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未来の会

第121回 役員報酬ランク上位に名を連ねる武田トップら

第121回 役員報酬ランク上位に名を連ねる武田トップら

虚妄の巨城
武田薬品工業の品行

 これは、驚きと言うべきか。2020年3月期の有価証券報告書を提出した645社(6月24日現在)の企業のうち、役員報酬の上位5人中、武田薬品から3人も名を連ねている。

前期純利益7割減でも高額報酬

 東京商工リサーチが、役員報酬の情報を開示した個別企業をまとめた中で明らかになったもの。それによると、今期の報酬額として武田薬品社長のクリストフ・ウェバーが20億7300万円でトップ。前期より3億1500万円増となっている。さらに、3位の武田取締役のアンドリュー・プランプが10億4600万円で2億5100万円のアップ。4位には武田取締役のコンスタンティン・サルコウスが6億6400万円となっているが、前期比は不明だ。

 武田が6月24日の大阪市内での株主総会前に発表した資料に、「成長モメンタムをもたらすタケダ・エグゼクティブチーム」という人事欄がある。日本と米国、スイス、シンガポールに分かれて計18人(うち日本人は4人のみ)の役員が序列順に紹介されていて、ウェバーとサルコウスが日本の上位を占め、プランプはアメリカの最上位にある。日米の2人が、10億円以上の高額報酬にありついている形だ。

 なお、よく役員の出入りがあった以前と比べ、最近は人事が安定していた「タケダ・エグゼクティブチーム」だが、これまで名を連ねていた日本人の平手晴彦と、デンマーク人のカミラ・ソンダビーが消えている。理由は、明示されていないようだ。

 ちなみに、役員報酬の上位5人中の2位は、トヨタ副社長(退任)のディディエ・ルロワで、5位は東京エレクトロン社長の河合利樹。上位5人中、日本人が1人というのも「グローバリゼーション」を象徴しているのだろうが、それ以上に武田1社だけで3人も外国人の社長・取締役がベスト5入りしているのをどう受け止めるべきなのだろう。それほど武田とは、輝くような業績を誇る会社なのだろうか。

 コロナ危機の影響が及んだ今期決算で、トヨタが純利益で前期比の10・3%増となったのは別格だが、東京エレクトロンは25・4%減。だが武田は、67・3%もの減となっている。企業の利益獲得の効率性の指標である自己資本利益率(ROE)で見ると、今期はトヨタが10・54%で、東京エレクトロンは21・79%。ところが、武田はわずか0・89%という極端な低さだ。

 上位10人で見ると、製薬業界からはアステラス製薬社長の安川健司が7位、エーザイ執行役(退任)のサジ・プロシダが9位に付けている。アステラスの場合、今期決算で純利益が前期比で12・1%減だが、エーザイは92・1%増と健闘。ROEはアステラスが15・34%、エーザイが18・64%となっている。

 無論、役員報酬の基準については各社まちまちであり、一律に論じるのは困難だ。しかし、それを差し引いても、かつ他社との比較でも、どう見てもおよそ褒められはしない今期の決算結果しか出せない武田の社長や取締役がそろって前期よりも大盤振る舞いで遇せられ、しかも報酬額で645社中の上位5人のうち、3人も占めるというのは明らかに疑問なしとはなるまい。他方で武田の従業員の平均賃金は、0・3%減少しているのだ。

社外取締役は「仲良しクラブ」的存在

 本来であればこうした問題は、コーポレートガバナンスを強化する目的で外部の視点から企業経営のチェック機能を果たす社外取締役あたりの出番なのだろう。ところが寡聞にして、取締役会議長の坂根正弘(小松製作所顧問)以下11人いる社外取締役から耳の痛い苦言が呈せられたという話を知らない。

 それもそのはず。『朝日新聞』(電子版)19年2月14日付によると、同紙の調査では18年4月時点で東証1部上場企業約1980社の社外取締役約5000人(兼務も含む)の平均報酬額は、663万円。1000万円以上は全体の18%、2000万円以上は0・8%というが、武田の場合は何と全員がほぼ一律で4000万円という破格の待遇だ。

 こんなおいしい思いが出来るのを投げ捨てて、あえてウェバーら幹部の機嫌を損ねてもコーポレートガバナンスを優先するような言動に出る社外取締役がいたら、かえって不自然かもしれない。「外部の視点」などは、最初から望み薄だ。それにしても武田という会社は、よほど従業員以外への大盤振る舞いがお好きなようだ。

 一方、今年の武田の定時株主総会はコロナ危機のあおりで一般株主の参加が50人と制限され、さらにようやく旧シャイアーの世紀の合併劇も関心が薄れてきたのか、主要メディアの報道はここ数年と比べて格段の控え目な扱いとなった。だが端から見れば、こうした役員報酬の実態は一般株主でも見過ごせるはずがなかったろう。それでも公然と声を上げたのは、いつものように創業家筋の「武田薬品の将来を考える会」のみ。総会前には、文書で以下のような質問内容を公表していた。

 「ウェバーCEOは、シャイアー社買収後、経営の選択と集中と称してノンコア事業、優良資産などの多くを売却し、さらに国内を中心に多くの従業員を解雇することによって業績改善を図っておられます。しかし、経営指標ROEとTSRの状況は、株主提案に記載のように日系大手と比較して大きく劣っており、欧米マルチ医薬品とは比較にならない程低水準です。我々タケダの株主は、シャイアー買収案件の前後に、多大な損害を被っているのです。一方、CEO報酬を比較してみますと、武田薬品は18億円、代表的なグローバル製薬企業、メルク30億円、ファイザー20億円に次いで3位となっています。(中略)このような経営者の報酬がなぜ、増加し続けるのでしょうか」

 株主ならずとも、うなずける内容であるのは間違いない。だが結局、株主総会では会社側から満足出来るような回答は聞かれずじまい。これではやたらと「グローバル企業」を標榜する割には、前近代的な親方が仕切る日本のどこかの中小零細企業によくありそうな放漫ぶりではないのか。「武田薬品の将来を考える会」は、これがまかり通っているのは「グローバル化を急ぐ一方、タケダのガバナンス機能は世界水準に全く追い付いていない」ためだとし、総会では株主提案権を行使して社外取締役の候補者として元あおぞら証券顧問の伊藤武を推薦した。だが、これもあっさりと否決された。

 ウェバー以下にとって、社外取締役とは「仲良しクラブ」以外の存在であっては欲しくないのだろう。だが、経営者が苦言を呈するような人間を側に置くような器でないのであれば、その会社の先は危ういように思えるのだが。   (敬称略)

COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. 2020.3月期の役員報酬ランキング、興味深く拝読出来ました。
    長谷川、ウエーバーのCEO就任以来の武田薬品の業績推移を見れば、貴社ばかりでなく
    多くの識者は、このような役員報酬は全く不当である、と思うことでしょう。
    しかし、ここで小職が指摘したいのは、御社も屡々、引用している「武田の将来を考える会」の
    発言内容です。
    即ち、東洋経済、ダイヤモンドを始め、真面目なメディアが常に指摘している、武田薬品における
    長年にわたる、多額の“たこ配”を継続していることへの指摘が、同会の発言に全く見当たらないのは
    どのような理由によるものか、知りたいものです。
    また、これまで御社の記事にも、この点についての指摘が見当たらないのは、どのようなお考えに
    よるものか、お伺いしたいと思います。

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