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未来の会

社会福祉法人あそか会巨額の公金横領の真相㊤㊥㊦

社会福祉法人あそか会巨額の公金横領の真相㊤㊥㊦

あそか会・巨額公金横領事件を振り返る・・・
 「江東区社会福祉法人あそか会の公金流用と新理事長の突然の転落死」
弊誌「集中」でも3回の連載記事を掲載した「社会福祉法人あそか会」の元常務理事による息子と娘の会社への十数億円の公金流用事件。朝日新聞も一面で大きく取り上げた。その後、元常務理事が退任し新しい理事会が発足。新理事長は弁護士(元検事)であり十数億円の公金流用の解明に動いた。

 調査の結果
、元常務理事の公金流用の疑いは強く、横領背任の刑事事件に相当すると言う判断を理事会で示した直後に突然、転落死を起こす。この死で命を救われた元常務理事は公金横領が記載された膨大な量の第三者調査委員会報告書を闇に葬ることを決めた。それに反対した全理事を突然解任し新しい理事会を元常務理事が決めた。元常務理事の不正を闇に葬る事に賛同した医療法人伯鳳会(兵庫県)理事長に売却した。

 筆者はあそか会の元事務局長であり、不正解明の第三
者調査委員会から全ての資料を見る立場にあった。社会福祉法人の理事ポストを金で譲る事は法律で禁止されているが、法令順守からほど遠い元常務理事と医療法人伯鳳会の面々にとっては何の事でもなかった。何故、このような不正な行為がまかり通るのか?

それはあそか会と江東区の無
責任行政にあるようだ。

 今回の一件で、税金を食い物にする社会福祉法人を放置する江東区とのレッテルを張られた。当然ながら横領背任などの事件に発展すると誰もが考えたが、取材した江東区の回答は「江東区長は入所している数百名の老人の今後が心配だ」と簡単な調査で終了させた。しかし、この回答は無責任だと江東区議会主導で調査をするべきだと声を上げた江東区議も結局は触らない方針だと方向転換をした。江東区長と元常務理事が昵懇の関係にあった事を考えると胡散臭い結末だ。今、江東区長は築地市場移転問題で不正があったのではないかとの世論が起きている。
 十数億もの資金を無駄にするほどに江東区民は裕福なのだろうか?
江東区民による行政の監視強化があれば、直ぐに化けの皮が剥がれる事件だ。



社会福祉法人あそか会巨額の公金横領の真相㊤


20億円横と近子元理事の解通知
 7月19日、東京都江東区の社会福祉法人あそか会の評議員23人に宛てて臨時評議会招集通知が送達された。差出人は理事長の福田充である。通知書を受け取った評議員らは我が目を疑った。緊急動議の第1号議案として「理事9名の解任の件」が提議され、解任される理事の中には、貞明皇后の姪で、あそか会元理事長の近衛正子の名前があったからだ。天皇につながる人物を「解任」するとは、世が世であれば「不敬罪」にもなり得る話だ。

 「近衛正子解任事件」は、あそか会の設立と深いつながりを持つ浄土真宗本願寺派の本山・西本願寺や、正子の実家である大谷家、嫁ぎ先である近衛家にとっても末代まで拭えぬ汚点となるに違いない。近衛正子を解任してまでいったい誰が、何を企んだのか。このような暴挙に出たのはいかなる理由があったのか

 あそか会をよく知る関係者は、今回の騒動は、あそか会のコンサルティングを担当する山田コンサルティンググループ株式会社(東京都千代田区、山田淳一郎社長。以下、山田コンサル)の担当部長、滝村和仁(仮名)の主導によるもので、あそか会の不正経理の工作に加担した医療法人伯鳳会(兵庫県。古城資久理事長)による、名門あそか会の乗っ取り計画であると語った

 あそか会の歴史は古く、関東大震災直後の大正12年(1923年)に九条武子が上野に救護所を開設したことに始まる。武子の実家でもある浄土真宗本願寺派(以下、西本願寺)の支援を受け、昭和5年(30年)にあそか病院として今日に至る、由緒正しき社会福祉法人である

