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菅内閣に「舛添厚労大臣」ありせば 新型コロナ感染拡大を防げたか

菅内閣に「舛添厚労大臣」ありせば 新型コロナ感染拡大を防げたか

 

舛添 要一(ますぞえ・よういち)1948年福岡県生まれ。71年東京大学法学部政治学科卒業。同学科助手、東京大学教養学部政治学助教授。2001年参議院議員初当選(2期)。07年の安倍内閣から09年の麻生内閣まで厚生労働大臣。14〜16年東京都知事。現在は(株)舛添政治経済研究所所長。近著に『ムッソリーニの正体』。

2007年の第1次安倍内閣から09年の麻生内閣までの2年間、厚生労働大臣を務め、09年には新型インフルエンザへの対応にあたり、感染拡大を防いだ実績を持つ舛添氏。安倍内閣・菅内閣が新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込む事が出来なかった原因は、感染症対策の基本である「権限の集中」の失敗、感染症対策トップの人選ミス、そして厚労省医系技官システムの問題にあると指摘する。もし安倍・菅内閣で「舛添厚労大臣」がその任にあたっていたら、どのような方策を取って新型コロナ対策に取り組み、感染拡大を抑え込もうと立ち向かったのか。自民党政権・厚労省官僚機構の「表と裏」を知り尽くす舛添氏に聞いた。

——安倍内閣、菅内閣と、新型コロナ対策で成果を出す事なく退陣に至りました。政府の対応をどのように評価していますか。

舛添 私の専門分野である安全保障の問題と共通しますが、戦争や危機管理の際には「プランB」を持っていなければなりません。正面突破だけでなく、裏手からも攻撃出来るようなオプションを最低でも2種類、出来れば3〜4種類は備えて、最後は指揮官が決定する。ところが、人流抑制やその後はワクチン一本やりといった具合に、政権は選択肢が1つしかないような状態でコロナ対策にあたってきた。これが決定的に問題です。

——政府の対応が後手後手に回ってきたという印象はありますね。

舛添 先の見通しが悪いという事もありますが、政府が国民を説得する努力を怠ってきた事が問題です。ロックダウンは法的に無理なので自粛を要請するにしても、自粛しないと村八分になるといった「空気」に頼ってきた印象があります。なぜ自粛が必要なのか、首相が記者会見で明確に説明して、国民に納得してもらわなければいけませんでした。私は厚労大臣として新型インフルエンザの対応にあたった時には、毎日記者会見を行いました。朝6時から夜12時まで、何か起こったらすぐに知らせられるように準備しておいて。そうした「臨戦態勢」を取っていなかった事が、国民を説得する上で大きな問題だったと思います。

——田村厚労大臣、西村新型コロナ対策担当大臣、河野ワクチン接種担当大臣という体制は有効に機能したと言えるでしょうか。

舛添 新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時には厚労大臣は加藤勝信さんでしたが、国会での答弁に問題があるとなって西村さんを連れてきました。ワクチン接種が進まないとなると、今度は河野さんを任命しましたが、その結果、新型コロナ対策の責任者の権限が分散してしまいました。感染症対策の基本は「権限の集中」であって、分散させると失敗するんです。

「検査と隔離」の基本原則が守られなかった

——新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長に対しては度々批判的な見解を発表していますね。

舛添 2009年に厚労大臣として新型インフルエンザ対策にあたった時も、厚労省が専門家会議の座長に用意したのは尾身氏でした。12年経っても同じ人物がトップに君臨しているというのはどういう事なんでしょう。感染症村はそんなに人材が枯渇しているのか。これには単純な理由があって、尾身氏は厚労省の医系技官出身なんです。厚労省から見れば、自分達の立場を理解してくれる、とても〝扱いやすい人間〟という事になる。一方、メディアも自らの視点で評価せずに、尾身会長を神様のように扱い過ぎています。これは非常に問題だと思っています。

——厚労省にとって都合のいい存在である事で、新型コロナ対策に影響が出てしまったと?

舛添 感染症対策というのは「検査と隔離」が基本原則です。それなのに、感染拡大当初からPCR検査体制を充実させて検査数を増やす事に力を入れてきませんでした。これが最初の躓きです。検査と隔離という基本原則を、感染症の権威と言われる人間が推し進めなかったのは非常に不可思議ですね。

——どうして検査数を増やそうとしなかったんでしょう。

舛添 尾身会長は「科学」ではなく「政治」を意識した動きを取ってしまったんだと思っています。政治的な動きはそれこそ政治家に任せて、あくまでも科学的な見地に徹するべきだったのに、政治的な配慮を働かせてしまった。

——厚労省に対してですか。

舛添 医系技官をはじめとした厚労官僚達は、自分達が管轄している領域で何か問題が起こったら叩かれる、それを最も避けたいわけです。もし検査数を増やして陽性者が大きく増加すれば、厚労省に批判の矛先が向く。だから、検査数を絞る事で陽性者の人数を一定程度に抑えておきたいという思惑があったんだと思います。

——尾身会長をアメリカの感染症対策トップのファウチ博士と対比して批判もされていましたね。

舛添 尾身会長は臨床現場での経験や論文の実績に乏しい。感染症対策のトップに臨床経験が伴わないのは致命的です。ファウチ博士は臨床経験も論文の実績も優れていて、そういう知見のある人の言葉だから人が納得する。そして、トランプ前米大統領と並んで会見している時にも、「大統領、その発言は間違っていますよ」と言える。尾身会長から、そういう言葉を聞いた場面はないですよね。メディアも総理の発言に疑問を持った時には、どうして専門家として正さないのかと尾身会長に問わなければなりません。

——新型インフルエンザ対策にあたった時も、専門家会議の座長は尾身氏でしたが、厚労大臣としてどのように対処したのでしょう。

舛添 臨床経験のない「専門家」達の意見だけに従っていていいのかと考え、もっと若くて有能な人材を探そうとしました。条件は臨床経験のある医師、論文を多数発表している専門家である事。そうして集まったのが、ダイヤモンド・プリンセス号の実情を暴いた神戸大学の岩田健太郎教授達です。厚労大臣の私的な諮問機関で意見を出し合ってもらい、専門家会議と競わせました。その結果、現場で患者さんと接しながら野戦病院のような状況で闘っている人達の意見の方を優先すべきだと考え、私の責任で彼らの案を採用し、結果として収束へ向かわせる事が出来たんです。今回は全く逆の方向になってしまっています。としても、国会議員でしたら議員立法を作って各方面に根回しして、1日で法案を通しますよ。

——新型コロナの感染状況は落ち着いてきていますが、まだ安心出来る状況ではありませんか。

舛添 人流が増加しているのに感染者が減少している状況についても、専門家から納得出来る説明は出ていません。新型コロナの特性はまだ解明されていないと思っているんです。まだまだ変異株も現れるでしょうし、専門家の資質や政治家、厚労省の対応が問われる場面は続くでしょうね。

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