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「療養病床削減」の行方

「療養病床削減」の行方
生き残るには綿密な見通しに基づく戦略と戦術が不可欠

 2017年を迎え、療養病床の生き残りに向けたカウントダウンが始まっている。

 いわゆる「社会的入院」を解消するため、介護保険で賄われている介護療養型医療施設(介護療養病床)約6万床は、17年度末で廃止になることが決まっている。

 介護療養型病床においては、医療の必要性が乏しい寝たきりなどの高齢者が多く、これを施設に転換することで、毎年1兆円ずつ増え続けている医療費の伸びを抑制することが目的である。

 当初、06年に介護療養病床の11年度末の廃止を決めて、老人保健施設などへの転換の道を模索していたが、思う通りに進まず、廃止期限が延長された経緯がある。

 社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」(部会長=遠藤久夫・学習院大学教授)においては、その受け皿となる施設を明示し、経過措置を設けた上で転換を図ることが議論されてきたが、16年12月初旬、厚生労働省の示した整理案を了承する形で、報告書がまとまった。

求められる良質な「生活の場」の併設
 受け皿となる施設は、医療提供体制の濃淡の差により、三つのパターンが新たに創設することが構想された。すなわち、医療機能を内包した新たな施設タイプ2類型(Ⅰ型とⅡ型)と、病院に併設するような形で医療を外付けするタイプである。

 施設基準は、医療内包型のⅠ型は現在の介護療養病床と同等、Ⅱ型は老健施設と同等以上、外付け型は、医師は常駐せず介護サービスを内包する有料老人ホームと同等と、大まかに考えられる。医療機関の負担にならないよう配慮した結果として、現状と大差がないと言えなくもない。

 報告書には「地域の実情に応じた柔軟性を確保したうえで、必要な機能を維持・確保していくことが重要」とある。新たな施設は、日常的な医学管理や看取り・ターミナルにも対応できる十分なサービスと、良好な「生活の場」となる環境を併せ持つことが求められる。

 医療外付け型施設は個室が想定されており、医療内包型2類型も、パーテーションで仕切るなどしてプライバシーに配慮することが求められている。また、いずれの施設も「補足給付」によって、低所得者の食費などを軽減することも要請された。

 それぞれについて、少し詳しく見ていきたい。

 医療内包型は、介護保険法に則って設置するもので、生活施設としての機能重視を明確にするのみならず、医療提供施設としては医療法に基づく。容体が急変しやすく日常的な医療が必要な患者に対し、医師・看護師が24時間体制で常駐するなど容体に応じた体制を敷く。

 Ⅰ型は「重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者など」を想定し、利用者像には、療養機能強化型A・Bに相当する人が見込まれている。これに対して、Ⅱ型の利用者は、Ⅰ型と比べて「容体は比較的安定した者」が想定されている。最大の焦点となる介護報酬や人員、床面積など具体的な施設基準の詳細などについては、18年度の介護報酬改定に向けて、介護給付費分科会で検討がなされることになる。

 医療外付け型は、居住スペースに医療機関を併設するものである。居住スペースは介護保険法・老人福祉法に基づき、特定施設入居者生活介護の指定を受ける有料老人ホームなどを想定すればいい。こちらの利用者像は「医療の必要性は多様だが、容体は比較的安定した者」である。

 類型は明示されたものの、様々な施設基準や転換支援策については、詳細な内容や方針は定まっていない。名称もまだ決まっていない。判断や準備に掛かる時間を考え合わせた場合、最も重要なのは転換に要する経過期間であるが、これについては3年ないし6年で委員の意見が割れており、合意には至っていない。

 今後、厚労省では、特別部会でまとまった意見を介護保険部会などとも調整しつつ、必要な法案などを整備する予定である。17年の通常国会に必要な法案を提出するため、政府・与党内の調整が進められることになる。

一般病床の入院費にもメスが入る可能性
 これに先立ち、医療保険の「医療療養病床」においては、原則として全ての65歳以上の患者から、1日当たり370円の光熱水費を徴収する方針も決まっている。それ以前は、軽症の5万人のみから1日320円を徴収していたが、現実的に長期療養病床が「住まいの場」になっていることを考慮したものだ。

 医療療養病床は、高齢者や難病患者の長期入院が多く、平均入院期間は5カ月半ほどと長いため、介護保険施設の基準額(370円)相当の額とした。この見直しによって、社会保障費の自然増は約80億円抑制できると見込まれている。

 17年度末には、介護療養病床の設置期限だけでなく、療養病棟に配置する看護職員の最低ラインを緩和する経過措置の期限も到来する。医療療養病床の3割以上は、看護配置の要件が緩い「療養病棟入院基本料2」を届け出ているとされ、経営者は、検討を迫られることになる。

 「療養病床の在り方等に関する特別部会」では、看護配置の経過措置について、17年度末での終了を原則としつつも、「必要な準備期間に限り、延長を認めるべき」との方向性も出された。「入院基本料2」については、経過措置を踏まえて、都道府県が策定する地域医療構想に基づく地域の医療提供体制なども勘案しつつ、中央社会保険医療協議会(中医協)での検討課題となった。地域構想においても、団塊の世代が後期高齢者入りする25年に、医療資源の不足が見込まれることを見越して、全国の療養病床を縮小する方向性が盛り込まれている。

 15年の中医協では、7対1の一般病床にも医師の指示見直しが週1回程度という病状の安定した患者が50%以上入院しているという事実も明らかになっている。今後、単価の高い一般病床の入院費にもメスが入る可能性がある。

 日本慢性期医療協会では、介護療養病床などからの新たな転換先(新類型)に、現行の介護療養病床相当・転換型老健相当の報酬が維持されると仮定した場合(いずれも50床当たり)、医療内包型Ⅰ型では1カ月当たり約181万円、内包型Ⅱ型では約465万円、医療外付け型では約562万円の収支差が生まれるとの試算結果を公表した。

 現行の介護療養病床(機能強化型以外、約74万円)よりも収益性が向上する可能性を示唆している。

 サバイバルに向けて、綿密な見通しに基づいた、戦略と戦術が不可欠になってきている。

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