地域資源の活用と環境配慮で患者に優しく
234 松山赤十字病院 (愛媛県松山市)
松山市の中心部に1913 年、日本赤十字社愛媛支部病院として開設された松山赤十字病院は、愛媛県の基幹病院として急性期医療や高度専門医療、がん治療、救急医療を提供し、地域医療に貢献して来た。周囲は愛媛大学や松山大学を始め小中高校が集まる文京地区となっている。
これまで改築や増築等を重ねて来たが、施設の老朽化が進み、耐震性も不十分な為、2014年に現地建て替えに着手した。それまでの敷地では面積が足りず、同様に老朽化で小中連携校として再整備する事になった隣接の東雲小学校の用地の一部を活用した。
2021年3月15日に開院した新病院は北棟と南棟が在り、地下1階地上6階建ての北棟は各診療科の他、12室の中央手術室や12床のNICU・GCU、病院の管理部門、事務部門等が在る。南棟は地下1階地上10階建てで、入院病棟を中心に診療科の一部や中央検査室、カウンセリング室等を配置し、患者の総合受付も1階に在る。各種サインは柑橘系カラーをテーマに展開し、コンテンポラリーなアクセントを添えている。
受付前に在る大きな陶板壁画「輝木」は高さ7m幅3mの大作で、地元名産の砥部焼の陶板230枚が並べられている。作者は県無形文化財技術保持者の山田ひろみさんで、力強い生命力を表現し、樹木に宿るパワーが患者を始め来院者に降り注ぐ様にとの思いが込められている。
屋上庭園を挟み北棟のNICU・GCUや成育医療センターと繋がる南棟5階の小児病棟は、小児患者が少しでも楽しく過ごせる様にと、親しみやすい動物のアートを配置する等、明るい雰囲気作りにも努めた。同様に1階にも、隣接する東雲小学校の児童の協力で制作した愛媛特産の「みかん」をテーマにしたアートを配し、利用者の気持ちを和ませている。
「環境に優しい病院」も設計段階からの重要なテーマで、建物には様々な工夫を凝らした。屋上等には太陽光発電と太陽熱集熱パネルを設置し、電気や温水の創出に太陽光を利用。病棟デイルーム等の窓は2重ガラスのダブルスキン構造とし、ガラス内で温められた上昇気流を利用して自然換気を行っている。断熱性を高め、CO2の固定に繋がる屋上緑化も積極的に取り入れた。この他、センシング技術を活用した厨房の排気量コントロールシステムや電力量のピークカットを図る水蓄熱システム等の設備を整備。サステナブルな病院を目指した。
こうした取り組みを展開した結果、一般的な病院に比べて25%の省エネを達成。サステナブル建築物等先導事業にも採択され、国際病院連盟主催のExcellence Award for Green Hospitals 2022では金賞を受賞。今後も環境に配慮しながら、患者や家族の気持ちに寄り添った病院を目指すと共に、地域の拠点病院としての役割を果たして行く。
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