SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

第57回「精神医療ダークサイト」最新情報
子どもたちの自殺を防げ

第57回「精神医療ダークサイト」最新情報子どもたちの自殺を防げ
「宛名の無い手紙」に届く多数の悲鳴

黄色いカバー付きのランドセルを背負った可愛らしい小学生が、放課後の通学路をひとりで歩いていく。我々には見慣れた光景だが、治安が悪い国に生きる人々の目には信じられない光景に映るようだ。

80年も戦争をせず、世界有数の経済力を誇り、安心して暮らせる日本。30年前から低成長に陥っているとはいえ、我々は恵まれている。ところが、誰もがうらやむ豊かな国の中で、明日を担う子どもたちが悲鳴を上げている。

2024年、小中高生の自殺者数は529人となり、1980年以降で最多となった。毎日、約1•4人の子どもが自殺していることになる。また10代の子どもは、死因の1位が「自殺」となる状況も続いている。日本の子どもたちはなぜ、こんなにも生きづらいのだろうか。

子どもたちが自殺に至る動機や原因は、分からないケースが目立つ。一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターがまとめた「令和6年度こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究」報告書によると、自殺の原因・動機(2019〜23年の5年間の合計)は、小学生と中学生では「不詳」が30%超で最多となっている。高校生では1位が「学校問題」で31•4%だが、「不詳」も25•1%で4分の1を占めている。

原因究明を急ぐ必要があるが、子どもの自殺が止まらない現状では、原因の特定を待ってはいられない。民間組織が様々な取り組みを始める中で、注目されるのが認定NPO法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センターの活動だ。

同センターは、世界40か国以上で活動する国際ビフレンダーズの加盟団体として98年に設立、01年にNPO法人格を取得した。自殺を考えるほどつらい気持ちを抱える人たちに寄り添うことを目的に、相談ボランティアが夜間の電話対応を行っている。

「宛名の無い手紙」の投稿フォーム

さらに、24年3月から同センターのウェブサイト内で始めたのが「宛名の無い手紙」という投稿コーナーだ。「死にたい、消えてしまいたい」「自死で大切な人を亡くした思い」「死にたい、消えてしまいたいを支える人(家族・支援者)の思い」という3つのテーマで、入力フォームから匿名の文章を送ることができる。届いた文章はスタッフが丁寧に読んだ後、規約に反するもの以外はウェブサイトに掲載される。これは誰でも読むことができる。投稿者の多くが「誰かに読んで欲しい」という思いを持っていたことから、同センターは公開を決めた。

このコーナーは広く宣伝していないにも関わらず、1年余りで3万件を超える投稿があり、うち7割が小学生を含む10代からの投稿だった。文章の性質上、大まかな内容もここでは紹介しないが、同サイトを開き、日々追加されていく子どもたちの悲鳴をぜひ受け止めて欲しい。

同センターでは投稿コーナーの機能向上や、子ども(18歳まで)専用電話新設の費用を得るため、今年10月末までクラウドファンディングを行い、多くの支援を得た。今夏、理事長に就任した精神科医の大野裕さんは「『宛名の無い手紙』にリプライ(返答)は付きません。だからこそ、子どもたちは安心して投稿できるのだと思います。書くことで自分の思いを客観視できますし、同じつらさを抱える人を見つけることもできます。孤立しがちな子どもたちの声に寄り添う体制を整えたい」としている。


ジャーナリスト:佐藤 光展

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top