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未来の会

社会福祉法人あそか会巨額の公金横領の真相㊤㊥㊦

法人あそ額の領の真

公金横領の手法の数々と奪われた資金の流れ
 前号の記事は大きな反響を呼んだ。東京都議会議員や江東区議会議員からも問い合わせが相次いだ。中でも一番衝撃を受けたのは、社会福祉法人あそか会の職員たちだったと聞く。職員の多くは、元常務理事・荻原勝から「経営が苦しいから、今は我慢のときだ」と言われ、給与や賞与をカットされ続けてきたからだ。荻原とその家族が、あそか会の金でぜいたくな暮らしを送っていたことを知った今、職員たちの怒りは爆発寸前である。今回は流失した資金の流れを追う。

荻原元常務理事の「仮払い」による横領
 筆者はあそか会の「仮払依頼書」なる資料を入手した(①参照)。それらの金額の欄には少ないもので100万円、多いもので600万円という数字が並び、目的欄には「本部(局長)」とある。また欄外には「医業未収金」と書き込まれ、全て現金で処理されている。このメモはいったい何を意味するのか。

 これは、歴代のあそか会の経理担当責任者らが作成したメモで、長きにわたり、荻原元常務理事に現金で「仮払金」として支払ったことを証拠付けるものである。もちろん金の使途は不明だ。

 「仮払金」であるのに、これらの金が荻原元常務理事から返済されることはほとんどなかったという。

 社会福祉法人は、東京都や江東区から巨額の補助金を受け取っているため、決算報告書を提出する義務がある。
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 これらの金は、2001年3月31日の仕訳伝票(②参照)によると、合計1500万円が、荻原元常務理事に仮払いにより支払われたが、年度末までに返済されなかったために「医業未収金」という勘定科目に意図的に変更したものである。「医業未収金」とは、患者から回収できない診療費の総称をいう。

 荻原元常務理事が「仮払い」の事実が記載されたままの決算報告書では東京都や江東区からの承認が降りないと考え、虚偽の勘定科目である「医業未収金」として報告することを経理部に指示した。明らかな隠ぺい工作である。

 今年初めにあそか会を立て直す目的で、会計士や本部事務局長らによる「あそか会経営刷新委員会」が発足し、この医業未収金の金額が問題提起された。診療費未払いとされた患者データを元に、医事課のスタッフが支払いの催促をしたところ、その全員がすでに支払い済みであることが判明した。荻原元常務理事が使い込んだ金を患者の未払金にすり替えていたことが明らかとなった。

 第三者調査委員会の調査中にインタビューを受けた経理や総務の幹部職員は、「荻原元常務理事の指示で医業未収金という勘定科目に書き換えた」と証言した。また、前事務局長が経理や総務の幹部に「なぜこのような不正を長期間行ってきたのか」とたずねたところ「荻原元常務理事の指示に逆らったら、職を失うことになる。不正だと分かっていたが、仕方がなかった」と話していたという。

 荻原元常務理事があそか会から現金で持ち出した仮払いの総額は1億数千万円を超え、その全てが医業未収金と付け替えられ、決算書上では荻原元常務理事への貸し付けは一切存在しないことになっている。この行為を盗人と呼ばずに何と呼べばよいのか。
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有料老人ホーム「六華園」の入居金搾取
 荻原元常務理事個人の懐を潤し、家族ともども豪勢な生活を送っていたわけだが、その原資は都民、江東区民の血税である。とても許されるものではなく、都民、江東区民はこの盗人に対して怒りの声を上げるべきだ。

 今、都内のオンブズマンらが動き始めた。荻原元常務理事が不正に使い込んだ血税の存在を知りながら、それを黙認する新経営者「医療法人伯鳳会」に対しても損害賠償請求を行うべく、弁護団と協議している最中と聞くが、あそか会としてもこの新経営者に対し、損害賠償請求をしてしかるべきであろう。この金を取り戻すことができれば、あそか会の経営安定化の一助になることは確実である。

 あそか会が運営する有料老人ホーム「六華園」の入居金を、荻原元常務理事のファミリー企業である「あそかライフサービス(以下、あそかライフ社)」が受け取ったものの、あそか会に渡さず、あそかライフ社の自社の資金繰りに流用していたことは前号で述べた。

 トンネル会社を経由して金を搾取する古典的な手法であるが、お年寄り6家族から受け取った1億数千万円全額をそのまま懐に入れるという大雑把な手口には怒りを通り越してあきれるしかない。

