
——ウェルコンパスが描く業務改革の未来像
医療・ヘルスケア分野に於けるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれて久しい。だが、現場実装に迄踏み込んだ取り組みは限られている。こうした状況を背景に、リゾートトラストとDeNAは2022年3月、合弁で株式会社ウェルコンパス(以下、ウェルコンパス)を設立した。
リゾートトラストは、会員制の人間ドックや健診事業で長年実務を担い、富裕層を中心に会員制人間ドックの会員3.4万人と年間60万人を超える健診実績を有する。ホテルやゴルフ、医療機関への継続的な投資を通じて蓄積した運営ノウハウが、事業の基盤となっている。一方のDeNAは、IT・データ活用を強みとし、データ分析や顧客行動の可視化を通じて、実効性の高いサービス設計を支援してきた。
ウェルコンパスは、両社の知見を統合し、医療現場の課題を単なるシステム導入に留めず、健診業務フロー全体を再設計するDXの推進を目指す。その一環として健診業務向けソリューションを開発し、30年迄に受診者100万人規模での利用を目標に掲げている。
構造的非効率がもたらす現場の負担
病院経営に於いて健診・人間ドック事業は、安定した収入源として重要な役割を担う一方、予約から問診、結果返却に至る業務が分断され、人手に大きく依存している。この構造的非効率性が、現場負担を増大させている。
とりわけ予約業務は、電話やFAX中心の運用が残り、受電率の低下や予約機会の逸失を招いている。例えば或る施設の平均受電率は約35〜55%に留まり、施設評価の悪化やクレームの原因となっている。又、対応件数がベテランスタッフ1日60件、新人20件程度に留まるといった格差が生じ、人員増強のみでは効率改善に限界が有り、結果として外部コールセンターへの委託等、追加コストが発生するケース等も生じている。更に、紙ベースの運用は、問診票の記入漏やOCR読み込みエラー、結果票の混入や送付漏れのリスクに加え、印刷・郵送費の高騰という課題も抱える。
一気通貫のウェブ化が実現する新しい健診の形
こうした中、ウェルコンパスが着目したのが、健診業務全体をカバーする「DXによる業務改革」だ。同社は、健診ウェブDXソリューション「つな健」を開発。同サービスは、健診・人間ドック業務を予約、問診、結果管理迄を一気通貫でウェブ化し、分断されていた業務を統合。全てのプロセスをオンラインで完結する事で、マンパワーへの依存を大幅に減少させる。
例えば、健診システムと自動連携するウェブ予約では、受診者は自身が受診可能なコースのみを選択する事が出来、オプションや単価に応じた最適化も自動で行われる。施設側は、機材や人員配置を踏まえた柔軟な予約枠設計が可能となり、稼働率の最大化に繋がる。又、各々の単価や契約に合わせた予約枠数の最適化、性別による予約枠の制御、コール用非公開枠の作成も可能で、従来は、ベテランスタッフが各所に何度も電話し、調整しながら取得していた予約を、簡単にウェブ予約で実現している。
他にも、団体健診や企業健診では、必要分の予約枠のみを一気に確保出来、使われなかった枠が機会損失とならない機能を搭載する。企業からの名簿による一括予約にも対応し、事務負担を大幅に軽減。企業側は従業員の受診状況や健診結果を一元管理出来る為、人事総務の負担軽減が見込める上、従業員の受診率向上、健康経営の実現にも貢献する。
更に、ウェブ問診機能の搭載により、過去データを活用した入力支援が実現。受診者の既往歴・家族歴等の入力負担も軽減される。その際、スタッフが注視すべき回答については自動ハイライト機能により確認漏れを防止している他、転記漏れやOCRエラー等にも対応した。検診結果については、ウェブでの結果閲覧を可能にした事で、郵送時に発生し得るヒューマンエラーも回避出来、印刷・郵送コストの削減にも寄与する。受診者側でも、過去の検査結果が時系列で視覚的に表示される為、自身の健康状態を把握し易くなるというメリットも有る。
実際に25年2月から「つな健」を導入したミッドタウンクリニック名駅では、予約受付の自動化により、受電率の問題が解消され、予約機会の逸失も改善されているという。又、問診のデジタル化により、紙からの転記作業が不要となった事で、ヒューマンエラーのリスクも大幅に低減した。その結果、スタッフは患者対応等に時間を割ける様になり、働き易さとサービス品質の向上を両立するという成果を上げている。
真の目的は医療の質向上と健康経営の両立
「つな健」が示すのは、DXとは単なるデジタル化ではなく、医療機関自身が健康経営を実践する為の基盤を整える取り組みであるという点だ。業務フローそのものを見直し、医療従事者が本来担うべき価値創出業務に集中出来る環境を整える事は、職員の心身の負担軽減に繋がり、結果として組織全体の健康度を高める。ウェルコンパスが目指すDXの本質は、医療従事者が健康的且つ持続可能な働き方を実現出来る職場環境を作る事にある。
更に、「つな健」が実現した健診業務の標準化と可視化は、現場改善に留まらず、病院全体の健康経営を支える経営基盤の強化にも直結する。予約状況や稼働状況をデータとして把握出来る事で、設備投資や人員配置といった経営判断の精度が高まり、健診事業の安定運営に寄与するだけでなく、職員の負荷分散や働き易さの向上にも繋がる。
業務効率化と受診者体験の向上を両立する健診業務DXは、医療の質を高めるだけでなく、医療機関自身が「健康経営」を実践し、持続可能な組織運営を実現する為の重要な取り組みと言える。
株式会社ウェルコンパス
東京都港区赤坂九丁目7番1号
ミッドタウン・タワー6階



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