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新型コロナワクチンは「生理食塩水」だった!

新型コロナワクチンは「生理食塩水」だった!
許されざる反ワクチン医師の実像

新型コロナウイルスの予防の為接種したワクチンが、実は何の効果も無い生理食塩水だったとしたら? 人体に大きな影響は無いとしても、医師を信頼して接種をした患者にとってみれば、とんでもない裏切り行為だ。そんなトンデモ医師が9月、警視庁に逮捕された。コロナ禍で「反ワクチン」派の危うい主張や行動は一部露わになったが、この医師は表向き通常のクリニックとして運営していたというから驚きだ。

 詐欺と公電磁的記録不正作出・同供用の容疑で逮捕されたのは、東京都北区の「王子北口内科↘クリニック」院長で医師の船木威徳容疑者(51歳)だ。警視庁によると、船木医師は2021年10〜12月、実際にはワクチンを接種していない北海道札幌市の50代の女性と10〜20代の子供2人、又愛知県稲沢市の40代女性と10代の娘2人に、国のワクチン接種記録システム(VRS)にワクチンを接種したと虚偽の登録をし、札幌市と稲沢市からそれぞれ接種委託料約1万4000円を騙し取った疑いが持たれている。コロナワクチンは自身が居住する自治体で受けるのが原則だが、船木医師のクリニックに接種記録が有った約230↘人の内約7割は北区以外の13都道府県の在住者だったという。ワクチンを打ちたくない人達を集めて、偽の接種証明を出していた可能性が有る。

 だが、船木医師の疑惑はそれだけではない。警視庁の調べに、船木医師は「接種希望者に生理食塩水を打った事も有る」と供述。北区には「船木医師のクリニックでワクチンを打ったが抗体価が上がっていない」等の相談が寄せられており、ワクチンを打ちたくない人に虚偽証明を出しただけでなく、打ちたい人に偽の注射をしていた恐れが有るのだ。反ワクチンの思想を持つのは自由だ↖が、普通の内科クリニックを装って、接種希望者を騙していたとすれば許される事ではない。

反ワクチン思想を広める為の犯行か

 船木医師は、どのような人物なのか。クリニックのHPによると、兵庫県神戸市出身で、名門・灘高校を卒業後、旭川医科大学に進学。1996年に同大を卒業し、札幌徳洲会病院や東京女子医科大学東医療センター勤務を経て、2011年に「王子北口内科クリニック」を開設した。日本内科学会や日本透析医学会に所属し、内科を選んだ理由について、外科的治療で完治した筈の患者が解決出来ない〝何か〟を抱えており、「その方の暮らしや物の考え方、生き方や家族関係も含め、〝何か〟の原因を軌道修正し、その方の人生を最後まで見届けたいと思い、メンタル面でもフォローすることができる『内科』を選びました」(HPから)と説明している。その言葉を象徴するかのように、船木医師のフェイスブック(FB)には、生き方を指南するような投稿や、〝自然派〟を肯定する文言が並ぶ。一見して反ワクチンの思想が目立つ事は無いが、セラピストや反ワクチンのアーティストらとの度重なる交友が目を引く。このアーティストは船木医師の逮捕後、自身のFBで、ワクチンを打ちたくない人の権利も守られるべきだと主張し、「私は、船木先生のやった事を、正当化するつもりは有りません。しかし、どうしても打ちたくないのに、打たなければならない人がいて、医師として、人間として、それを見過ごせなかったのではないか」と、船木医師をかばう投稿をしている。

 「逮捕容疑となった虚偽の接種証明をもらった札幌市の女性と船木医師の接点は、数年前の投資セミナーだったとされている。このセミナーの主催者はコロナワクチンを『殺人ワクチン』と呼んでおり、ワクチンを受けて体調不良になった事が有った札幌市の女性も、接種に反対する考えを持っていたそうだ」(全国紙の社会部記者)。船木医師は1人でクリニックに来院した女性に、女性と子供2人分の接種証明を用意した。「女性は、ワクチンを接種した事にしないと日常生活で不利益が有ると心配し、船木医師に頼んだようだ。接種証明の事は『なんちゃって証明』と呼んでいたらしい」と同記者は解説する。クリニックでワクチンを受けた記録が残る区外の患者の複数に同じセミナーの参加者が居たといい、反ワクチンの主張を持つ人達の間で、船木医師の「なんちゃって証明」が広がっていた可能性が有る。

 船木医師は自身のFBで、あくまで海外での例としながらも、「実際には接種をしていなくても証明書だけを交付しているひとがいるのは、容易に想像できます」と投稿。正にこの「証明書だけを交付しているひと」に自身がなっていたという訳だ。

 関東地方でクリニックを開設する医師は、この事件に「ワクチンの接種業務委託を受け、VRS入力もしているという事は、クリニックにはきちんとワクチンが送られている筈。届いたワクチンはどこに行ったのだろうか?」と疑問を呈する。「おそらくワクチンの多くは接種されずに廃棄されたと見られるが、さすがに船木医師がやっていた事をクリニックのスタッフは分かっていたのではないか」とこの医師は見ている。貴重なワクチンを廃棄していたのだとすれば、更に罪は重い。「人口も多い都内で、接種が230人というのは多くはない。接種委託料を騙し取る、所謂金儲けが目的というより、反ワクチンの自身の主張を広げるのが目的だったのでは」と前出の記者は分析している。

接種後に抗体が上がらず相談した患者も

だが、クリニックを訪れたのは、反ワクチンの主張を持つ患者だけではない。せめて接種希望者には打っていたと思いきや、生理食塩水を打っていた疑惑が浮上。実際に、クリニックで2回接種を受けた女性は、頭痛や発熱といった副反応が出なかった事から、念のため抗体価を調べたところ、ほぼゼロだった事が発覚した。ワクチンを接種しても抗体価が上がらない例が無い訳ではないが、女性は北区に相談。再接種を勧められ別の医療機関で接種したところ、今度は副反応も出て抗体価も上がったという。証明は難しいが、生理食塩水を打たれていた可能性が高い。

 北区は、船木医師のクリニックでワクチン接種を受けた区内の患者に抗体検査を案内し、抗体価が低かった数人が別の医療機関で再度、接種を受けた。健康被害が出ていない事が救いだが、ワクチンを接種して安心したつもりが抗体が全く上がっていなかった患者達も、コロナ禍に仕事を増やされた区の職員達もいい迷惑だろう。

 それにしても、反ワクチンを積極的に発信する医師も少なくない中、船木医師は対外的に声高に主張する事無く、反ワクチンの犯行に手を染めていた。「船木医師のFBには、クリニックの経営話を始め、度々お金にまつわる記述が有る。反ワクチンを主張して目立ってもクリニックの経営が儲かる訳ではない。それよりも、投資セミナー関係者という狭い人間関係を利用して上手に儲けようと考えたのではないか」とある医療関係者は話す。

 クリニックの近くで妻、子供2人と暮らしていたと見られる船木医師。投資に精を出す医師は珍しくないし、FBでマメに情報を発信するその姿勢は熱心な医師そのものだが、投稿の内容からは時折、自己顕示欲や高いプライドも覗く。自治体や患者を騙してまで自らの主張に沿った〝医療〟を提供する事に価値が有ると信じていたなら、その驕りこそが逮捕に繋がったと言わざるを得ない。

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