 現在でも、理事会や評議員会を開始する際には、出席者全員が起立し、京都の西本願寺の方向に向きり、直立不動の姿勢で「合掌」「礼拝」という掛け声に合わせて合掌するのがしきたりである。
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30年間独裁体制を敷いた前常務理事
 事の発端は、昨年6月2日の朝日新聞の一面に「社福 親族企業に利益」と大きな文字が躍った記事である。公益性の高い「社会福祉法人」が当時の常務理事の親族が経営する企業に利益を横流ししていたことを報じたこの記事はあそか会の多くの関係者を凍り付かせた。あそか会関係者の間で、長らく「タブー」とされてきた問題点に切り込んだからだ

 記事によれば、あそか会の常務理事に30年もの間鎮座した人物が、自身の長男や長女を社長に据えた親族会社に利益を流用していたとしている。この記事が掲載されることを知り、わずか2日前の5月末に、当の常務理事は自ら職を辞している

 この常務理事こそが、あそか会の資金を昭和58年(83年)から30年以上も我が物として流用し、独裁体制を敷いてきた荻原勝だ。

 社会福祉法人の運営には多額の税金が補助金として投入され、社会福祉法に定められた通り、福祉利用者の利益の保護と地域の社会福祉の推進を目的としている。当然、一個人や医療法人が利益を得るために血税が投入されているわけではない

 それゆえ、監督官庁である東京都や江東区は、社会福祉法人に対し厳しい定期監査を行うが、仮に初めから隠蔽工作がなされている場合、指導にも限界がある。そもそも不正を行うこと自体、福祉の精神から外れるものという理念に基づいている

 しかし、荻原は血税を荻原個人の不正蓄財に流用していたばかりか、長期にわたりあそか会に対し、その証拠を隠蔽するよう指示を出していたことが判明した。

 荻原は常務理事を辞任した後も、あそか会に隣接する冨士工第二ビル8階の個人事務所に毎朝7時に出勤、辞任前と全く変わることなくあそか会内部の報告を受け、指示を出し続けていた。あそか会内部には、荻原の「愛人」とされる女性が4人存在することは、あそか会の職員の間では知らない者はいないという。この愛人やあそか会については複数の怪文書が出回っており、それによれば「荻原常務は愛人への手当を個人でまかなうのが嫌なので、愛人らをあそか会の幹部に登用し、法外な手当を支給している」とあり、愛人とされる4人の実名も記されている。

 また、荻原は何ら権限を持たない立場にもかかわらず、あそか会の理事の選任、業務執行責任者である本部の事務局長までも自ら選任し、「江東区の区議会議長も、あそか会のことは私でないと話にならないからと、今でも相談に来る。先日も、江東区の公園に新しい介護施設を造るという話を持ってきた。それに比べると、山﨑(孝明)区長は私には何一つ言ってこない。あいつは駄目だ」と、辞任してもなお実権を握っていることを吹聴している。

 荻原が個人事務所を構える冨士工第二ビルの購入資金はどこから出たものなのか。このビルの所有者は、荻原が実質オーナーで、長女が役員を務める会社「水仙」。購入資金があそか会の資金を流用したものだとすれば、明らかな公金横領である。

 朝日新聞に記事が掲載された直後、臨時理事会が開催され、あそか会の再スタートを決議した。理事の山田有宏が新理事長に選任され、新理事会は荻原の不正経理の解明に動きだした。山田理事長はあそか会の理事を長らく務めていたが、形式的な理事会の報告をうのみにしており、この時あそか会の実情を知り驚愕した。山田理事長は元東京地検の検事であり、退官後は弁護士として活躍した人物である。また、西本願寺の関係者でもあり、荻原とも40年あまりの付き合いであったという。
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真相究明に着手した新理事長が転落死
 しかし、山田理事長は真相究明を始めた矢先、突然、階段から転落し命を落とした。突然の死に多くのうわさが飛び交ったが、荻原は「山田先生はあの時に死んで良かった。これ以上、理事長を続けていたら晩節を汚すことになった」と述べた。理事長としてあそか会の真相解明に着手したことが、なぜ晩節を汚すことになるのだろうか。

