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神奈川県立病院機構理事長解任で「闇事情」が明らかに

神奈川県立病院機構理事長解任で「闇事情」が明らかに
行政文書の公開申請の回答で新たな〝疑惑〟が浮上

 神奈川県立病院機構の理事長解任騒動から約3年。解任を不服とした土屋了介氏は神奈川県を相手取り、解任処分の取り消しを求める行政訴訟を横浜地方裁判所に起こしたりしている。騒動のきっかけは、神奈川県立がんセンターで放射線科部長を務めていた女性医師の経歴詐称だ。土屋氏が求めた行政文書の公開申請に対する県側の回答により、新たな疑惑が浮上。診療放射線技↘師法には照射録には医師の署名が必要と記されているが、同センターの重粒子線照射録について、同機構は理事長名で「(女性医師)本人の署名又は記名捺印はありません」と回答している事が明らかになったのだ。

 厚生労働省は施設基準として施設責任者に一定の経験を求めている。具体的には専ら放射線科に従事し、1年間は粒子線治療療養に従事している事だ。しかし、女性医師は要件を満たしていなかった。申請書には2年の粒子線治療の経験がある事になっていたが、実際は放医研での3カ月間の研修のみ。また、放医研で客員研究員を2年間務めていたが、重粒子線治療をしていたのではなく、その期間の大部分は同センターに勤め、一般的な放射線治療をしていた。

 土屋氏は施設責任者の資格がある医師を部長に任命し、女性医師を2017年4月から放医研に研修に出した。しかし、女性医師は同年8月に退職。また、独立行政法人になっても旧来のやり方から抜け出せない同機構に対し、細かく指摘する土屋氏を負担に感じたのか、県側は18年3月、土屋氏を解任した。

 土屋氏は20年3月、15年12月1日から17年8月31日の間の女性医師に関わる照射録の公開を申請したが、後任の理事長名で「本件照射録には、本人の著名又は記名捺印はありま↖せん」との回答があった。女性医師は2回目の放医研での研修に行っていなかった事も明らかになった。

 県側は、女性医師の部下の男性医師が15年4月から9月までの6カ月間と、16年10月から17年3月までの6カ月間、放医研で研修を受けているので、女性医師を派遣する必要はなかったと主張。しかし、男性医師の後期の照射録の開示はなく、同センターの出勤簿に捺印があった。土屋氏は、両医師が厚労省関東信越厚生局千葉事務所に保険医の届け出をせず保険医診療に従事したとして健康保険法違反と指摘する。

 土屋氏は20年10月、横浜地裁に提出した陳述書の中で次のように指摘している。①横浜市立大学と横浜市が同センター内に大学院設置を提案したが、女性医師の見解の下に大学院施設建設の敷地が確保出来ないとの理由で県は大学院設置を拒否、人材の安定的確保の機会を逸した②女性医師が厚労省関東信越厚生局神奈川事務所に提出した「既評価技術施設届出書」に記載した粒子線の技術経験日数や経験症例数に関し、神奈川県警は有印公文書偽造の告発を受理③女性医師は高度な重粒子線治療の実践についていけず、研修に行っていない事の発覚を恐れて退職したのが妥当だとした。土屋氏は女性医師の照射録未署名に関し、医療安全を脅かす重大事案として刑事告発を準備している。また、理事長の任期途中に不当解雇したとして、黒岩祐治県知事らに損害賠償を求める訴訟を19年に東京地裁に起こしている。県知事が個人的責任を問われる珍しい訴訟で今後の展開が注目される。

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