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笑いを力に変える「ホスピタル・クラウン」

笑いを力に変える「ホスピタル・クラウン」
小児病棟での活動やコミュニケーションの意味を紹介

自然治癒力を高め、健康効果をもたらすといわれている「笑い」。メイクをしてダボダボの服を着て、手品やバルーンアートなどのパフォーマンスを病室で披露する「ホスピタル・クラウン」は、入院中の子ども達を笑いで励ますクラウン(道化師)の活動だ。 

 そのホスピタル・クラウンの基本的な知識や活動が、神奈川県横須賀市で今春開かれた日本医療マネジメント学会第18回神奈川県支部学術集会の市民公開講座で紹介された。

  「笑いを力に!」をテーマに登壇したのは、クラウンの育成や病院などへ派遣しているNPO法人日本ホスピタル・クラウン協会(名古屋市)の大棟耕介理事長だ。自らも「クラウン・K」としてパフォーマンスを行っている。

 大棟氏はまず、クラウンについて「日本にはピエロはいません。ピエロは固有名詞で、演劇の中の1つの役割にすぎないんです。皆さんがピエロと思っているのは、実はクラウンなんです」と話した。クラウンは欧米では尊敬される仕事。なぜか。大棟氏は「サーカスでは観客の出迎え、演目と演目の間、見送りに出てくる。つまり、観客がサーカスを観やすい環境を作っている。だから、アーティストの中のアーティスト、名脇役。へりくだり、失笑や苦笑いを誘うことで、相手を主役にするのが得意」と言う。

 大棟氏は大学卒業後、鉄道会社に就職。クラウンに魅せられて活動を始め、1998年にクラウンの派遣会社を起業。ホスピタル・クラウンについては、米国でその存在を知り、2006年に日本ホスピタル・クラウン協会を設立した。現在、約100人のクラウンが所属。これまで全国94病院を訪問したり、東日本大震災や熊本地震などの被災地を訪れたりするなど、国内外で活動している。活動費は企業の協賛金や賛助会員の会費などで賄っている。

 大棟氏は「僕達が病院訪問をするのではなく、子ども達が僕達を病院に招待する活動だと思っています。サーカスのように僕達が脇役で、子ども達を主役にすると、口数が増え、声が大きくなります。『笑顔をプレゼントする』のとは違います。子どもは元々笑顔です。でも、闘病中、笑顔に蓋をしている。僕らが行くことで、子ども達が蓋を開けるきっかけを作っているのです」と話す。

 子ども達が笑わない時は母親を、母親が笑わない時は看護師を、看護師が笑わない時は医師を笑わして、病室の空気を作っているという。「これが笑いの伝播です」と大棟氏。

 大棟氏は「クラウン・コミュニケーション」にも言及した。コーチングと同様、一方的に教えるのではなく、相手の深層心理の中から答えを引っ張り出すコミュニケーション法だ。ただ、コーチングと違うのは「コミュニケーションは常に大げさに」という点。「日本人は感情表現が小さい。最近は、スマホなどを通した大量の情報量に対し、本能的に感情を押し殺し、表情筋を使わなくなっています。被災地などを訪れて感じるのは、絶体絶命の時でも笑顔や笑いが大事だということ」と大棟氏は指摘した。

 

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