 一方で、東京都と江東区は朝日新聞に「行政 監視不十分」と大見出しで書かれたことで、荻原の親族の会社への利益誘導についての調査を命じた。東京都は数年前、あそか会に対し、13億円もの巨額な資金が使途不明となっていることについて調査するよう命じていたが、あそか会は、使途不明金が生じた当時の会計書類が紛失したこと、当時の経理担当者が退職したことを理由に調査不能と回答し、うやむやにした。13億円もの金が消えるあそか会の経営は、いったいどうなっているのか。

 危機感を募らせた理事会は「第三者調査委員会」(以下、「第三委」)の立ち上げを決め、あそか会本部の元常務理事室を「第三者調査委員会室」として提供し、本格的な調査を依頼した。第三委の委員長には、元東京地検検事の弁護士が就任、元大阪高検検事長の弁護士の他、社会福祉法人の会計基準に詳しい公認会計士が委員に就任した。第三委はあそか会の経理担当責任者や総務責任者を検察の捜査さながらに呼び出し調査を行った。調査のために集められた経理資料や契約書などの入った段ボール箱は天井まで届くほどだった。

 13億円の使途不明金が発生した10年前当時の経理担当者は既に退職していたが、住所を元に探し出し「第三者調査委員会室」に呼び出した。その結果、紛失したとされる経理書類は女子更衣室に隠されていることが判明。元経理担当者は「都から不明金の指摘を受けたため、経理資料を隠すことを指示された」と語った。また、あそか会本部事務局の課長は「問題になった当時の銀行の通帳は、荻原が持ち帰った」と話した。

 第三委による半年間の調査に基づく調査報告書(中間報告書)が今年6月19日、福田理事長に手渡された。委員長は「早急にこの調査報告書を理事会に諮り、流出したあそか会の債権回収を行ってほしい。この資金が少しでも回収できれば、あそか会の経営は正常に戻る」と要望した。

 しかし、報告書を受け取った福田理事長には、理事会を開くような考えはなかった。なぜなら、この報告書には福田理事長自身が関与した問題点も記載されていたからだ。第三委から複数回のインタビューを受けた福田理事長は、自身が関与した問題点が刑事事件に発展する可能性があるかどうか、第三委に確認している。その時の第三委の回答は「一般論で言えば責任は問われる」というものだった。

公金横領の舞台「あそかライフサービス」
 福田理事長は、あそか会の理事、あそか病院副院長という職にありながら、平成19年(2007年)10月31日から理事長に就任する直前までの7年間、荻原が実質オーナーを務める会社「あそかライフサービス」(以下、あそかライフ社)の代表取締役に就任しており、その間、高額な役員報酬を受け取っていた。

 このあそかライフ社こそが、今回の多額の公金横領の中心的な役割を担う会社である。あそか会は、社会福祉法人が物品を購入する際の一般競争入札を行うことなく、あそかライフ社へ指名発注を繰り返しており、そのことで東京都と江東区の指導を受けていたが、これは、あそかライフ社に多額の資金を流すための指名発注に他ならない。

 また、隣接する有料老人ホーム「六華園」もあそかライフ社に資金を横流しするために使われていた。六華園では、お年寄りが入居する際に生涯家賃や生涯医療費として一人当たり約3000万円を入居金として受け取る規約となっている。この入居金をあそかライフ社が先に受け取るために「管理運営委託契約」をあそか会と締結している。

 しかし、あそかライフ社は受け取った入居金をあそか会に支払うことなく、自社の資金繰りに流用したケースが6家族分あることが判明した。あそか会から見れば、入居金の入金がないまま、この6家族に他の入居者と同じサービスを提供していることになり、二重の損失を被っている。6家族の入居金総額は1億6000万円にも上る。これらの資金が正しくあそか会に入金されていれば、あそか会は職員の賃金カットをする必要もなく経営も安定したものになっていたはずだ。

