはないでしょう。海外を見ても、重要度は増していきます。日本を含む先進国では、長期的に様々な分野で需要が高まると思います。また、成長性の高い国々のポテンシャルは大きい。例えば、中国を中心にアジアからの訪日観光客が、日本のヘルスケアに対して関心を高めています。今は日本での医療機器は輸入超過ですが、日本の医療をシステムとして輸出したりすれば、グローバルな形で高まる需要にもっと応えられるでしょう。

■資金面でも今後、グローバルな動きが出てくるでしょうか。

本荘 成功例が出てくると、お金は後から付いてきます。現在、世界ではお金が余っているのです。日本に対しても、ヘルスケア分野に投資しようと考えている海外のベンチャー投資のチームが訪れています。

■医療系ベンチャーの経営者達を見ていると、年齢が若い上に、経歴もバラエティーに富んでいますね。

本荘 医療系ベンチャーというと、未来を作っていく人達というイメージです。メディカルドクターなのに経営にも詳しかったり、海外の動向もしっかりと視野に入れたりしています。人材が変わってきましたし、とても期待が持てます。昔と比べて「二番煎じ」ではなく、自ら世界を変えたいという革新的な意識を持つ人も出てきています。大リーグで戦いたいプロ野球選手が増えているのと一緒ですね。リスクはあるけれどチャレンジしようという人達です。それと、ヘルスケアは女性が活躍出来る分野でもあるのです。

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