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社会福祉法人大磯恒道会「破産」の真相③ 突然の訴状は弊社への「口封じ」目的の攻撃

社会福祉法人大磯恒道会「破産」の真相③ 突然の訴状は弊社への「口封じ」目的の攻撃
突然の訴状は弊社への「口封じ」目的の攻撃

 長い歴史を誇った社会福祉法人大磯恒道会(神奈川県大磯町。以後は大磯恒道会)が2018年12月6日に破産した。関係者の誰もが疑った大磯恒道会の破産は用意周到に仕組まれた破産劇であり、「大磯恒道会偽装破産事件」から多くの利益を得た、闇の中で蠢く人々を炙り出す。

 破産管財人や弁護士には「ノブレス・オブリージュ」という言葉がぴったりくる。高いポジションにある人には責任と義務が求められるというフランス生まれの言葉だ。その高いポジションにいるはずの大磯恒道会破産管財人の上野保弁護士、和田正弁護士、野口隆一弁護士3人から19年6月24日に弊社集中出版は突然の訴状を受けた。弊社は「口封じ」を目的とした攻撃と受け止めた。なぜ口封じが必要なのか。

弊社に届いた破産管財人からの訴状

 弊社に届いた訴状には「経営権委譲対価支払い請求事件」「訴訟物の対価 1億2千万円」とある。即ち、集中出版は1億2000万円を支払えというものだ。彼らの言い分は、集中出版はDD(デューデリジェンス・注参照)の後に契約を破棄していたが、その破棄は無効であり、残金を支払えという。前号で記載した「上野保破産管財人らがDDを知らなかった」と言うのはここを意味する。

 弊社は弊社財務担当責任者らが行ったDDの結果が判明した4時間後の17年11月9日15時に前理事長・中井弘隆(仮称)の携帯に一報を伝え、翌日の10時に来社した中井に直接、契約解消を伝えて中井は承諾している。弊社はメディアであり、面会した内容は全て議事録に記載している。大磯恒道会の議事録も膨大な量になっているが、全ての会話がメモされている。記者の取材メモは証拠能力を持つ。記者にとって自身を守ってくれる重要なものであり、記事内容で裁判が起こされたケースでは記事の裏付けの証拠にもなる。

 彼らは破産管財人の仕事を実に甘く見ていた。破産管財人の提訴には裁判所が判決時に下駄を履かせると言われる。即ち、裁判所も破産管財人には忖度し有利な判決を出す傾向にあるという話だが、これは債権者保護の観点からに他ならない。

 破産管財人は債権者のためにある。この前提があるからであり、決して破産管財人の言い分を過大に評価する事ではない。

 18年12月6日に大磯恒道会は準破産申請をした。そして、第1回目の債権者会議が19年4月15日に東京家庭・簡易裁判所(家簡地裁)で開始された。弊社は3000万円の債権者として出席したが、会場には大磯恒道会が長年、お世話になっていた業者の方々が債権者として多数出席していた。本来であれば債権者を生む事も無かったと、改めてこの偽装破産に怒りがこみ上げてきた。

 配布された財産目録の項目には「集中出版・1億2千万円」と記載されていた。ご丁寧にも「集中出版ヘ提訴済み」とある。事実確認もせずにその金額を無造作に財産目録に記載する破産管財人の仕事はまさに手抜きと言える。

 債権者会議の中で発言の多くは弊社集中出版の財務関係者からだった。財産目録の中で目を引いた支出の部の予納金850万円だ。申立手続き費用として支出されていたが、弊社が調査すると、受取人は突然の破産を申請した張本人・山下純一(仮名)本人だった。加々美博久弁護士は、山下がその資金を受け取れるように上野破産管財人宛に上申書を作成しているが、そこに記載された内容は事実と異なる。まさに盗人に追い銭の話だ。「破産管財人ビジネス」と言われる見本がここにある。