 現在、あそか会本部事務局の金庫に1枚の小切手が眠っている。振出人はあそかライフ社代表取締役の福田充であり、金額は6家族分の入居金分の1億数千万円である。しかし、これをあそか会が現金化しようとすると福田充名義の小切手は不渡りを起こす。福田理事長の心配事は尽きない。6家族は自分たちが支払った入居金が、私的に流用されたことを知る由もない。

 天皇陛下の主治医だった東京大学名誉教授、北村唯一は東大退官後、荻原によりあそか会病院の理事兼院長にされた。しかし、在任後に知ったあそかライフ社をはじめとする荻原一族の横領・背任を追及したために、荻原により理事兼院長を解任され、病院を追われた。

 前事務局長は、あそか会の経営譲渡という重要事項を、理事会に諮ることなく、荻原や山田コンサルらが密室で決めることは許されないと進言した途端に解任された。荻原の独裁による不正を追及する者は皆、事故や解任に遭っている。

 九条武子が「貧困層の地域に医療と福祉の施設病院を」と掲げ、西本願寺の福祉思想を基に設立したあそか会は、歴史とともにその使命を忘れ、荻原個人の会社へ資金を還流するための組織に成り下がった。

 荻原の個人会社の役員である長男長女の多額の報酬、代表取締役として福田理事長が手にした多額の金は、都民と江東区民の血税である。

 この公金横領の事実を隠蔽するために、あそか会の理事を解任する必要があったに違いない。理事会は、荻原の不正を見逃さず、刑事告発もされかねなかったからだ。これが、あそか会のシンボルである近衛正子をも解任したいきさつであるが、実行した荻原、福田理事長、そして策を練った山田コンサルは、西本願寺やあそか会の職員、江東区民らにどう説明するつもりなのか。

 6月7日日曜日の午後、冨士工第二ビル8階に荻原、山田コンサルの執行役員、同担当部長の滝村、あそか会事務局長の4人が集合。この会の趣旨は、あそか会の今後を委ねる重要決定事項を荻原と山田コンサルだけで決めることに反対していた事務局長を説得することだった。

 滝村の「伯鳳会に買い取ってもらうことが決定したので認めてほしい。荻原や、(荻原の)長男と長女もあそか会できちんと処遇してくれる。あそかの名前も残る」という声が響く。この時に録音された音声は近々インターネットで公開されると聞いている。滝村は私的な経費をあそか会に不正に請求しているのではないかと、第三委に指摘されたが、それについて荻原は次のように説明した。「彼(滝村)の経費は私が認めたあそか会の正当な経費だ」

 常務理事を辞任した後も荻原があそか会の資金に手を付けていた確かな証拠である。いくらあそか会を手中に収めたいといっても、公金横領の隠蔽工作にまで力を貸し、その上、荻原、その長男長女までもこれまで同様に税金で面倒を見ることを約束した医療法人伯鳳会の理事長に倫理観をぜひとも聞かせてほしいものである。

職員をだまし続ける理事長職務代行者
 7月27日付で理事長職務代行者から評議員に通知書が発信された。弊誌編集部はそのコピーを入手した。

 通知書には、あそか会の経営が傾いたので医療法人伯鳳会に支援を依頼し受理されたとあるが、あそか会の経営が傾いた理由については何ら述べられることはなく、この期に及んでもあそか会の職員をだますことを表明しているにすぎない。今、理事長職務代行者がすべきことは、隠蔽や荻原のご機嫌取りではなく、職員に正しく状況を説明し、あそかライフ社をはじめ荻原の個人会社が横領した概算20億円の回収と同時に、解任前の理事の下、理事会を正式に開くことである。

 「お父さんのおかげでぜいたくもできたし、子供も私立の小学校に通わせた。もうあそか会から離れて子供と田舎暮らしをしたい」という荻原の長女の言葉をあそか会の職員たちはどのような気持ちで聞くのか。

 名門社会福祉法人あそか会の理念を踏みにじられたことに憤る職員やOBは数多くいるはずだ。警視庁、東京地検特捜部もこの巨額の資金流用についての調査を始めたとも聞いている。次号では横領された資金の流れや不正の詳細を記す予定だ。(本文中の敬称略)
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