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第94回 進路指導

第94回 進路指導
第94回 進路指導 南淵 明宏(昭和大教授)

 どえらい事件が広島の府中町立中学で起こった。進路指導のミスで生徒が自殺! ありもしない「万引きの非行歴」を理由に学校が私立高校推薦を断った!! 隠しようのない失態に、文科省の「隠蔽マニュアル」も機能しなかったのだろう。

 いや、本当はそんな話ではない、もっととんでもない背景があったのかも知れない。M.フーコーが指摘するように学校も病院同様“監獄”の一種だ。「愚かな教師が強権で生徒を隷従させ、懲罰がその存在意義をなすSM空間」である。

 さて、医学部入試でも推薦枠は相当数にのぼる。全入学者の2割以上は推薦だ。

 今度、中学2年生になる世代からセンター試験がなくなり、日頃の学習態度が重視される入試になる? らしい。そうなると、学校の推薦をもらうために、現場では札束や商品券が飛び交うことが予想される。

 大分の事例から、父兄の皆さんは教師に渡す商品券を百貨店で買うとき、のし紙の宛名は店員さんに頼まないで自分で書くべきだ。

 教科書採用で教師を買収する額は案外低かった。医学部推薦の相場は30万円ぐらいだろうと想像する。

 ところで、高校の違いはどうするのか。中学受験や高校受験でも生徒の「学習態度」は激しく選別される。私が卒業したごくごくごく普通のそこいらへん私立高校の成績上位者はどれくらいかと言うと、関東御三家学年成績100番、いや200番ぐらいと比べれば……誰もが思っていることだ。

 週刊誌で記事になっている国立大学医学部医学科入学者を見ていると、ご当地の名門高校の占める割合が年々どんどん増加している。推薦の影響はもちろん大きいだろうが、実力勝負でも地域の強豪高校が際立ってきているように思える。

 ある旧帝大医学部医学科では○○第二高校からの合格者は23人。次に多い合格者を出している高校は4人と一人勝ちである。ライバル校と思しき○○第一高校で青葉が茂ったのは2人であった。この偏りは年々激しくなって高校ラグビーの石見智翠館の様相だ(応援してます! 名門出雲高校!)。

 また、こういった強豪高校は全国行脚の強者も輩出している。だいたい医学部医学科の同級生で他地域出身者なら、たいがいその地域の名門強豪校だ。岐阜出身ならギフ、秋田ならアキタ、福井ならフジシマ、長野ならフカシ、熊本ならクマタカ、群馬ならマエタカ、浜松ならキタで札幌はミナミ、沖縄ならヤッカ、鳥取はべートー。

 私の頃は一期二期で一発勝負。それが共通一次試験となりセンター試験に変わって歴史が刻まれた。センター試験はまさに現代の科挙。点数を競うゲームの感覚で臨むやり方もある。

 不公平やインチキに満たされた大人の社会を嘆き、「入試ほど公平な選抜はない」と漏らす人も多い。それが曖昧で基準が不透明な臆見と情実満載の推薦書が幅を利かすことになる。

 これが間違っている、と言うつもりは毛頭ない。そもそもこの世は曖昧で基準がない。人格や個人の能力、将来の伸びしろを客観的に評価する方法などあるはずはない。

 推薦は大前提として、

 「あくまで一教師の個人的感想なんですが……」

 その自覚が大切だ。

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