 時計を戻す。18年8月23日の第52回理事会で弊社代表・尾尻は理事長を辞任し、山下が就任する予定だった。この日の議題は1つ。議案は新理事長の選任だけだ。10時開催の30分前に山下は尾尻に「今日の理事長就任は出来ない。19年1月1日付けとしたい」と告げて来た。理事会が最高決定機関として存在する社会福祉法人のやり方を無視する山下の申し出に紛糾したものの、1カ月後の9月29日に理事会は尾尻の辞任と山下の理事長就任を1月1日にする事を決議した。

理事会直前に理事長就任を拒んだ理由

 理事会が紛糾しても最後は多数決だ。これぞ一流の詐欺師と見紛うほどの鮮やかな手口だ。

 驚く事に、この紛糾した理事会の直後から山下は破産に向け動きを開始した。約1カ月後の10月末には何と「大磯恒道会債権者リスト」を作り上げた。作成したのは加々美法律事務所で債権者リストの日付は18年10月31日とある。擬装破産に向けて動いていた。

 債権者リストには金融関係債権者と一般債権者との2種類あるが、最大の債権者は日本年金機構の1億7480万円。続いて都内の金融会社Cの1億3680万円。3番目が神奈川県社会福祉協議会の1500万円だ。一般債権者の中で一番大きい数字は500万円。少ない会社は新聞販売店の1万1000円とある。「10億円の資金枠がある。これを導入して大磯恒道会を再建したい」と語っていた山下の嘘はばれた。長い間、大磯恒道会の乗っ取りを企てていた山下は、この資料を見ながら笑いが止まらなかったに違いない。

 しかし、プロの仕業ながら債権者リストに作成日を残した。また、妙な事に、この都内の金融会社Cは破産後の債権者リストにはない。短期間で1億3680万円が返済されている。法的な問題は無いに違いないが、なぜ、1億円を超える返済が出来たのか。即ち、大磯恒道会にはまだ資金があり、破産は資金的な問題ではなかったと言える理由だ。これ以外にも擬装破産の証拠は弊社の元にある。追って記す。

 弊社は、これらの解明を求めて債権者会議で質問を繰り返した。弊社の質問は刑事事件を予感させる微妙な内容を含んでいる。弁護士であれば危険な案件であると分かるはずだ。これが「口封じ」という理由だ。

 そして、債権者会議の裁判所のひな壇で上野破産管財人の隣に座っていた加々美法律事務所の加々美弁護士の姿はいつの間にか消えていた。

 通常、破産管財人が訴訟を起こす際は慎重さが求められる暗黙のルールがある。それは訴訟に掛かる費用は破産管財人でも弁護士の資金でもなく債権者のものだからだ。人の金を使って勝手に訴訟をしてはいけない。誰にでも分かる話だ。

 その上、弊社を提訴した手順はとても乱暴であり、素人の仕事のように見える。真っ当な弁護士であれば、もし不明点があれば集中出版と元理事長・中井に直接確認するべきであり、今回の場合で言えば、彼らが抱く不明点は直ぐに判明したはずだ。しかし、それを行う事なく裁判所を使った。

 このコロナ禍の中で、裁判所は通常の業務を大幅に縮小している。裁判所も驚いたに違いない。取材した旧知の法務省幹部は一般論として「もし言われるような提訴提起だとすると」と前置きをしながらも、「これは司法制度の乱用であり、公序良欲に反する行為として厳に慎まなければならない事案であり、債権者に対する高圧的なこのような行為は、破産管財人の仕事を正しく理解していない事の証左でもある」と厳しいコメントを出している。そして、東京地裁を舞台に訴訟が開始された。               (敬称略)

注:DD/デューデリジェンス。一般的に合併や経営統合に伴う契約締結前に行われる法務・財務・ビジネス・人事・環境などの調査の事。DDの結果が契約に反映するため、締結が解消されたり、締結金額が大きく上下したりする。

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