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第125回 アビガン:毒性量でも無効

第125回 アビガン:毒性量でも無効

 ファビピラビル(商品名アビガン)は、季節性インフルエンザに無効と判定されながら、他の抗インフルエンザウイルス剤と作用機序が異なるとの理由だけで承認され備蓄されている抗ウイルス剤である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのアビガンの承認は見送られたが、すでに多数に使用されている。COVID-19へのアビガンの妥当性を検討した「薬のチェック」90号1)を要約紹介する。

アビガンは抗がん剤類似物質

 5-FUは核酸塩基(ウラシル)の代替物としてRNA合成(代謝)を阻害する抗がん剤(代謝拮抗剤)である。アビガンは「RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤」と呼ばれるが、5-FUの構造類似物であり、5-FU同様核酸塩基(ウラシルまたはグアニン)の代替物としてRNA合成を阻害する。5-FUが癌細胞だけでなくヒト正常細胞をも傷害するのと同様、アビガンも正常細胞を傷害する。

臨床用量は毒性量、小児には致死量

 アビガンのインフルエンザ用申請資料概要で、ラット1か月試験の致死量は200mg/kg。造血能低下と肺水腫など循環障害で死亡した。造血能低下などを認めた毒性量(80mg/kg)におけるアビガン曝露量(AUC)は1490μg・h/mLで、これはヒト推定曝露量1477μg・h/mLと一致する。造血能低下は抗がん剤に特有の毒性で、感染症も起こしやすくなる。

 イヌ1か月試験の致死量でも肺の出血性壊死や炎症、細菌感染を認め、ヒト用量の半分以下の曝露量ですでに造血機能低下の兆候を認めている。

 ヒトの2〜11歳に相当する幼若イヌではヒト曝露量より少ない用量で12匹中9匹が死亡。死因の肺炎や血栓は、COVID-19でも起こりうる。これがヒトで起こると原因の鑑別が困難である。

 催奇性は重大な害だが、毒性量、かつ致死量に近い量を治療に用いていることがさらに重大である。

COVID-19に対する効力の証明はない

 ファビピラビルの3件公表されているアビガンの比較試験はいずれもその効力と安全性を示していない。

1)抗HIV剤との前後比較報告:1つは、抗HIV剤(ロピナビル/リトナビル、商品名カレトラ)を使用し、その後の患者にはアビガンを用いた合計80人の前後比較の報告。14日目の改善率はカレトラ群62%、アビガン群91%と差があったが、アビガンの年齢が若く、発熱も少なく、リンパ球数も多く、背景の偏りからアビガンの効果とは言えない。

2)他の抗ウイルス剤との比較[5]:2番目はArbidol(抗インフルエンザウイルス剤)を対照としたランダム化比較試験。主目標「7日目改善」は有意でなかった(対照群52%、アビガン群61%、p=0.14)。

 背景を無視して、以上2試験をメタ解析すると、効果に有意の差はなく(p=0.17)、若年者がアビガン群に多く有意に近い差であった(p=0.065)。

3)プラセボ対照の小規模試験[6]:3番目はプラセボ対照遮蔽試験だが各群10人以下で効果が期待できる結果でもない。

結論

 メーカーすらプラセボ対照試験を計画していない。適切な感染実験で効果が証明され、厳密に管理され適切な規模のプラセボ対照試験で効力と安全性が証明されない限り無効と考え、使用すべきでない。

参考文献

1) 薬のチェック、2020:20(No90):80-82.
 なお、レムデシビルの最新評価も薬のチェックNo90参照を

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