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中医協委員らが語る「診療報酬改定」予想

中医協委員らが語る「診療報酬改定」予想
診療報酬本体の大きなプラス改定は期待できない

2020年度診療報酬改定はどうなるのか。10月に千葉・幕張メッセで開かれた第2回医療と介護の総合展の特別講演「どうなる?診療報酬改定 中医協の最新情報」で、共に中央社会保険医療協議会(中医協)委員を務める猪口雄二・全日本病院協会会長と島弘志・日本病院会副会長が診療報酬改定の方向性について説明した。

消費増税に伴う10月改定はマイナス

 最初に登壇した猪口氏は、消費税率の10%への引き上げに伴い10月に行われた診療報酬改定を基に、20年度診療報酬改定の方向性を予想する。診療報酬本体は0.41%引き上げられたが、薬価は昨年の薬価調査に基づきマイナス0.93%、消費税補塡分がプラス0.42%で、差し引きマイナス0.51%。材料費は0.03%上がったが、診療報酬全体でマイナス0.07%の改定だった。

 2年に一度改定されていた薬価は、18年度以降は実質的に毎年改定されることになった。19年度は薬価改定が既に行われ、マイナス改定となっている。国は薬価を下げて浮いた財源を診療報酬本体に振り替えているが、20年度診療報酬改定では1年分の薬価下落分しか反映できない。その上、財務省は診療報酬全体のマイナス改定を提案している。猪口氏は「診療報酬本体はプラスにしなければならない」と述べた。

 そうした状況下、診療報酬本体でメリハリを付けることが重要になる。病床機能別の入院料の設定は注目されるところだが、猪口氏は人材配置だけではなく、多くの要素を踏まえた設定が重要になると強調。人口減少の中で看護師や介護士は減り、病院経営が成立しないのではという懸念もある。また、人材配置の設定と、実際の病院の機能が対応しているとは限らない。看護師の少ない病院が地域の救急医療を支えているような実態があるからだ。「がんじがらめの人材配置にせずに、どう適切な入院料の算定を可能とするかが焦点」と猪口氏。

 地域医療構想をより進化させるのも重要だ。在宅復帰を促す目的が重要だが、そのために、急性期の他、回復期の病床・リハビリ・介護施設などの役割分担をどうするかを検討する必要がある。一般病床と同様、本来必要とされる機能を果たす病床になるように、加算の在り方も考える必要がある。実態として、療養病床では点数の高い医療区分3を取るために中心静脈栄養が増えている可能性があるなど問題点もあるという。

 介護医療院は、うまくいっているとの見方も示した。病院内の住居の位置付けで、在宅復帰先と見なせるようになっているのは大きい。地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟の施設基準では、在宅復帰率が7割以上求められる。その点、介護医療院は、在宅復帰先として利用しやすい。介護老人保健施設が在宅復帰扱いにできなくなったのは問題とみる。回復期の病床からは老健施設に送りづらくなっており、経営に悪影響も考えられる。そうした改定の副作用についても目を向ける必要があるという。

 医師の働き方改革も議論は積み残されている。厚労省の「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」が10月から始まった。薬剤師・看護師・臨床工学技士・救急救命士など多職種の業務範囲の見直しが進む。これまで議論が後回しになっていた勤務医の副業の取り扱いも俎上に載りそうだ。

認知症対策や終末期ケアなどが検討課題


 次に登壇した島氏は、診療報酬改定の注目点をピックアップした。まず診療報酬の検討プロセスについて紹介。検討課題は多く、中医協の議論の前半では課題整理が行われ、疾病構造や受療行動・年代別の課題・最近の医療と関連性の高いテーマが検討された。今秋から始まった後半の議論では外来や入院・在宅・歯科・調剤など個別のテーマが検討されている。

 問題となる課題は、例えば高齢化に伴う認知症対策や人生の最終段階での医療ケアについての問題の他、エビデンスに基づく医療の推進、情報通信技術の活用などだ。島氏が検討課題として注目した事項の1つは重症度、医療・介護必要度の計算方法の見直し。これまで処置や患者の状況、手術などにより評価されているが、20年度改定でさらなる調整が入るだろうと見通しを示した。

 また、紹介なしの病院受診での定額負担の拡大、平均在院日数のさらなる短縮に向けた施策、ポリファーマシー(多剤処方・多剤併用)の問題解決などについて触れた。ポリファーマシーに関しては、多剤服用を防ぐために全国の病院で「フォーミュラリー」の取り組みが広がっていることを紹介。フォーミュラリーとは、医薬品の有効性・安全性などの科学的根拠と経済性を総合的に評価した上で、推奨される医薬品の使用指針。医療機関や地域ごとに使用指針を作成、標準薬物治療を推進することを目指している。島氏は推進していくべきだとしながらも、「診療報酬で評価するのは違う」と述べた。また、病床機能別の病床数の再編、医師の養成、時間外労働規制も問題になるとした。

 ASK梓診療報酬研究所の中林梓代表取締役・所長が9月、東京で開かれた新社会システム総合研究所のSSKセミナーで、「2020年診療報酬改定の方向性と病床機能の行方」をテーマにした講演も紹介しよう。同社は医療機関や介護サービス事業者の経営健全化に向け、経営課題や題点を調査・診断し、改善方策を提供している。

 まず中林氏は、人口が1億人を切り高齢者人口(65歳以上)がピークになる2040年の医療提供体制の構築に向け、地域医療構想、医師の働き方改革、医師偏在対策を推進する「三位一体」改革を後押しする診療報酬改定になると予測した。具体的なチェック点として①かかりつけ医の点数②妊婦加算の復活③紹介状がない受診の定額徴収対象病院の拡大④オンライン診療——などを指摘。また、評価が予想される診療報酬として①退院支援退院調整②医療介護連携・地域連携③認知症対策④口腔ケア・嚥下訓練・栄養食事指導⑤質を担保したリハビリ——などを挙げた。

 また中林氏は、中医協での議論を簡便に把握する方法として、厚労省のホームページに掲載されている資料の「現状と課題と論点」の頁に目を通すことを勧める。

 

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