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厚労大臣交代で消される 塩崎前大臣の「遺産」

厚労大臣交代で消される 塩崎前大臣の「遺産」
厚労大臣交代で消される
塩崎前大臣の「遺産」

 約3年にわたり厚生労働省を率いた塩崎恭久氏の後任として、加藤勝信・厚労大臣が誕生して4カ月。厚労省では徐々に「塩崎色」が薄められつつある。中堅職員の話。「加藤新大臣は元大蔵官僚という経歴もあって役所の仕組みをよく理解している。一気に独自色を出すのではなく、静かに少しずつ進めている印象です」。

 静かに薄まる「塩崎色」の筆頭は「保健医療2035」。「2035年を見据えた保健医療政策のビジョンと道筋を示す目的で設置された塩崎氏肝いりの懇談会でした。東京大学大学院教授の渋谷健司氏を座長に、ハーバード・ビジネス・スクールや慶應大などの外部有識者らがメンバーで、提言書は厚労省ホームページで大々的に喧伝されました」(医療担当記者)。2025年問題の次を見据えるという意味で、2035年に目を付けたのは悪くないが、「正直、2025年問題への道筋も立っていないのに、という声は省内からもありました」と前述の職員は打ち明ける。

 塩崎氏が次にターゲットとしたのは医師不足問題。厚労省は15年から「医療従事者の需給に関する検討会」の下に「医師需給分科会」を置いて対策を話し合ってきた。ところが、塩崎氏は新たに「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」を設置。渋谷氏始め〝塩崎人脈〟に連なるメンバーが中心となり、日本医師会など組織代表委員は入っていない。17年4月に報告書をまとめて終了となったが、今も続く「需給分科会」ではこの報告書はなかったことになっている。退任時の会見で「自民歴代最長の在任期間の厚労大臣になった」と自賛した塩崎氏だが、その遺産の寿命は短かった。

自民厚労族が右往左往?
伊吹・野田二つの「インナー」で混乱

 12月5日付の産経新聞に自民党の伊吹文明・元衆院議長と野田毅・前税制調査会長が厚生労働行政を巡り対立し、厚労族が右往左往しているとの記事が掲載され、永田町に波紋が広がっている。

 自民党内に各分野で「インナー」と呼ばれる幹部会があるのはよく知られているが、伊吹氏のインナーと野田氏のインナーという二つのインナーがあるのは異例で、厚労族のみならず厚労省職員も2人の顔色をうかがいながら厚労行政を進めなければいけないという事態に陥っている。そのことはこれまで表沙汰にならなかったため、厚労族のある与党幹部は「踏み込んで書かれていた。あの記事は面白かった」と膝を叩いた。こうした反応が出るのは伊吹、野田両氏が厚労族にとって目の上のたんこぶになっているからに他ならない。

 野田氏のインナーの正式名称は「社会保障制度改革に関する特命委員会役員会」で党の正式機関。これに対し伊吹氏のインナーは「厚労幹部会」と呼ばれ私的懇談会の性格を有している。にもかかわらず、伊吹氏の方が力を持ち、厚労部会にも口を出してくるとあって、無視出来ないのが実情だ。ある厚労部会長経験者は「伊吹氏が了承しないと、部会では何も通らない」と語る。

 このため、伊吹氏のインナーに入りたがる厚労族は少なくない。ただ、メンバーになるには伊吹氏の胸三寸。政務から党務に変わった後、伊吹氏に挨拶をしなかったため、なかなかメンバーになれなかった族議員もいる。

 こうした中、厚労行政の新たなキーマンとして存在感を現しつつあるのが田村憲久・元厚労相だ。その田村氏は今回の記事を読み、「どちらもお互いを立て合っているよ」と感想を語っている。下手に記事に同調し、対立をあおっては調整が大変になるとの思いがあるに違いない。

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