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「韓国の後塵」を拝し続ける日本経済

「韓国の後塵」を拝し続ける日本経済

日本の名目GDP(自国通貨)が、初めて500兆円台に達したのは1992年で、505兆1278億円だった。それから約30年が経過した2021年には560兆590億円で、伸び率は約3・893%に留まっている。言うまでもなく、先進諸国でこれほど成長が停滞している国は他に存在しない。

 その衰退ぶりが一般の国民にどの程度認識されているか不明だが、韓国との比較でより明瞭に浮き彫りとなる。人口で日本の半分以下ながら、この隣国は30年の間に主要な経済指標でみると、次から次へと日本を追い越している。韓国に後塵を拝し続けている日本経済の現状は、何を示しているのだろうか。

様々な世界経済ランクで「日韓逆転」

 一国の豊かさを正確に示すものとして、各国の物価と為替相場の水準を反映させながら、国民の購買力を示す購買力平価指数(PPP)を基準とした1人当たりのGDPの数値が挙げられる。国際通貨基金(IMF)の21年4月版によると、韓国のそれは4万4620㌦で、世界で27位だ。

 一方、日本は4万2248㌦で30位と、韓国を下回る。既に18年に追い抜かれており、その差がより広がる可能性すらある。

 IMFが4月に発表した予測によると 20年から26年までの実質GDP上昇率は日本が8・9%だが、韓国はその2倍近い17・0%となる見通しだからだ。

 更に経済協力開発機構(OECD)の最新の数値だと、今年度の韓国の成長率の推定値は4%。4カ月前より0・2ポイント引き上げられたが、日本は逆に0・1ポイント引き下げられて2・5%だ。

 ちなみに、このPPPを基準とした1人当たりGDP数値では、世界ランキングでアジアからシンガポールが2位に付けている(1位はルクセンブルク)。続いて香港が9位、マカオが14位、台湾が16位だ。韓国はそれに次ぎ、日本はアジアで6番目に甘んじている。

 実質GDPを就業者数で割った労働生産性も同様だ。日本生産性本部が昨年12月に発表したデータによると、日本は19年に8万1183㌦だったが、韓国は8万2252㌦で、同年に初めて追い抜かれた。OECD加盟37カ国(集計時)の順位では、日本はそれまでの21位から転落して26位になり、24位の韓国より「格下」に。

 15年から19年までの4年間の労働生産性の上昇率でみると、日本はわずかプラス1・2%という停滞ぶり。韓国はプラス18%だから、もう勝負にならない。

 これで日本が、平均賃金でも韓国に差を付けられないはずがない。OECDのデータによると、韓国は既に19年の時点で4万2285㌦だ。

 一方の日本は3万8617㌦にすぎない。ランキングでは韓国の19位に対し、日本は24位。このままでは、製造業を中心に経済が力強さを示しているポーランドやチェコといった東欧勢にも抜かれかねないだろう。無論、G7(先進7カ国首脳会議)加盟国では最下位だ。

 日本の経団連にあたる韓国の「全国経済人連合会」は8月12日、この30年間の日本と韓国の経済競争力の変化を比較した報告書を発表した。そこで紹介されている項目をみると、上記の経済指標以外でも「日韓逆転」の現状が明確に読み取れる。

 まず、スイスのビジネススクール「国際経営開発研究所」(IMD)が昨年発表した20年度の「国家競争力ランキング」によると、韓国は世界で23位。日本は34位に留まっている。1995年に日本は4位であり、顕著な転落ぶりだ。ただ、韓国は同時期26位だったから、それほど急伸したとは言えないかもしれない。

 また、信用格付会社が発表するソブリン債の長期信用格付を列挙した国別信用格付で、スタンダード&プアーズのそれでは、韓国はAA(21年)。日本のA+よりも上位だった。90年には韓国がA+、日本がAAAであったから、評価が逆転した事になる。

 国際連合工業開発機関(UNIDO)が20年7月に発表した競争的工業実績指数(CIP)でみると、韓国は世界でドイツ、中国に続き3位に。日本は5位だった。90年には韓国が17位、日本が2位だったから、韓国の上昇ぶりが際立つ。

 追い抜いてはいないが、「全国経済人連合会」によると、差が縮小している分野として名目GDPがある。90年に2830億㌦だった韓国の名目GDPは、20年に1兆6310億㌦で、約5・8倍の拡大。日本の限りなくゼロ成長の1倍少々と大差を付けたが、対日比重ではそれぞれ8・9%から32・3%に変化した。

 同時期での世界ランキングでみると、韓国は17位から10位と躍進した。反対に日本は周知のように、2位から中国に抜かれて3位となった。

 なお、国民1人当たりの名目GDPでは、日本は世界24位で4万89㌦。韓国は29位で3万1638㌦だ(IMFの今年4月の発表数値)。両国の成長率の開きを考えると、韓国が今後、労働生産性と同様にここでも日本を抜きかねない。

 同連合会のキム国際協力室長が、「過去30年の韓国の経済成長の成果はまぶしいほどだ」と豪語するのもうなずけよう。

現実に素直に向き合い原因を知る

 無論、韓国とて日本と比較し、「基礎科学技術分野への投資と競争力では依然として差がある」(キム室長)事実は認めている。経済も財閥支配や高過ぎる貿易依存、長時間労働等々、問題が少なくない。それでも韓国とは対照的な「失われた30年」という語に象徴される沈滞は、日本の現状に再考を迫っているはずだ。

 基本的にこの間、日本は莫大な予算を公共投資に注ぎ込めば経済が浮揚するという考えを頑として変えていない。借金が増えこそすれ、経済成長にはさほど寄与しないという明白な事実が知られているにもかかわらずだ。

 加えて90年代の「小泉改革」で一気に格差・貧困社会化が加速した上に、例の「アベノミクス」で円安を誘導した事が大企業の安易な収益増をもたらしたため、他国と比べてデジタルを始めとした技術革新の遅れをもたらしてしまった。

 これ以外にも、なぜ日本が「失われた30年」に沈む一方で、韓国が「まぶしい成果」を誇れるようになったかの原因を知るにあたっては、韓国に次々と逆転され豊さを誇れなくなった現実に率直に向き合う必要がある。その事から、日本の進路を考える上でのヒントが生まれよう。

 だが、久しい前から書店には『笑えるほどたちが悪い韓国の話』だの『呆韓論』といったタイトルの本が多数並び、インターネットでも隣国を誹謗する、読むに耐えない記事が溢れている現状では、そうした姿勢を期待するのは困難のように思える。

 おそらく経済以前に、こうした精神的劣化現象と「失われた30年」とは無縁ではないはずだ。だとしたら、社会意識を含めた根本的な改革が伴わない限り、日本の将来は暗い。だがここに至っても、為政者達がその事に気付いている気配は乏しい。

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