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未来の会

繰り返される「日歯連事件」が象徴する組織体質

繰り返される「日歯連事件」が象徴する組織体質
役員に求められるのは謙虚な姿勢と時代に対する見識

日本歯科医師会(日歯)の政治団体「日本歯科医師連盟(日歯連)」の迂回献金事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載、寄附の量的制限超過)に問われた日歯連前会長・高木幹正被告(72歳)、元会長・堤直文被告(74歳)、会計担当だった元副理事長・村田憙信被告(72歳)の裁判は大詰めを迎えている。

 3人の中で最初に求刑が出たのが村田被告。東京地方裁判所で10月24日に開かれた論告求刑公判で、検察側は禁固2年6月を求刑した。弁護側は11月16日の最終弁論で改めて無罪を主張、結審した。来年1月22日に判決が下される。

 事件の衝撃は、2人の会長経験者、法人としての日歯連が被告となったことだけではない。2004年の日歯連事件に続いて、またもや事件を起こしたことだ。

 前回の事件では、歯科報酬を巡る中央社会保険医療協議会委員への贈収賄、日歯会長選に絡む横領と政界に絡む選挙買収、当時は自民党最大派閥だった橋本派への1億円闇献金が発覚。村岡兼造・橋本派会長代理(元官房長官)を含め、自民党国会議員、地方議員、中医協委員、日歯連幹部ら計16人が起訴され、最終的に全員が有罪となった。歯科医療界が社会から信用を失った事件である。

 この事件をきっかけに、05年に政治資金規正法が改正され、それまでは無制限だった政党・政治資金団体以外の政治団体間の寄附に、年間5000万円の上限が設けられた。

迂回寄附は「日歯連内の資金の移動」

 今回の事件を振り返ってみる。日歯連は13年1月、組織内候補の西村正美・民進党参議院議員の後援会に5000万円を寄附。同日、同後援会から、同じく日歯連の組織内候補の石井みどり・自民党参議院議員の後援会に5000万円が寄附された。さらに、日歯連は3月、石井参院議員の後援会に4500万円を寄附。同後援会には計9500万円が渡ったことになる。

 これに対して東京地検特捜部は、日歯連が寄附の上限を超えることを隠すため別の政治団体を経由させた迂回寄附をし、収支報告書に虚偽の記入をしたと認定。15年に政治資金規正法違反で日歯連前会長ら3人を逮捕した。

 皮肉にも、前回の事件をきっかけに改正された同法に日歯連が違反する容疑が持たれたことは、歯科界の将来に不安を抱かせるものだった。

 この事態の背景について、元役員は「前回の事件では、政界や中医協への贈賄工作を行った。今回は、参院選に勝つための資金の移動。どういうことかと言うと、日歯連は内部に石井みどり中央後援会と西村まさみ中央後援会が設置されている。日歯連役員は組織内の資金移動という程度の感覚しかなかったはず。虚偽記載についても、金額を正確に記した日歯連からすれば、納得出来ないのでは」と話す。

 前回の事件以後、日歯と日歯連は会長を兼任しないようにした。両会とも役員の任期は1期2年。会員の間には、相次ぐ事件に、執行部間の引き継ぎ業務がきちんと行われていないのではないかと懸念する声が上がっている。出廷した高橋英登・日歯連会長も、情報の共有化とコンプライアンス(法令遵守)を徹底していくと話したという。

 政策の継続性がなく、リセットの繰り返しを続ける日歯・日歯連。何か問題が生じる度に、執行部批判や外部へのリークが繰り返されてきた。会員の間では周知の事で、辟易している。その体質改善も必要だ。

 さらに、事情通は「日歯連の会員が減っている理由は、度重なる不祥事だけではない。執行部のパフォーマンスが“上から目線”になっており、会員に不愉快な思いをさせている面がある」と指摘する。

人事に影響力を持つ同窓会・校友会

 古くて新しい問題も根深い。歯科界には29歯科大学・28同窓会・校友会がある。最近は大学や同窓会・歯科医師会の連携・意思疎通が重要とされ、新たな関係構築が模索されているが、依然として大学閥や地域閥が日歯や日歯連の人事に影響力を持っている。旧4校(東京歯科大学、日本大学歯学部、日本歯科大学、大阪歯科大学)とその他、私立と国公立の区分けが明確に位置付けられている。これを無視出来ないのが歯科界である。

 日歯連役員・評議員は、会長・地区推薦により全体のバランスに配慮しながら選出される。その結果、日歯連の活動に対する認識や経験にバラバラ感があるのが否めない。

 新任役員は『国会便覧』を片手に政権与党の関係議員を探して、歯科政策を陳情・説明。国政選挙になれば待合室に候補者のポスターを張ったり、名簿を作成したり、記事のコピーを通じて情報を集めたり、推薦議員の会合・集会へ出席したりしている。

 本来は、医療人・歯科医師として社会にどう関係していくべきか、どう認識されているのか、他業種の動向の把握、患者・住民との関係構築などに関する問題意識を持つことが必要だが、十分ではない。法的制度的な案件も含めて歯科以外の人達と議論する機会もほとんどない。これが歯科界特有の“診療所完結型”現場を反映した歯科医師の実像だ。

 歯科診療機関の大半が院長・スタッフ数人で歯科診療をしている。そうした環境下にいると、診療と関係ない人と時間を過ごすことが「時間の無駄」「診療所に有益性がない」と思われがちで、それは歯科界の常識だった。しかし、少子高齢化の時代、医科歯科連携の必要がある中、歯科の社会性が求められているのだ。

 医療は本来、党派・団体の別なく、国民・患者視点の政策が求められる。日歯連内で侃々諤々の議論が必要だろう。

 その上で、会員が知りたい情報や必要な情報を提供し、変化する政治状況や議論が進む医療制度改革に対し、適切な政治的行動を起こしたり、国民の理解・納得を得られたりするような情報を発信していくべきだ。

 昨今、政治活動が劇場化して派手になる傾向になり、このことで時として日歯連が日歯より目立つことがある。そこは留意しなくてはいけないだろう。日歯連関係者からは「日歯の政策は、最後は政治が決めるから」と、日歯より日歯連の優越性を示唆する発言もある。日歯の政治団体であるという組織の在り方からすれば、疑問がある。

 結果として、日歯・日歯連間の対立を生むのではないかという懸念も、両会員の間にある。両団体の関係の在り方が問われる中、双方が情報を共有していくことが、円滑な関係構築のポイントとなるだろう。

 昨今、国会議員には比較的簡単に会える。国会議員に会うことで人より優越感を持つなら愚かしい。「政治とカネ」は問題視されやすいだけに、日歯連役員には謙虚な姿勢が求められる。

 その上で、時代に敏感な感覚と、歯科医師としての矜持が必要だ。事件を再三起こしているだけに、今後の情報発信や活動に対し、国民は厳しい目で見ている。

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