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PMDAの国際化を推し進め 「世界で最初の承認」を目指す

PMDAの国際化を推し進め 「世界で最初の承認」を目指す
藤原康弘(ふじわら・やすひろ)1960年米国イリノイ州生まれ。84年広島大学医学部医学科卒業。同年呉共済病院内科研修医。86年国立がんセンター病院内科レジデント。89年同研究所薬効試験部研究員。92年広島大学医学部附属病院助手。この間に、シカゴ大学医療センター、ジョンズ・ホプキンズ大学腫瘍センター、メリーランド大学がんセンターで臨床薬理学・腫瘍内科学を研鑽。97年国立衛生研究所医薬品医療機器審査センターで新薬審査に従事。2002年国立がんセンター中央病院医長。07年同病院臨床検査部長。08年同病院臨床試験・治療開発部長。10年国立がん研究センター中央病院副院長兼乳腺科・腫瘍内科科長。11年内閣官房医療イノベーション推進室次長。12年同センター執行役員・企画戦略局長。16年医薬品医療機器総合機構理事長特別補佐(併任)。19年4月同理事長。

長年、国立がん研究センター中央病院でがんの薬物療法に取り組んできた藤原康弘氏が、今春、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の理事長に就任した。PMDAは審査のスピードで世界のトップに並び、世界的地位も向上しているという。今後は世界で最初の承認を増やし、さらに国際化を推進することで、アジアの国々をリードする規制当局として、存在感を高めていくことになりそうだ。


——理事長就任の経緯を教えてください。

藤原 3月になって打診があったのですが、私は現役の臨床医でしたし、それまでPMDAの理事長になるということは考えてもいませんでした。まさに青天のです。

——理事長として取り組んでいくことは?

藤原 就任時から、「4つのF(First)」というキーワードを掲げています。1つ目は「ペイシェントファースト」で、臨床現場と良好なコミュニケーションを築きながら、患者さんを第一に考えた業務を行っていくこと。2つ目は「アクセスファースト」。人々が必要としている最善の医療に資する医薬品や医療機器の患者アクセスを迅速化します。一方で、安全性にも重点を置く必要があるので、3つ目は「セーフティファースト」です。4つ目は「アジアファースト」。アジア各国の薬事規制に積極的に貢献し、我が国の制度に対する信頼性を高めていくことも重視していきます。医師として患者第一と考えていましたし、PMDAの「理念」をしっかりと読んで、何を重点的にやるか、自分の言葉で分かりやすくまとめたのが「4つのF」です。

——PMDAと関わるようになったきっかけは?

藤原 1992年から5年余りアメリカに留学したのですが、帰ってきた97年にPMDAの前身となる医薬品医療機器審査センターができ、その時に最初の医師の審査官として赴任しました。アメリカではシカゴ大学、ジョンズ・ホプキンズ大学、メリーランド大学などで学びましたが、そろそろ日本に帰るという時に、「ボルチモアにいたなら、日本版FDA(食品医薬品局)ができるから行ってくれ」と言われました。ジョンズ・ホプキンズ大学のあるボルチモアからFDAは近かったので、FDAに知り合いはいましたが、その頃の私は薬事承認のことは何も知りませんでした。5年ほど医薬品医療機器審査センターで仕事をして、その後は国立がんセンター(当時、現・国立がん研究センター)に戻りました。がん薬物療法医として、診断、治療、看取りまでを行っていました。

——PMDAの理事長特別補佐に就いていました。

藤原 2016年からの3年間ですね。これは常勤ではなく、PMDAには月に1回行くくらいで、その間も国立がん研究センターでずっと患者さんを診ていました。理事長就任後の今も週に1回半日は病院に行って患者さんを診ています。

——国立がん研究センターでは臨床試験に関わる仕事もなさっていましたね。

藤原 03年頃、私はアメリカ臨床腫瘍学会の国際委員を務めていて、年に数回会合に参加する機会がありました。ある時、患者会の人を呼んで話を聞くということを学会が行っていたのですが、患者会の人から言われたことがあります。「新薬の臨床試験に最も多く参加しているのはアメリカ人。その結果承認された薬を日本人も使っている。もっと日本人も臨床試験に参加すべきでは」という話でした。それが、臨床試験の領域で仕事をするようになった1つのきっかけです。

審査が速いだけではまだ足りない

——PMDAの審査は世界でも速い方ですか。

藤原 アメリカのFDA、ヨーロッパのEMA(欧州医薬品庁)、日本のPMDAが世界の3大規制当局ですが、近藤達也・前理事長が努力されたこともあり、現在ではEMAよりは速く、FDAとほぼ同じ速さで承認しています。PMDAの職員は常勤が1000人弱、非常勤を含めても1300人くらい。FDAはCDER(医薬品評価研究センター)だけで5000人ほどいたと思います。EMAはPMDAと同じくらいですが、各国に1000人規模の規制当局があります。そういったことから考えても、PMDAは少ない人数で本当によくやっています。この審査スピードを維持するのに加え、今後は質も求めていきます。

——質というのはどういうことですか。

藤原 世界で最初に承認される日を「国際誕生日」と言いますが、日本には国際誕生日を生んでいる品目が少ないという弱点があります。17年、私はPMDAの審査はこんなに速いという内容のレターを書き、『The New England Journal of Medicine』に採択されたのですが、すぐに反駁がありました。「世界で初めてPMDAが承認した品目はわずか5%にすぎず、大半はFDAが世界で最初に承認している。それで審査が速いなどと言うのはおかしい」ということでした。今後は審査の速さに加え、世界で最初の承認をもっと増やすことを目指していきます。

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