 あそかライフ社の代表取締役として高額な役員報酬を受け取っていたあそか会の福田充前理事長は、理事会からの責任追及を逃れるために、あそか会のコンサルティングを担当する山田コンサルティンググループ株式会社(東京都千代田区、山田淳一郎社長。以下、山田コンサル)の担当部長・滝村和仁(仮名)と共謀し、近衛正子元理事長や久間章生元防衛大臣らを解任することを決めたのである。

 この解任騒動は社会福祉法人の根幹を揺るがす事例にもなる。社会福祉法人の法律ともいえる定款に違反し、不法なやり方で評議員会を開催し、理事らの解任を行った。

 東京都保健福祉局の幹部は社会福祉法に違反するような行為は認められないと、評議員会開催前日の深夜まで福田充前理事長と山田コンサルの滝村和仁を強く説得したという。東京都の指導を無視して強行開催する理由とは、自分たちにとって都合の悪い理事らを解任し、刑事告発されることを未然に防ぎたいという理由に他ならない。

 新理事長に就任した医療法人伯鳳会の古城資久理事長は、荻原元常務理事の不正を追及しないばかりか、経営権譲渡の対価を支払うという密約までしていた。同時に、荻原元常務理事の長男と長女の働く場をあそか会の中に提供するという、あそか会職員が知れば激怒するような仕組みを作ったのが、山田コンサルの滝村和仁である。

 これらの事実を知り、不正を正そうと奔走した前事務局長や理事らを解任し、荻原元常務理事が横領した巨額資金を追及した第三者調査委員会を解散させたのも、この滝村和仁の仕業であると関係者らは話す。公共性の高い社会福祉法人の経営権を大金で売った荻原元常務理事に代金が渡った瞬間に逮捕されることは確実である。不正を隠ぺいするために、さらなる不正が塗り重ねられたのである。

 前述の通り、あそかライフ社は荻原元常務理事がオーナーであり、代表取締役は福田充前理事長である。この2人が裏で手を組むことで、あそか会の資金は自由自在にあそかライフ社に流せる状況にあった。
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あそかライフ社への薬剤不正購入資金
 ある日突然、あそか病院が使用する医薬品は全てあそかライフ社を経由して購入するようにとの通達があそか病院に対してなされた。あそか会職員は、医薬品の安定的な供給のため、という説明を受けたという。しかし、幹部職員らは、荻原元常務理事のトンネル会社の利益を増やすための仕組みであることを分かっていたという。

 当初は、薬品代2000万円にあそかライフ社の利益を100万円程度上乗せして、2100万円程度の請求書が発行されていた。しかし、いつしか、1カ月の請求額が5400万円にも上り、通常の約2倍もの金額の請求書が送られてくるようになった。あそか病院の毎月の売上額はほぼ横ばいであったことを考えると、驚くべき金額が搾取されていたことが伺える。

 あそかライフ社の要求はますますエスカレートし、不正資金の流出額は2億6000万円にまで膨らんだ。東京都からもこの不自然な資金の流れを指摘され、改善するよう指導を受けていたが、無視していたという。

 経営刷新委員会からも同様の指摘を受けたが、福田充前理事長は改善することはあそかライフ社の資金難を招くことになる、と断固拒否した。福田充前理事長自身が長らく代表取締役として報酬を受け取っていたあそかライフ社の利益を最優先したということになる。

 あそか会幹部は「あそか会はまるで彼ら(荻原、福田の)財布代わりだった」と話す。不正を知っていながら、なぜ黙認したのか、と尋ねると、「あそか会では荻原元常務理事の不正を黙認さえしていれば、定年まで働けます。物申した途端に首になります」という答えが返ってきた。

 あそかライフ社への不正な資金流出を止めた前事務局長は、福田充前理事長と山田コンサル・滝沢和仁に突然自宅待機を命じられ、その職をはく奪された。

 半年間の調査をまとめた中間報告書を提出した第三者調査委員会も解散させられた。その理由は、荻原元常務理事や福田充前理事長にとって不都合な事実が明るみに出るからだ。

 9月14日、新第三者調査委員会が発足した。メンバーは石原公認会計士事務所の石原美保、石原佳和、および安原公認会計士事務所の安原徹の3人(3人ともに公認会計士・税理士)である。今回の第三者調査員会に支払う報酬をあそか会の浄財から拠出することには断固反対である。

 なぜなら、不正の事実を隠ぺいするための第三者調査委員会であるからだ。自らの利益のために新第三者調査委員会を任命した医療法人伯鳳会が負担すればいい。しかし、東京都も江東区民もあそか会の職員も、この不正を見逃すことなく、追及する姿勢を崩してはならない。 (敬称略)
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