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第2次補正で大幅に積み増された「医療関連予算」

第2次補正で大幅に積み増された「医療関連予算」

与党や日医の予算編成圧力による“賜物”か

新型コロナウイルス感染症の国内での感染拡大を受け、政府は4月7日に特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令に踏み切った。

 都道府県は飲食店等に休業要請を行った結果、一時的に経済が急速に冷え込んだ。政府は経済のV字回復を目指し、2020年度予算の第1次補正予算に続き、第2次補正予算を組んだ。特に、第2次補正は日本医師会(日医)の働き掛けもあっ↘て医療関連分野では大盤振る舞いとなった。

1次補正では医療政策は全体の3%

 第1次補正予算は4月30日に成立。国会提出から成立まで4日間のスピード審議となった。一般会計の総額は約25兆6900億円で、全国民に一律10万円を配る事業に約12兆8800億円を盛り込んだ他、売り上げが半減した中小企業に200万円、個人事業主に100万円を上限に給付する持続化給付金に2兆3176億円を計上した。

 これら以外にも都道府県が「休業協力金」に活用が可能な臨時地方交付金として1兆円、コロナ終息後の観光振興等を後押しする「Go Toキャンペーン」事業に1・7兆円、児童手当の受給世帯への子ども1人当たり1万円を給付する事等も盛り込んだ。

 しかし、こうした大盤振る舞いと異なり、第1次補正予算では医療政策となると少額だった。特別会計分を除くと7270億円。これは全体の約3%にすぎず、「医療政策に割く予算が少ない」(野党議員)との批判が上がった。

 中身をみても、小ぶりな印象は否めない。医療提供体制の整備への支援の中心となるのは、緊急包括支援交付金で1490億円を計上し、↖新型コロナ患者を受け入れるため空き病床を新たに確保した病院に必要な経費を穴埋めするのが主な内容だ。

 PCR検査が少ないとの批判に応えるため、その充実を図る「帰国者・接触者センター」への人材確保の助成や、医師会や医療機関が受託してPCR検査を実施する検査センターの設備費用も盛り込んだものの、予算額・内容面で見栄えがしなかった。

 しかし、緊急事態宣言の1カ月延長に伴い、5月に入ると第2次補正予算の編成圧力が与党や業界団体から高まった。日医もその1つだ。その結果、一般会計の歳出総額が約31兆9000億円で、経済対策の事業規模は117兆円に上る予算に仕上がった。

 事業規模ベースでみると、1次、2次を合わせると合計で230兆円を超える。これは自民党から出ていた「それぞれ100兆円を超える予算を」という要望に応えたものだ。

 施策の中心となるのは、休業要請により家賃を支払えない事業者が出たため、売り上げが急減した中小・零細事業者を対象に家賃の3分の2を補塡し、1社当たり最大で600万円を給付して支援する給付金制度だ。自民党や公明党の与党が中心となり、野党とも協力して内容を詰めた。

 また、休業手当が少な過ぎるとの声を受け、雇用調整助成金の日額上限を8330円から1万5000円に引き上げ、企業の休業手当支払いを支援する。勤務先から休業手当を受けられない中小企業の従業員を対象とし、月額33万円を上限に賃金の8割を支給する新たな制度も創設する。特に緊急事態宣言に伴う休業要請により、経済の落ち込みが激しく、そのしわ寄せが来ている労働者を支援する政策が目立つ。

 さらに、第1次補正からの積み増しもある。都道府県が休業要請に応じた事業者への「協力金」等に活用出来る臨時地方交付金は2兆円増額する。医療分野では緊急包括支援交付金も2兆2370億円積み増した。「日医の横倉義武会長の政治的な働き掛けによる尽力の賜物」(厚労省関係者)で、目標とする2兆円超えとなった。メニューとして新型コロナの専用病院や専用病棟がある医療機関への支援、医療従事者らへの慰労金、医用期間や薬局における感染拡大防止のための支援等も新たに盛り込んだ。

 中でも、医療・介護従事者への慰労金を計上したのも、与党や日医の働き掛けによるところが大きい。慰労金は、新型コロナウイルスの感染が拡大した春以降、業務として患者や要介護者と接した人に最大で20万円を支払う。しかも非課税扱いでだ。

 慰労金は、危険を犯して医療や介護に従事した人に対する感謝の意を込めた意味合いがあり、医療従事者は新型コロナ以外の病気や怪我も含め、患者と接する業務に一定以上従事すれば支給される。概算では医師や看護師ら310万人が給付対象だ。

医療・介護施設と従業員を金銭的支援

 3つの区分で用意されており、新型コロナ患者を実際に診療したり入院させた医療機関や、感染患者を外来で診察したり検査した検査所で働く79万人が20万円の給付対象となる。

 10万円が給付される対象の人もいる。新型コロナ患者を受け入れる体制があったが、実際に受け入れまでいかなかったり、陽性者が出なかったりした医療機関で働く35万人だ。 

 5万円が給付されるのは、コロナ患者を診療しない診療所や病院、訪問看護ステーション等で患者と接する業務の従事者で196万人に上るとされる。

 介護も、クラスター(患者集団)が発生してその対応に追われたり、濃厚接触者に対応したりした介護施設や事業所の人には20万円を支給する。それ以外の介護現場で利用者と接した職員には5万円を給付する。

 その他には、重症者を受け入れる集中治療室の診療報酬を通常の3倍にしたり、診療報酬の前払い、無利子融資の拡大等も図ったりして、医療機関への経営支援を狙う。

 第1次補正で少額と批判された厚労省関連の予算は、その批判も意識された結果、約3兆8500億円(特別会計分を除く)に大幅に増加した。このうち医療提供体制は約2兆9800億円に上る。

 日医は第2次補正で、新型コロナの感染拡大による受診抑制で病院経営に甚大な影響が出ている等として、7兆5000億円の予算確保を要望していた。それは、20年度末に各大学病院の損失が約5000億円に上ると推計されており、診療所でも減収が見込まれるからだ。

 横倉会長は「国民の生命と健康を守る事に最も注力したい。そのためには医療現場への支援が最優先課題だ」と訴えていた。総額は7兆5000億円には届かなかったものの、第1次補正予算から大幅な増額を勝ち取ったのは、横倉会長と安倍晋三首相との長年のパイプがあればこそ、との見方もある。

 ただ、横倉会長は「広く医療機関を救済するには、更なる診療報酬の引き上げも考慮する必要がある」と注文を付ける事も忘れなかった。第2次補正予算には自由に使える10兆円の予備費もあり、使途は5兆円分だけ決まり、医療提供分は2兆円。更なる医療支援の拡充を模索し、残りも医療への配分を狙う。

 

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