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「無痛分娩」を巡り今度は麻酔科医が反発?

「無痛分娩」を巡り今度は麻酔科医が反発?
協会は1を懸

酔導入後の重篤な症状や死亡が相次いで報道された「無痛分娩」を巡り、産婦人科医らの集まりである日本産婦人科協会(大川豊会長)が8月8日、無痛分娩の安全管理体制に関する会見を行った。

 会見の目的は主に二つ。一つは、無痛分娩後の事故を報じられた医療機関の一つである「おかざきマタニティクリニック」(神戸市)の医療安全体制が十分だと発表するため。もう一つは、無痛分娩を行える医療機関を麻酔科医や2人以上の医師がいる医療施設に限ろうとする動きに対し、1人でも十分な安全体制を確保すれば可能だと主張するためだ。

 会見には、協会の堀口貞夫副会長と池下久弥事務局長の他、「おかざきマタニティクリニック」の顧問弁護士も出席。堀口、池下両医師が外部委員を務めて行った院内検討委員会の結果を説明し、同クリニックは十分に安全体制が保たれているとして安全宣言を行った。

 続いて堀口医師らが、医師1人のクリニックでも安全に無痛分娩を行う方策として、中毒症状が出にくいという麻酔薬「アナペイン(ロピバカイン)」を従来(8〜15ml)よりも少量(3〜5ml)、分割投与し、患者の様子を観察しながら行うとする安全対策の方向性を提言した。

 なぜ、同協会はこのような提言を行ったのか。背景には、分娩を取り扱う全国の医療施設の半数以上が、病院でなく診療所であるという事情がある。厚生労働省の統計などによると、全国の分娩施設は2014年までの6年間で約11%(283施設)も減少。統計では14年の時点で病院1041カ所、診療所1243カ所の計2284カ所が分娩を取り扱っているとなっているが、池下氏は「ここ1〜2年でもっと減り、実際に分娩を行っているのは1400カ所もないのではないか」と述べた。

 池下氏らは、新生児の約半数が診療所で生まれており、診療所の約7割は医師1人であること、つまり30万人以上の新生児が医師1人の診療所で生まれていると数字を挙げて解説。厚労省や日本産婦人科医会が、無痛分娩の取り扱い施設に麻酔科医や産婦人科医の複数配置を求める方向で動いているとの情報に対し、「産科医師1人の診療所は危険」という認識が広まり、ますます分娩取り扱い施設が減ってしまうと危惧した。

 「医師を3人雇うと、薬剤師も必要となり、診療所の経営は成り立たなくなる」と池下氏。堀口氏も「お産の35%は基幹病院が対応すべきリスクの高い妊婦だといわれている。無痛分娩が診療所で出来なくなると、ハイリスクの妊婦に対応すべき機関病院が無痛分娩でパンクしてしまう」とここ数カ月の「無痛分娩」バッシングを批判した。

 ただ提言に対し、日本産科麻酔学会の関係者や現場の麻酔科医から異論も出ている。ある麻酔科医は「医師1人の診療所で無痛分娩を取り扱うべきではない」と主張。別の麻酔科医も「診療所に麻酔科医が行って麻酔をすることも可能だが、麻酔科医は慎重で真面目なタイプが多いので、産科麻酔に習熟していないと行けないと考える。あまりにも対応可能な人材が少ない」と打ち明ける。

 無痛分娩を望む妊婦の増加は時代の趨勢。麻酔科医の増加は一朝一夕には難しい。長期的視野を大事にしながら、すぐに出来る安全な医療体制の確立に知恵を絞る必要がある。

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